2025年の自分、あなたはどんな姿が想像できるだろうか?
安定した生活? 好きなことをやっている自分? 幸せな結婚生活?
みなさんは8年後、自分が「親のために失業」している可能性があることを、ご存知だろうか?
あなたにも起こりうる「介護失業」
日本は超高齢社会に突入している。それに伴って浮き彫りになったのは「介護問題」。患者の数に対して施設や従業員の数が足らず、2025年には100万人規模の人手不足が予想され、現在若者である300万人以上の人がやむおえず介護のために失業を余儀なくされることが懸念されている。(参照元:社会起業大学)
望まなくして仕事を離れること自体が精神的に辛い上に、「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査(2012年)」によると、介護離職した約1000人のうち、精神面約64.9%、身体面56.6%、そして経済面ではなんと74.9%の人が「負担が増加した」と報告したそうだ。(参照元:介護離職の増加 理由と対策)
日本は高齢者のための施設、そして何より介護従業員の人口を増やす必要がある。しかし、介護士の現状は楽なものではない。「居宅介護支援事業所における介護支援専門員の業務及び人材育成の実態に関する調査」によると、ひとつの事業所で1人のケアマネージャーが抱える患者の数は約24〜25人。介護に加えて、1人1人の利用者に適したプランニング、事務処理など時間が取られる作業も同時にこなす。結果的に残業、休日出勤などが余儀なくされる。(参照元:ケアマネージャーの本音と実態)
あまりにも過酷なスケジュールのためか、調査では「ケアマネージャーの仕事をもう続けられないと思うことがあるか」という質問に対して「よく思う」「ときどき思う」「たまに思う」と回答した人が全体の75%以上をも占めていた。(参照元:みんなの介護)本来、看護職についた人の52.6%が仕事を選んだ理由に「働きがいのある仕事だと思ったから」と述べるほど、やりがいがあり、人間的な仕事にも関わらず、人手不足がそれを必要以上に難しくする。(参照元:介護求人)
それではどうしたら介護職の人口は増えていくか。フィンランドに新しい取り組みを試みた市がある。ご紹介しよう。
「同じ給料で1日6時間労働」
スウェーデンのヨーテボリ市の老人ホームでは市の実験的な取り組みで、職員のシフトを同じ給料のまま、労働時間を8時間から6時間にした。この実験は2015年2月から始まり、今月1月で期間を終えた。
実験結果としては下記の効果が見られたそうだ。
-職員の健康が約50%向上した
-職員の患者への社交性があがり、患者(特に認知症患者)に良い影響になった
職員の健康が向上し、患者と活発に社交するようになることで、結果的に患者の健康にも良い影響になったのは興味深い。認知症患者に社交が良いことは、研究で発表されている。活発に社交する人はしない人よりも26%の確率で症状が悪化しないそうだ。(参考元:AARP)
しかし、実験が2年限定だったので、経済的に利益があるかどうかは判明しなかったという点と、認知度がまだ低いという点で、国家単位での実地はまだ遠いだろう。
これはわたしたちの問題だ。
そもそも日本では、安部政権によるアベノミクスの推奨する「地域包括ケアシステム」によって国が福祉にできるだけ関与しなくていいようなシステムに変わってきている。このシステムは「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現」(引用:厚生労働省)を軸としているが、懸念されるのは、地域ごとのサービスの格差化、そして利益だけを求めるような民間福祉施設の増加である。
国の人口や経済状態が違うため全くそのまま取り入れることはできないにせよ、スウェーデンのように介護を本来の「人間味のある仕事」にすることが今の私たちが向かう先ではないだろうか。労働時間を減らしたり、残業・休日労働を減らすことで、求職者率をあげ、結果的に患者にも良い環境を作ることができれば、長い目で見たときに労働者にも、患者にも、そして国にも本当のウィン・ウィン状態だと言えるのではないだろうか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。