関西を拠点に活動するアーティスト・コレクティブ「Soulflex」のメンバーであり、ソロとしてもR&B / SOULを軸に表現を続けるシンガーソングライター・ZIN。深みのあるボーカルとしなやかなグルーヴを武器に、ジャンルやシーンを越えて活動の幅を広げている。
そして2025年10月22日、約2年ぶりとなる新作EP『JOJO』をリリース。静けさと熱が揺らめく、ZINの内省を刻む一作だ。
本インタビューでは、Soulflexとソロ活動での表現の違い、過去作『YELLOW』『CURVE』から続く時間の流れ、そして『JOJO』に込めた想い。楽曲制作を通して、ZINがどのように内面と向き合い、R&Bというジャンルを“今”の時代に更新しているのか語ってもらった。

Soulflexとソロ。ふたつの視点の間に確立する表現の違い
NEUT:2010年に大阪で結成された、SIRUPをはじめとするシンガー、ラッパー、ビートメイカー、フォトグラファー、ペインターなど、11名のアーティストで構成されるクリエイティブ・コレクティブ「Soulflex」のメンバーとしての活動と、ソロ名義での作品づくり。
それぞれの表現軸にどんな違いを感じていますか?また、互いにどんな影響を与え合っていますか?
ZIN:Soulflexは、かれこれ15年ほど一緒に活動している仲間なので、信頼関係がしっかりあります。リラックスしながらも、互いに委ねたり刺激を与えあったりしつつ、楽しくやれてると思います。一方で、ソロ名義の活動は、自己プロデュースやセルフブランディングなど、自分が先頭に立って動く分、責任やこだわりもより大きく、細かいものになります。内省的な表現もしやすいですね。ソロでもSoulflexでも活動することで視野が広がり、客観的にもなれると感じています。どちらの活動も意欲的に続けていきたいですね。

NEUT:1stアルバム『CURVE』のリリースから2年が経ちました。この2年で、どんな変化や成長を感じていますか?
ZIN:『CURVE』は、ZINとして一つの分岐点だったと思います。初めてのフルアルバムでありツアーでもあったので、表現方法やブランディングまで細かく向き合って制作しました。その結果、一皮剥けたみたいな感覚がありましたね。『CURVE』をきっかけに、色々なところに呼んでいただいて、新しい出会いもたくさんありました。自分のやりたいことがどんどん明確になっていって、ZINのアーティスト性が確立してきたと思います。

静けさと熱が揺らめきながら溶け合う瞬間を描く
NEUT:『JOJO』は、内省的でありながら情熱的なムードが印象的です。タイトル『JOJO』にはどんな意味が込められていますか。また、制作時の心境や、サウンド面で意識した「静けさと熱」のバランスについて教えてください。
ZIN:タイトルの『JOJO』には二つの意味を込めました。一つは、“叙情的”という意味合い。もう一つは、“徐々”に心や身体に浸透していくようなイメージを作品全体に落とし込んだということです。全体のムードは、エロティシズムや恋愛における感情の起伏を描きながらも、基本的には冷静なアティチュードを保つことで、逆に”熱”の部分が際立つように意識しました。リリック、歌唱、サウンドのすべてでそのバランスを追及しています。

人間の影や闇にスポットを当てる、ZINの自分らしさ
NEUT:FKDさんやKojoeさんとはこれまで何度も共作されていますが、ZINさんにとって彼らの“凄み”とはどんな部分ですか?
ZIN:FKDは、引き出しが本当に多いし、客観的な意見や新たな視点をくれる刺激的な存在です。ビートメイクに関しても、“間”の使い方が抜群で、“引いて、刺す”みたいなセンスが半端ないと思います。Kojoeさんは、音楽に対する姿勢をとても尊敬しています。嘘やフェイクが全くなくて、それに裏付けされた努力や経験が凄みを増し増しにしているというか。歌に関しても中途半端さが一切なくて、いつも期待や想像をガンガン超えてくるので悔しいです(笑)
NEUT:彼らと制作を重ねる中で、改めて気づかされた“自分”はありますか?
ZIN:自分にしか出せない世界観や表現があるということです。影や闇の部分にスポットを当てて、人間らしさを描き出すのが自分らしいというか、表現したいことなんだと思いました。
NEUT:13年前の自主制作CD『YELLOW』に収録された『Stupid I Am』のフレーズを、今回の『In The End』で引用されていますね。過去の自分の言葉をいま取り入れた理由と、そのフレーズを選んだ意味を教えてください。
ZIN:『YELLOW』は、純粋に“かっこいいこと”、“好きなこと”、“やりたいこと”だけを詰め込んだ作品で、中でも当時のネオソウルへの偏愛を最も強く表現したのが『Stupid I Am』でした。そのフレーズを今の自分が引用することで、これまでのキャリアの背景や音楽的ルーツを示せるのではないかと思ったんです。音楽はとても多面的なものなので、一曲だけを取ってもその人のバックグラウンドが感じられるような曲作りを心がけています。

