マレーシア熱帯林の破壊は許されない。アンチ・サステイナブルな「2020年東京オリンピック」の実情

2017.5.29

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「One planet living(地球一個分の暮らし)」。これは2012年のロンドンオリンピックで掲げられた持続可能性の確保を目的としたテーマだ。

実は56年ぶりに開催が決まっている2020年東京オリンピックでは招致スローガンとして掲げた「Discover tomotrrow~未来(あした)をつかもう~」をもとに全員が自己ベスト、多様性と調和、未来への継承という3つを基本コンセプトとし、この3つ通してロンドン大会と同等の「サステイナブルさ」もしくはそれ以上の成果が求められているという。

そんな2020年の東京大会では、環境負荷の最小化、最先端テクノロジーを駆使した環境対策といったものから、「おもてなし」、「もったいない」というような日本独自の価値観の発信など様々な側面からの「持続可能性」への取り組みを重視しているのだ。(参照元:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

しかし、大会後の新国立競技場の使用用途、さらには新国立競技場の建設における木材調達における持続可能性が疑われているという。

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GORIMON

「オリンピックの遺産」をどうサスティナブルに活用するのか

オリンピックの遺産をどう活用していくかは持続可能性をアピールすることにつながる。例えば新国立競技場の使用用途。球技の試合やコンサートといった“ただ”競技場を利用するだけでは稼働日数も限られてしまい、大きな収益は望めない。そこで東京の中心にありアクセスも良い、そして何より周辺人口において大きな可能性を秘めている同競技場が大会後も大きな収益を上げれるかは持続可能性を達成できているかの1つの答えになるだろう。(参照元:日本経済新聞

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Shinichiro Hamazaki

自然や文化を破壊。アンチ・サステイナブルなオリンピック。

大会後のスタジアムの使用用途の問題より今私たちが一消費者として、そして日本国民として考えなければならない問題が「新国立競技場の木材調達の問題」だ。

先述したが持続可能性に配慮したオリンピックの開催を目標に掲げる東京オリンピック。その実現に向けて環境面に配慮することは大前提であり東京オリンピックの運営サイドも運営計画に製造・流通過程における労働環境の整備、人権の尊重や環境に配慮した原材料の使用、資源の有効活用の重視といった物品の調達基準を盛り込むなど対策を練っていることは確か。(参照元:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

しかし新国立競技場での建設現場において、マレーシアのサラワク州産の木材が使用されていた可能性が疑われると同時に非難の声が巻き起こった。(参照元:MARKETS FOR CHANGE)というのも原生林が多く存在するサラワク州では、急速な伐採によりもはや原生林がほとんど残っていない上、この伐採によって先住民たちの家や生活、文化をも奪われているのである。さらに現地政府の伐採許可における汚職もたびたび疑われているという惨状だ。(参照元:global witness

そして日本は同州産の合板の最大の輸入国であり、日本のビルやマンション、フローリングなどにも同州の合板が大量に使用されている。これはもう既に日本が木材の輸入を通して環境破壊、先住民の人権の侵害に加担していることを意味している。

このような事態に対して2016年のベストPodcastに選ばれたバイリンガルニュースのホストのまみさんは以下のように述べている。

先進国の責任を持って、どこから原材料を輸入してくるのかっていうのをいかに倫理的にするかっていう取り組みが必要なんだけどそれを日本は全然できていない。

この事実がもうちょっとちゃんと日本で認知されて、例えば、最終的にマンションとかを買う人、消費者とかもそうだし、投資してる人たち、銀行とか、あとまあ不動産会社が究極のクライアントなわけだからその人たちが、いや絶対にサラワク州産の合板が入ってるんだったら買いたくないとか、投資したくないとか言えば、そこからどんどんそれが芋づる式に伝わっていって結局じゃあサラワクから買うのやめましょうかなのか、じゃあサラワクのものでももっと基準を高くしてきちんといろんな条件をクリアしたものだけにしましょうってなるのかっていう動きに繋がっていくんだけど今のままだともうやりたい放題のままで企業も全く責任をとってない状態だから。

企業が違法伐採の問題無視し続けることやこの問題がメディアによってほとんど報じられることがない現状の中で彼女はパーム油の問題と重ねこうも指摘している。

この違法伐採の話とパーム油って実はつながっていて違法伐採で木をどんどん切るじゃない。で、その時は根こそぎ切ってるわけじゃなくて、使えそうな木をがーって切るんだけど、もう売れるものがなくなってくると今度はそこを全部根こそぎブルドーズしてそこにパーム油のプランテーションをたてるわけ。で、そこまでいっちゃうともうほんとにそこに住んでた動物、虫なり絶滅危惧種なり鳥なり植物なり木なりもう全部根こそぎ殺されてるわけで、それにその戻ってこないものの価値と、じゃあこれをパーム油にしますとか木材にしますっていって得られる経済的価値なんてもう全然少ないわけよ、ただその目の前のお金しか見てないっていう。

▶︎パーム油についてはこちら

上記のようにただ目の前の利益を追い求めるだけでは、サステイナビリティを達成できるとは全く思えない。また私たち日本人は消費者としてこの問題をしっかりと認識する必要があるだろう。

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Construction Projects

持続可能性によって評価されるオリンピックへ

やはりオリンピックと言われれば競技面に興味関心がいきがちである。もちろんオリンピックはスポーツの祭典として観る人に感動を与え人々を結びつけるものであることは確かであり、東京オリンピックでもそういった光景は数多くみられるだろう。

しかし本当の意味で東京オリンピックを成功に導くためには、バイリンガルニュースのまみさんの言うように「先進国として(サラワク州の自然破壊に)加担していくのか、責任をもってそうじゃないものを選んでいくのか」(参照元:バイリンガルニュース)といったことも重要なカギを握っているのかもしれない。

※「2020年東京オリンピックのための熱帯林破壊は許されない」と思う方は、こちらから国際オリンピック委員会に電子メールを送ろう。

MARKETS FOR CHANGE

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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