ちょうどメイソンジャーサラダが流行していたころ、筆者は自分もやってみよう!とおしゃれなガラスびんを購入したのを覚えている。好きな野菜を詰めて色鮮やかにし、SNSに載せることだけに夢中になっていたため、正直ガラスびんを環境問題と結びつけたことなんて一度もなかった。ただの容器として使い、流行が過ぎ去ったあとのジャーの行方は記憶にない…。そんな過去の自分に教えてあげたい「TOKYO BINZUME CLUB(トーキョービンズメクラブ)」というブランドがある。
全国から集まった新鮮な有機野菜や食品、料理を都心で楽しめるということで毎週賑わっている「Farmer’s Market @UNU」(ファーマーズマーケット アット ユーエヌユー)に訪れたことはあるだろうか。生産者と消費者が実際に顔を合わせることができる同マーケットであるが、新たに日本ガラス協会と共同でこのTOKYO BINZUME CLUBというブランドを立ち上げたのだ。
ブランド名に「BINZUME」とあるように、ガラスびんにこだわったこのブランドは具体的にどのような活動を繰り広げているのだろうか。
生産者の食材をびんに”ぎゅっ”と詰めてフードロス削減に
過剰生産や賞味期限に対する厳しいルールなどが原因で、まだ食べられる食品が捨てられてしまう「フードロス」という深刻な社会問題がある。これは家庭やお店だけでなく、日々私たちにおいしい食材を届けてくれる生産者のもとでも生まれてしまう。気候や流通の過程で売れなくなってしまった農産物がロスになってしまう現実には心が痛む。特にFarmer’s Market @UNUで出店している農産物は、無農薬で本当に「いいもの」を提供する生産者によってつくられているため、その野菜や果物がフードロスとして捨ててられてしまうのは、もっと心が痛い。
そこでTOKYO BINZUME CLUBは、先ほど述べたように現状として出てしまうフードロスを削減するため、びん詰めの商品開発をおこなっている。Farmer’s Market @UNUに出店している生産者のもとで仕方なく出てしまったフードロス食材をぎゅっとびんに詰まらせ、おいしい「びん詰め」の商品として、再び生まれ変わらせている。また商品はトップシェフや料理研究家と一緒に開発され、生産者がつくる旬で安全な食材をより一層引き立たせている。このように野菜や果物をジャムやベジチャツネ、ソースやジュースにすることによって、「食べられるけど捨てられてしまう」から「おいしく食べる」に変えることができるのだ。
なぜガラスびんにこだわるのか
しかしなぜTOKYO BINZUME CLUBがあらゆる素材のなかでも、「ガラス」に着目したのか、気になる方もいらっしゃると思う。筆者自身もそのうちのひとりであった。
私たちは、買い物の際にもらうポリ袋、食材を包むプラスチック容器やストローのような使い捨てプラスチック製品を、当たり前のように使用し捨てる習慣が身についてしまっている。「どこかでリサイクルされるであろう」と思ってしまうせいか、意識的に一日を振り返ってみると、想像以上に大量の石油系素材を使い捨ててしまっていることに気づく。その私たちの行動が原因で、プラスチックごみによる海や海洋生物、生態系への悪影響が問題視され、深刻な事態へとなってしまった。
このような現状のなか、TOKYO BINZUME CLUBのガラス素材に着目しびんを活用するという活動は、私たちのごみを捨てる習慣やリサイクルについて改めて考えるきっかけを与えてくれる。
ガラスびんはガラスびんに戻ることができる。適切に扱えば100%再資源化されて再びガラスびんとして生まれ変わります。(参照元:TOKYO BINZUME CLUB)
ウェブサイトにはガラスびんがどのように環境にいいのか、私たちと一緒に学んでいく「ガラスびん学」というコーナーがある。具体的にガラスびんの製造過程やリサイクル率の高さ、そして天然素材であることなど、身近にあるけど知らなかったガラスについてを教えてくれる。石油系素材でできたものを無意識に選び使い捨ててしまう私たちであるが、このガラス素材の情報を読むと、なにがサステイナブルで環境にいいのか、ものを選ぶときに重要なヒントを得ることができるのではないだろうか。
食のプラットフォームとして生産者と消費者をつなげる
Farmer’s Market @ UNUでは、訪れた人が直接生産者と顔を合わせすことができるが、TOKYO BINZUME CLUBのウェブサイトでは、ここでしか知れない生産者の「こだわり」や生産過程の裏話、そしてびん詰めに携わる食のプロフェッショナルたちの食に対する思いを取材した記事が掲載されてある。読んだあとに、「食」の価値とはなにか、どのように向き合うべきか消費者として考え、より「自分と食」とのつながりに向き合うきっかけを与えてくれる、そんなプラットフォームとして存在するブランドでもあるのだ。
この世に存在するすべてのものは、表面的に見ればただの「もの」でしかない。ガラスびんも同じように、ただの「容器」として扱われてしまうことが多い。しかしそのただの容器をあらゆる視点から向き合ってみると、社会問題であるフードロスや環境問題へのアプローチとして活用でき、さらに生産者と私たちをつなげてくれるという幅広い役割を見いだすことができる。
TOKYO BINZUME CLUBがあることによって、私たちは生きていくうえで欠かせない「食」に対して向き合い、さらに自分にとって「おいしくて楽しい食」とはなんなのか、より身近なテーマとして考えるきっかけになるであろう。
このびん詰めの商品は、Farmer’s Market @ UNUに訪れると実際に購入することができる。また年内にはウェブサイトでの販売も開始する予定だ。