大阪生まれ、ヒップホップ育ち。ジモコロ編集長が「自分のため」に“誰かの地元”を愛情持って全国に届ける理由|EVERY DENIM山脇の「心を満たす47都道府県の旅」 #001

Text: YOHEI YAMAWAKI

Photography: Jun Hirayama unless otherwise stated.

2018.4.5

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こんにちは!EVERY DENIMの山脇です。EVERY DENIMは僕と実の弟2人で立ち上げたデニムブランドで、2年半店舗を持たず全国各地でイベント販売を重ねてきました。
2018年4月からはキャンピングカーで47都道府県を旅しながらデニムを届け、衣食住にまつわるたくさんの生産者さんに出会いたいと考えています。

初回の旅は4月5日〜10日。同じく「Be inspired!」で連載を持つ赤澤 えるさんともに、茨城、栃木、群馬県を巡りながら、8日(日)夜には茨城県つくば市のコワーキングスペース「Tsukuba Place Lab」で洋服の販売&トークイベントを開催する予定です。
また4月14日(土)には東京で旅の報告会を行います。報告会では旅の途中に仕入れた素材を使用した食事会も併せて行います。

本連載ではそんな旅の中で出会う「心を満たす生産や消費のあり方」を地域で実践している人々を紹介していきます。

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山脇本人とキャンピングカー

▶︎山脇 耀平インタビュー記事:『日本中に心を満たす生産と消費を。国内生産率3%のデニムに、誰もが愛着が持てる社会を作る25歳の起業家』

今回は旅の始まりを4月に控え、地方にいる様々な人の話を記事にし発信する上で、先人から心構えを聞いておきたい、ということで今回は、ウェブマガジン「ジモコロ」で編集長を務める徳谷 柿次郎(とくたに かきじろう)さんにお話を伺いました。

「ジモコロ」とは、地元にまつわる様々な話題を取り上げ、明るく楽しく伝えることで読者の地元愛を掘り起こすウェブマガジン。編集長として全国各地に自ら足を運び、取材を通じて地域の魅力を発信し続けてきた彼は、なぜ自分の地元でもない「誰かの地元」を愛情を持って届けられるのか。そして、それをなぜ東京の人たちにも届けようとするのか。その理由を聞いてみました。

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山脇本人とあしたのジョーと柿次郎さん

地方のモノサシをもっちゃった

大阪が地元の柿次郎さん。今から9年前の26歳の時に上京し、編集プロダクション勤務を経て2011年にwebコンテンツ制作を得意とする「株式会社バーグハンバーグバーグ(以下、バーグ)」に転職。上京して数年はまったく地方に興味がなかった彼は、バーグに勤めてちょうど3年目を迎える頃、長野県に旅行したことが「ジモコロを立ち上げよう」と思った最大のきっかけだったという。

バーグで働きだしてから3年目くらいのころ、長野の松本へ一人旅しました。やったことのないことがしたくて、唐突に「薪割りをしたい!」ってFacebookに投稿したら「ウチでできますよ」って長野に住む知り合いからコメントがきて、本当に薪割りをすることになったんです。その体験が楽しくて、社内でみんなに報告したり、いろんな所へ旅行するようになりました。この頃から自分が経験した面白いことを経験してない人へ伝えて面白がってもらう楽しさを感じはじめました。それが「ジモコロ」を立ち上げるきっかけでしたね

そして2015年5月に「ジモコロ」を立ち上げ、本格的に地方取材をスタートした柿次郎さんは、東京では出会えない人やモノ、文化を知ったという。

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いざ地方取材を始めると年齢に関係なくめちゃくちゃカッコいいことしている人たちと出会いました。漁師さんとか農家さんとか、一次産業に近い人の顔つきや手のしわ、そういった部分にめちゃくちゃ憧れて。ああなりたい、近づきたいって思った時に「もう一つのモノサシ」を持ってしまったんです

彼のいう「もう一つのモノサシ」とは、東京で流行っているものを良しとする視点ではなく、場所に関係なくカッコ良いものを見つめようとする視点である。当時はフットワーク軽く東京で毎晩のように飲みに出かけていたという柿次郎さん。「もう一つのモノサシ」ができたことによって、東京の良い部分、悪い部分を客観的に見つめられるようになっていく。

出会いやチャンスの質と量は東京が飛び抜けています。帰りを気にせず、すぐいつでも飲めるのはやっぱり大きな魅力。長い人生の中で、東京でがむしゃらに過ごす経験はあった方が良いと思っています。一方で東京に対するカウンターの感情も芽生えてきました。東京的な思考だと、特にIT系の仕事は机の前から離れづらいんですよね。しかも机の上でパソコンと向き合うのがクリエイターとしてカッコイイ姿とされる風潮がある。東京で活動するクリエイターの姿にももっと多様性があっていいんじゃないかと。いかに机から離れても、仕事の価値を作れるかどうか。僕のように東京と地方を行き来する人間が増えた方が絶対良いと思っています

2015年のスタート以来ジモコロは、東京の企業である株式会社アイデムが持つ求人広告サイト「イーアイデム」をスポンサーに運営を続けている。つまり東京の資本によって地方を取り上げるジモコロが成り立っているのだ。その事実があるからこそ、柿次郎さんは東京と地方どちらかだけを重視するのではなく、自ら両方を行き来することで、東京であればヒトやカネといった資本、地方であれば本質的な生き方を実践している人の存在など、互いの魅力を引き出したいと考えている。現に2017年には長野に住居を構え、東京との2拠点生活をしている。

「東京ー地方」。どちらの価値も理解しながらどちらにも偏らず“反復横跳び”し続ける。あくまで中間でどう振る舞うか、どれだけ力強く反復できるかを追求する、それが一番貴重な存在であることを柿次郎さんは知っていたのだった。

