汚いものを魅力的に描く。23歳のアーティスト Kathmiが知った「何にも囚われずに、自身で自由な世界を創り出す手段」とは│さとり世代が日本社会に起こす、半径5mの“ゆる”レボリューション #002

Text: HINAKO OHNO

Photography: Ken Nagasawa unless otherwise stated.

Cover: Kathmi

2017.7.27

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「未来を担っていく若者」である私たちは物心ついたころには「失われた20年」がはじまっていて、ゆとり教育を受けて育った。この失われたといわれる「時代の産物」である私たちは成長期を終え、さとりがちな大人になりつつある。「不遇の世代」「欲がない」「内向き」など様々なレッテルを貼られることがあるが、「社会を良くしたい」と願い、立ち向かう人はいつの時代にもいるように、私たちの世代にもいる。確かに過去の世代とは違って、熱が失われがちな、引きこもりがちな、スマホと向き合いがちな世代かもしれない。でもそこから私たちのスタイルで起こすレボリューションがあるのだ。

この連載では、さとり世代なりの社会を良くする方法とはどんなやり方なのかを紹介していく。そして、イラストから執筆まで、記事製作を「失われた20年」「さとり世代」でおこなっていく。その名も『さとり世代が日本社会に起こす、半径5mの“ゆる”レボリューション』。

ゴミからも、高級なものからも「美」を見つけ出したいアーティスト、Kathimi

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連載第二回目に登場するのは女性を描く23歳のアーティスト、Kathmi(かすみ)。ミステリアスな印象を人に与えるかもしれないが、口を開いた彼女から紡ぎ出される言葉は素直で、純粋なものたちだった。

私の描く女性は理想の女性像。凛として女性として芯をもっていて、女性として美に溢れているのが理想の女性。自分がなりたいというよりも、この女性の理想を通して夢を与えられたらいいし、空間に彩りができたらいいし、何かひとつの気付きになればと思う。

彼女の描く数々の女性は、彼女にとって女性を描いているというよりは「美」の表現であるようだ。しかし、彼女がしていたのは芸術を通して「美」を創り上げることではなくて美を見つけ出すことだった。

人が気持ち悪いとか嫌だって思うモノだって美しいものがあるし、キラキラした高級なものや意匠が凝らされたもののような美しさも好き。自然界の何かしらのモノも、創り出された美からもインスパイアされているものも多い、目に入るものから見出したい。噛み砕いて、的確に魅力を伝えることができるのが芸術だと思う。だから日頃から道端のゴミからだって、もちろん高級なものからも美しさを見つけ出したい。

自由そのものよりも、自由に生きていいという選択肢に気づいたことが「幸せ」

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ウォールアートからイベントのビジュアルまで、幅広く手がけており、私がうらやましいと思うほどにアーティストとして「自由」な生き方をしているKathmiもかつては自由ではなかったという。

生まれてから20年くらい辛かったので、これ以上辛いとかはないんじゃないかな。今は自由という選択肢を知って選ぶことができてる。

自由そのものよりも、「自由に生きていい」という選択肢に気付くこと自体に彼女は幸せを感じているという。7人兄弟の下から2番目。母子家庭で育った彼女は小さい頃から“社会”の中で生きてきた。7人の中でバランスを取りながら生きてきた故、今の彼女の深みがある。そして大学を中退し、アーティストとして起業をした。

大学を辞める前にメリットとデメリットを書き出した。メリットの方が大きかったので辞めた。起業をしたということはあまり意識していない。自分が好きでやっていたことが仕事になってきたのでその受け口をつくろうっていう感覚。

「起業家」と世間では囃し立てられるが、彼女にとって起業とは「何にも囚われずに、自身で自由な世界を創り出す手段」でしかないようだ。

まわりと比べても仕方ない。大事なのは自分が持つ手札をどう活かすか。

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彼女にも些細ながら「さとり世代」としての意識はあるという。

死ぬほど不幸ではないし、生きてはいけるっていう中で、周りはいつも自分より幸福そうに見えた。経済ばっかり下がっていくのと同時に何だか幸福度も下がっていった。現代はSNSなどで身の回りと比べやすいからこそ、ないものねだりに陥りやすい。でも上を見たら青天井でしょ?でも比べる範囲を狭くして、上手くライバルを見つけたら成長においては燃料になる。そもそも人はそれぞれ与えられた手札が違うから、比べても仕方がない。人と比べるよりも自分の持っている手札をどう活かして生きていくかが大事。

話すのが苦手だから、アートで伝えたい。

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彼女に将来の夢を聞いてみた。

日本ではまだアートの文化が根付いていない。まだまだ街中に溢れているわけではない。創造性が高くて、バリエーションが無限のアートに小さい頃から触れられるような機会をつくって、感覚的なところから心が裕福になる人を増えればいいな。でもすごく個人的には皆がアッと驚く何かを創りたい!

彼女はまだアーティストとして幅を広げていくようだ。最後に、かなりベタだが、Kathmiにとってのアートとは?という質問をしてみた。

心が動けば何でもアートだと思う!アートのそういうところがいい。

と笑顔を見せた。

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今回の記事、または彼女の活動を見てみると、彼女について浮かぶワードは「アート」「女性」「自由」といったものだろうか。私自身も取材前、限定的なイメージを持っていた。しかし、Kathmiはそれだけに留まらないだろう。彼女の言葉を借りると、彼女の持つ「手札」は私たちかみるKathmiからは想像出来ないほどたくさん“隠し”持っているように思える。

それほどに自由な人間であった。過去や未来、型にとらわれずに自由に「自分」について話す彼女は眩しかった。そして、ミステリアスさから垣間見えるKathmiのアートへの純粋さは私にとって「美」だった。

Kathmi(かすみ)

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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