コインランドリー、スーパーマーケット、駅のプラットホーム。米フロリダ州のマイアミの日常生活の場にゲリラ的に置かれた「女性のおしり」。果たしてそれに隠された意味とは?
作品のタイトルは「Wax That Ass(ワックス・ダット・アス)」。これらの「女性のおしり型の彫刻」をゲリラ的に置いてまわったのは、米フロリダ州の主要都市マイアミを拠点とするアーティストのアリソン・ボーガニム。彼女が伝えたかったのは、性的嫌がらせは日常のあらゆるところで起きているという事実。
アメリカでは約98秒に1人(参照元:RAINN)、日本では約5分30秒に1人(参照元:特定非営利活動法人しあわせなみだ)が性的暴行を受けており、報告されていないものや性的なヤジなど身体的な暴力を伴わないものも含めれば数はさらに多くなる。両国で性暴力被害の届け出をする人は、性暴力を受けた被害者全体の2割程度しかいないからだ。(参照元:特定非営利活動法人しあわせなみだ, mcasa)
公園の遊具のまわりにも「女性のおしり」の数々。これらはすべて実在の女性のおしりをモデルに作られているという。(参照元:Allison Bouganim)アリソンはなぜ女性のおしりを「彫刻」にしたのだろうか。残念なことに、世間では女性の身体が男性の「性の対象物」として扱われることが多い。
有名シンガーのミュージックビデオで、男性が女性のおしりを叩いたり、女性が自分のおしりを振って男性を誘ったりする場面を見たことがあるだろう。そんなふうに「性の対象物」として扱われる女性のおしりを、「彫刻(物)」にすることで、女性に対する性的嫌がらせの実状を批判しているのかもしれない。
作品『Wax That Ass』の特徴は、「女性のおしり形のオブジェ」を許可なしでいたるところに起き、撮影をするところだ。見た人を不快にさせるかもしれないが、それで「性的嫌がらせ」について話すきっかけになればいいとアリソンは言う。(参照元:Allison Bouganim)このようにして、まずは性的嫌がらせがどれだけ起きているのか、その深刻さを人々に伝えることが問題の解決に必要ではないだろうか。
米スタンフォード大生によるレイプや慶應大サークルによる集団レイプなど、大学での“レイプ文化”の根深さが表に出る事件が日米で最近でも起きているが、それらは氷山の一角でしかない。前者では加害者が大幅な減刑を受け、後者は真相が隠され「未成年者の飲酒強要」を中心に報道されるなど、性犯罪は容認され続けている。このような女性を「性の対象物」のように扱っていいという誤った認識を人々に考え直させるには、アリソンの作品のような意識を変えるきっかけ作りから始めていくしかないのだろう。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。