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取材のモチベーションは「自分のため」

ジモコロの記事を読むと、話し手の口調や感情がいきいきと伝わってくる。まるで自分も聞き手と同じ場で話を聞いている感覚になるのだ。「取材相手への徹底的な愛情」がなければ書けないこのような記事を生み出す原動力は、自分が経験した面白いことを経験してない人へ伝えて面白がってもらう、という「他人のため」だけではなく、「自分のため」でもあると柿次郎さんは話す。

人の話を記事にする上で、究極のモチベーションは相手と仲良くなること。つまり「自分のため」なんです。仲良くなりたいから面白い記事を読みやすく作り、世の中へ広める努力を徹底的にする。記事きっかけでたくさんの人に興味を持ってもらえた、という結果こそが取材相手に対する貢献であり、喜んでもらえる理由だと思う。「自分のため」といっても自己満足で終わるのではなく、まずは目の前の人をどう喜ばせるか。それを何より大切にするのが結果的には聞き手と話し手と読み手みんなのためになると考えています

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利己を重んじ利他に徹する。取材への姿勢だけでなく自らの生き方も貫くその精神は、10代の頃から聴いていたヒップホップの「フックアップ」というカルチャーと、今の自分を作ってくれた先輩たちの影響があるという。

小さい頃から日本のヒップホップが好きで、特に18歳ぐらいのときは新聞配達のアルバイトをしながらよく聴いてました。MDプレーヤーでちょうどアルバム2周分。恵まれない環境を自分の手で変えていく、そういう力強さみたいなものに惹かれたんじゃないですかね

ヒップホップには「フックアップ」という、実力や知名度のある人が、まだそこまで至ってない人と一緒に組むことで力をつけさせてあげるというカルチャーがあって、相当影響を受けてます。自分もこの歳(取材当時で35歳)になると本気で下の世代を引っ張っていかないといけない。そう思えるのはかつて大阪から26歳で上京した時、右も左もわからなかった僕を先輩方がめちゃくちゃ育ててくれたんです。この時代だからこそより必要な文化なんですよね。やられたから、やらなきゃって。与えてもらったものをいつか与える側になる。その繰り返しを続けることが社会に価値を還元する上で間違いない方法だと思っています

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「誰かの地元」を愛情持って届け続ける

柿次郎さんがジモコロを通じて、自分の地元ではない“誰かの地元”を愛情持って届け続けられるのには2つの理由があった。1つは、彼が自分の楽しみを第一に考え、その上で関わる相手に対して価値を出すという生き方を貫いているから。もう1つはかつて自分をフックアップしてくれた人たちへの感謝の気持ちを忘れずに持っているから。生きる上で一人一人に本気で向き合ってきたからこそ得られた柿次郎さんへの信頼は、彼がこれから進む道において大きな力になるのだろう。

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4月からキャンピングカーで全国を周り、たくさんの地域で食やモノの生産者を取材する予定の僕たちEVERY DENIM。初回は北関東(茨城・栃木・群馬)を巡ることが決定している。産業復興に取り組む若手女性が手がける温泉、地産地消を大切にしたマルシェを行うゲストハウス、これからの新しい販売方法を提案する梨農園などに伺う予定だ。

旅を続ける上で何より大事なのは、自分の好奇心を大切に、自分が楽しむことを第一に、話を聞かせてくれた人たちに心の底から喜んでもらえる記事を書くこと。それができて初めて、記事を読んでくれる人たちにも心を満たしてもらるんだ、と柿次郎さんの生き方を通してそう学んだ。

「自分のため」と「相手のため」。それらは決して対立する概念ではなく、共存させながら生きることだってできる。 取材に限らずあらゆる働き方に通ずるこの考え方を持って、僕も柿次郎さんのように、自分の喜びや楽しさの力で周りを豊かにしたいと深く思った。

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徳谷 柿次郎 / KAKIJIRO TOKUTANI

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株式会社Huuuu代表取締役。おじさん界代表。
ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。
趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学

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山脇 耀平 / Yohei Yamawaki

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1992年生まれ。大学在学中の2014年、実の弟とともに「EVERY DENIM」を立ち上げ。
オリジナルデニムの販売やスタディツアーを中心に、
生産者と消費者がともに幸せになる持続可能なものづくりの在り方を模索している。
繊維産地の課題解決に特化した人材育成学校「産地の学校」運営。
2018年4月より「Be inspired!」で連載開始。

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EVERY DENIM

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EVERY DENIMとは2015年現役大学生兄弟が立ち上げたデニムブランド。
なによりも職人さんを大切にし、瀬戸内の工場に眠る技術力を引き出しながらものづくりを行う。
店舗を持たずに全国各地に自ら足を運び、ゲストハウスやコミュニティスペースを中心にデニムを販売している。

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キャンピングカーで巡る47都道府県の旅のスケジュール

第1弾:2018年4月5日(木)〜4月10日(火)

行き先:
4月5日(木)群馬
4月6日(金)群馬・栃木
4月7日(土)栃木
4月8日(日)栃木・茨城
4月9日(月)茨城
4月10日(火)茨城

洋服の販売&トークイベント
日時:4月8日(日)19:00~22:00
場所:「Tsukuba Place Lab」 〒305-0005 茨城県つくば市天久保3-21-3 星谷ビル2-A
参加費:500円(予約不要)

その他、現地でのイベント情報は随時更新していきます!詳しくはTwitterをご覧ください。

第1弾 旅の報告会
日時:4月14日(土)15:00~21:00
場所:Cookpad.inc
〒150-6012 東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー12F
参加費:無料(懇親会に参加される方3000円)
詳細はこちら

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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