音楽は終わりでもあり、再生でもある
NEUT:『In The End』は“浄化と再生”をテーマにしていると伺いました。制作の過程で、自身の中に“終わり”や“再生”を感じた瞬間はありましたか?
ZIN:曲を書くことは、自分自身のセラピー的なところがあって、制作中は自分と向き合うことが苦しく感じたりするのですが、曲が完成するとその気持ちひと段落つけるので、そういう意味でひとつの“終わり” であり“浄化”ですね。リリースされれば曲は自分の元を離れて、人の手に渡り、誰かの物語として“再生”されていく。音楽をやっている以上、常にその循環を感じています。
NEUT:『CURVE』では「一曲目から通して聴いてほしい」「通して聴けるようなサウンドの構成に気を使った」と話されていました。 今回の『JOJO』ではどんな“流れ”や“サウンドの構成”を意識しましたか?
ZIN:タイトル『JOJO』に込めた“徐々”にという感覚を曲順や流れにも意識しました。1曲目から4曲目まではリリース順になっているのですが、それが一番自然で、感情の抑揚や機微を感じられると思いました。ただ、必ずしも通して聴かなくても良くて、どの曲からでも自由に楽しんでもらえればと思っています。

NEUT:今回のEPでは「1990〜2000年代のR&Bやネオソウルを、今の時代に生きるアーティストとして体現したかった」とコメントされています。ZINさんが感じる“今の日本のR&Bシーン”について教えてください。
ZIN:クオリティや技術も年々上がっていて、個性のあるアーティストも増えたと思います。R&B自体はまだ“シーン”というより“個”の印象が強いですが、おもしろいアーティストが以前よりもちゃんと評価されるようになってきたと感じます。少しずつではありますが、“日本のR&Bシーンの土壌”みたいなものが出来つつあると思います。
NEUT:その中で、ZINさん自身が提示したい“R&Bの形”はどんなものでしょうか?
ZIN:自分が影響を受けてきたアーティストたちには共通して、ルーツや人間味、オリジナリティがあって、自分もそうありたいと思っています。時代ごとにサウンドの特徴は変わっていきますが、R&Bにおいては“グルーヴ”こそが最も重要だと思っています。

初のBillboardで届ける、音と感情に浸る夜
NEUT:11月には横浜と大阪で初のBillboardライブツアーが控えています。今回のステージで、どんな空気や感情を届けたいと考えていますか?
ZIN:Billboard liveは、お客さんがゆっくりお食事やお酒を楽しみながら着席でライブを観られる環境なので、世界観に没頭してもらえるようなステージにしたいです。それぞれが自分の感情と向き合いながら、浸りながら、純粋に音楽を満喫してもらえたら嬉しいです。
NEUT:最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。
ZIN:これまでのZIN、そしてこれからのZIN。その両方を楽しんでもらえる作品とBillboardライブツアーになると思います。お楽しみに!


ZIN
R&B/SOULを軸に活動するシンガーソングライター。そのスタイルは時に優しく、時にダイナミックに人間の深層を浮かびあがらせるような独自のサウンドを追求している。 ソングライティングに定評があり、様々なアーティストとのコラボレーションや、楽曲提供も行う。 2015年から約3年間のNEW YORK留学を経て、現在は東京を拠点に活動をしている。 また関西を中心に活動するアーティストコレクティブ『Soulflex』の一員でもある。

Billboard Live Tour
〈Billboard 大阪〉
日時:2025年11月8日(土)
①開場:15:30 / 開演:16:30
②開場:18:30 / 開演:19:30
ZIN(Vocal)、井上惇志(Keys)、タイヘイ(Drums)、Keity(Bass)
朝田拓馬(Guitar)、KenT(Sax)、山田丈造(Trumpet)、Aill(Chorus)
〈Billboard 横浜〉
日時:2025年11月14日(金)
①開場:17:00 / 開演:18:00
②開場:20:00 / 開演:21:00
ZIN(Vocal)、Osamu Fukuzawa(Keys)、タイヘイ(Drums)、Keity(Bass)
朝田拓馬(Guitar)、KenT(Sax)、山田丈造(Trumpet)、Aill(Chorus)
【チケット情報】
Billboard 大阪 / Billboard 横浜 / e+
BOXシート:¥17,100(2人席)
S指定席:¥8,000(1人)
R指定席:¥6,900(1人)
カジュアル:¥6,400(1人)
*Billboard Live公式HPでチケットをご購入いただく際にはHH cross IDへの登録(無料)が必要となります。

新作EP『JOJO』
1. 超えてゆく
2. Everytime I (feat. KOJOE & FKD)
3. Distortion
4. Moegara
5. Say So
6. In The End