週末のNY地下鉄で会える。たった2ドルで大人の悩みを解決する「11歳の少年チーロくん」

Text: Asuka Yoshida

Photography: ©emotionaladvicekid

2017.1.16

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どこにでもいる11歳の少年。彼が大人たちに与えているのは勇気や希望であった。特別なことは言っていないのに、たくさんの人生に迷った大人たちが彼に救いの言葉を求めてやってくる。これはニューヨークの地下鉄から始まった物語である。

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大人たちの悩みを聞くのは、「11歳」の少年だ

ニューヨーク、ブルックリンの地下鉄に、日曜になると多くの大人が助けを求めて集まる場所がある。そこにいる人々の波をかき分け、その元をたどってみると、折りたたみ式のテーブルとイスを用意してちょこんと座っている少年がいた。彼が座っているテーブルの前に書かれているのは「心のカウンセリング $2」。この場所で多くの人の悩みに答えている人気カウンセラーだ。

彼の名前は、チーロ・オーティス君11歳。学校のない日曜日の2時間限定でカウンセリングを営業している。もちろんチーロくんは公認のライセンスを持っているわけではないが、その純粋な心のアドバイスを求め、この時間を狙い彼に会うためだけにわざわざ遠くから足を運ぶ人もいるほどだ。ここで打ち明けられている悩みに耳を傾けてみると、仕事の悩みや恋愛の悩み、時にはドナルド・トランプに関するものまでと多岐に渡る。どんな人の悩みも子ども目線に立ったお遊び的なものではなく、本気のものだった。誰もが心から彼のアドバイスを欲しがっているようだ。(参照元:Konbini

「カウンセリング誕生」のきっかけは「いじめ体験」

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しかし、なぜチーロ君はここでセラピーを始めようと思ったのだろうか。それには彼の経験が関係する。現在小学校6年生になるチーロ君だが、実は彼は学校で“いじめ”に遭っていた。いじめのきっかけは些細なことによる仲間との意見のすれ違いであったが、チーロ君の心は深く傷ついた。だが、それと同時にいじめられないために人に合わせることは間違っているし、それを伝えなければならないと感じたそうだ。

学校には、自分と意見が違う友達をいじめの対象にする生徒がいたんだ。でも、僕はそれに大きな疑問を持っていたよ。本当の自分を隠してまでみんなとうまくやることに何の意味があるのかってね。(引用元:UPWORTHY

このいじめを体験したことで、自分の他にも支えが必要な人がいて、彼らを助けなければならないのではないかということに気が付いたという。そして、人々が自分らしく生きるためのアドバイスができないか両親に相談したところ、このカウンセリングのアイデアが生まれた。(参照元:ODDITYCENTRAL

「誰かの助けなしでは人生は生きられない」

「誰にでも優しく接すること。そして、決して夢を諦めてはいけないよ」これはチーロ君の両親が常に彼に言い聞かせていた言葉である。(引用元:ODDITYCENTRAL) きっと、この教えが生きていたからであろう。チーロ君はこの活動を決してビジネスとは捉えることをしなかった。多い日で平均50ドルを稼ぐチーロ君だが、子供にとってはこの“大金”を、ランチやスナックを買うことができない子供たちのために使うことにし、全額寄付に回しているというのだ。(参照元:Konbini

みんな時には助けが必要なんだ。誰かの助けなしでは人生は生きられないからね。(引用元:Konbini

お金がないという理由でいじめを受ける子どもがなくなればいいと考え、自分だけが満足すればいいとは考えない。そんな息子の姿を見て、母は、「“今日はたくさんの素敵な人たちと会えた。どんどん友達が増えていくよ”と自分に自信がついていく息子の姿がなによりも嬉しい」と目を細める。

「悩みの結論」はいつだって「同じ」

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チーロ君はカウンセリングを続け、多くの人と接する中で気づいたことがあるそうだ。

人間関係や自分の人生をどうやって生きるか迷っている人たちはたくさんいるんだ。でも、そんな人たちに僕が与えるアドバイスは最終的にはいつも同じだったんだ。

悩んでいる人たちは問題を複雑に考えすぎているんだよ。だから僕は“もっと問題をシンプルに捉えてみたら?”と声を掛けるんだ。そうすれば何が必要なのか、案外簡単に見つけだすことができる。簡単に答えが見えてくるんだ。(引用元:ODDITYCENTRAL

“シンプル”という言葉にドキッとするのは大人である証拠かもしれない。経験によって知識を得て、人を気遣うことを覚えてしまうあまり“シンプルに考える”ということが一番難しいことになっていく。「自分はどうしたいのか」という最も大切なことを忘れてしまうのだ。さらにチーロ君は大人たちが変化を恐れていることを指摘する。カウンセラーに訪れる多くの大人たちが過去を振り返って「あの頃はよかった」と言うそうだ。

あなたがここに生まれてきた瞬間から、あなたはあなた自身を愛するべき義務があるんだよ。(引用元:NEW YORK POST

※動画が見られない方はこちら

そんな過去ばかりを見て今の自分を責める大人たちに11歳のカウンセラーは、そうアドバイスを贈るそうだ。あなたはきちんと自分を愛してあげているだろうか。その義務を果たそうとしたとき、きっと多くの悩みが解決していくのかもしれない。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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