「夢を追う人」に厳しい世の中で、僕がメディアに出るわけ|清水文太の「なんでも」#003

Text: Bunta Shimizu

Photography: Ahida Agirre unless otherwise stated.

2019.6.5

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午前8時半発、JR山手線品川・東京行きの電車に僕は乗っている。

「歩く機械」達に混ざってあの乗り物に乗ることがとても苦手な自分にとって、不思議な感覚だった。遊園地に行く前日のように眠れなくて、それすら楽しくて。新しい何かを見つけることができそうな気がする、ワクワクした時間。

というのも、初めて少し自分に似ていると感じたダンサーの男の子を迎えに行くためだ。

到着した東京駅は、彼の同志のような存在と「歩く機械」が混在している。

夢を抱え、それをスーツケースに積み込んで地方からやってきた若者。

電車という名の人間貨物車両で運ばれた会社員。
そして、夢と希望に溢れた彼を待つ僕。

トランプ大統領が来日するからなのか、ヘルプで呼ばれたであろう警備員も点々と立っている。

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清水文太
インタビュー記事はこちら

とってもカオスな地下街改札口で落ち合った彼は「人多すぎひん?」と、先程見かけた若者とは違うサイズの大きな黒塗りスーツケースを持って現れた。

数ヶ月前にrooms*1という合同展示会で会った彼は、一際浮いていた。

目がとっても、暗くて、でも、明るくて。なんとも言えない表情をしているのだ。そんなところが、僕と似ている。

「早く上京しなよ」と提案して、5月末に彼は東京に関西から上ってきた。

夢を掴むために。ダンサーとして、花を咲かせるために。

でも、そんな夢を壊すような社会とこれから戦わなくてはならないのだ。正しくは、仲間になるために話し合わなければならないのかも知れない。

(*1)年に2回開催される日本有数の大規模な展示会

夢を追う人に厳しい社会で僕がメディアに出るわけ

そうやって、夢を持って東京に来ても家を貸してくれないことも沢山ある。

僕なんか、「ゲイっぽい見た目をしているから気持ち悪い」と、入居審査を落とされたことだってある(これは他の機会で詳しく書くつもりだが)。

令和元年、今までで一番空き家があるはずなのに、どんどん「国民としての最低限度の生活」をすることを許してくれない社会が存在する。

LGBTキャンペーンや、多様性を謳った広告が増えているから、寛容になっていると世間は思いがちだがそんなことはない。あれは、ビジネスの道具でしかないのだ。

お金を稼ぐためのおもちゃだ。

本当は、もっと黒く塗りたくられた、隠された東京が存在する。

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年金制度もいつか崩れる。憲法だって変わるかもしれない。僕らが当たり前に過ごしている日々が、とても怖い銃によって壊されるかもしれない。

そんな部分を見えないように、黒くするための「絵の具」として役割を持つメディアにも、僕は出ている。こんなふうに、文字も綴って世の中に出している。

理由は「夢」「本当のこと」を忘れてほしくないから。
本当に大事な、大切な人たちの笑顔を、僕自身心に留めておきたいから。カラフルな絵の具を持って、黒く塗られたキャンバスを明るくしたいから。

夢を諦めないように、黒く塗りつぶされないように

皆、夢は持っているのだろうか。
キラキラした心は、忘れていないのだろうか。

映像をやりたいと言っていた友人。音楽を続けたいと言っていた友人。モデルをやりたいと言っていた友人。

みんな、諦めた。社会の中に溶け込まなければならないという観念があるのだろう。

それも間違いじゃない。いくらでも、夢は追いかけられる。

でも、それで「夢を諦める」ということはしないでほしい。

「夢を持つ」ことに罪なんてないから。追いかけることだって悪いことじゃない。スタートラインに立って、走って転ぶことだって、走り抜けることだって、フライングさえしなければ誰も咎める権利なんてないのだ。

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僕自身、十代の頃からいきなり仕事をしようと決断したとき、新しい仕事を始めるとき、決まって沢山の意見をもらった。

「学歴もないくせに。ブルーワークしか所詮できない」とかスタイリストを始めたときも「アシスタントにほぼついてないのに、そんな資格はない」と言われたり。

最近は音源も作っているのだが、送った楽曲を完全に無視されたりする。「ファッション被れが曲を作っている」と。

「夢も希望もない社会だ」と、“大人”の仮面をかぶったフラストレーションだらけの人間の言葉が襲いかかることもあった。

でも、いい言葉もかけてもらえるのだ。

「応援してます」「文太くんのおかげで生きる希望が持てました」「ありがとう」って。
それ以上の言葉はない。

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マイナスな言葉もアドバイスでしかないのだ。
人に喜んでもらったときなど、プラスの言葉を飲み込もう。

いくら、だめと言われても。やっちゃだめと言われてもどこかに認めてくれる人はいる。それが一人でもいいし0でもいい。自分が、いいと思ったらその数字は1になるから。

夢を追いかけて成功しても、失敗しても、誰のせいでも、他人のせいでもない。

僕の息は、僕にしかできないように(医療技術で人工呼吸をすることもできるが)自分の選択は自分にしかできないのだ。

そもそも、正解なんてないのかもしれない。生きている中でいつ死ぬかわからないのに、なにが正しいかなんてわからない。なぜなら、僕らは死んだことがないから。

多様性を謳った広告だらけの東京で、家を借りられない、思ったことができない。

マイナスな言葉をかけてくる人。夢を捨てろという大人。

夢を追うことへの「偏見」にまみれた東京とのギャップに負けちゃいけない。でも、逆らっちゃいけない。

「歩く機械」も、夢を持つ者も元はみんなただの同じ人間なのだ。

みんな、仲良くなればいい。話し合って、どんなにわかりあえなくても「まあ、こいつがいても生きていけるか」といい意味で諦められる社会がいい。

誰を恨むわけでもなく、誰を怒るわけでもない。
誰かを喜ばせて、誰かと共存できる世の中を作ればいい。それが、幸せだ。

「家族や友人を喜ばしたいんよね、せっかく東京に来たし。たくさん稼ぐでー!」と駅のホームで叫んでた彼は、カラフルな絵の具を持って、筆を持ち、社会を明るくしてくれると確信した。

彼の持ち運んでいた黒いスーツケースが、不思議ととってもカラフルに見えた。

夢がたくさん詰まっている。希望が溢れている。

そんな彼の笑顔とともに、僕はしばらく生きるようだ。
彼の心が黒くならないように、僕の心が黒くならないように 色を与え合う。

助け合って、生きていく。それを、周りに分けるんだ。それが、僕の仕事なんだ。

進もっと。
清水文太

Bunta Shimizu(清水文太)

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19歳にして水曜日のカンパネラのツアー衣装を手がけ、モデルとしてdoubletやMIHARA YASUHIROのショーにも出演。その活動の他にも『装苑』やウェブマガジンでのコラム執筆の他、渋谷TSUTAYAでのデザインディレクション、ギャラリーでのアート展示などを開催。スチャダラパーBose・ファンタジスタさくらだ夫妻、千葉雄大などのスタイリングも。
88rising所属JojiとAirasiaのタイアップMVにも出演。
RedbullMusicFesでのDJ・ライブ出演など音楽活動にも精力的に活動を始めている。
アーティストとして多岐にわたる活躍を見せている。

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