クラウドファンディングを使い、難民キャンプで「移動するごちそう事業」を始めた女性たちのドキュメンタリー『ソフラ 〜夢をキッチンカーにのせて〜』|GOOD CINEMA PICKS #015

Text: SHIORI KIRIGAYA

Photography: ©Soufra

2018.9.3

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レバノンの首都ベイルートにある難民キャンプで暮らす女性たちが始めた、人気のケータリングサービスがある。その名もアラビア語でキッチンテーブルを意味する「Soufra」(ソフラ)で、キャッチコピーは「A Moving Feast」(移動するごちそう)。パレスチナ、シリア、イラク出身の彼女たちが心を込めて作る料理やお菓子は、どれも好評だ。

今回のGOOD CINEMA PICKSでは、女性が就ける仕事が何もなかった同難民キャンプで、クラウドファンディングを用い、人と人とをつなぐ「食」を通じて自らの生活を向上させたソフラで働く女性たちを描いたドキュメンタリー映画『ソフラ〜夢をキッチンカーにのせて〜』を紹介したい。

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ベイルートの難民キャンプの女性たち

西アジア*1に位置するレバノン内には100万人もの難民が暮らしている。そのなかでも本作の舞台となったのが、狭い空間に5万人が住むというベイルートの難民キャンプ。そしてドキュメンタリーの中心人物は、同地で生まれ育ったパレスチナ難民で、難民キャンプで暮らす女性たちへの教育や職業訓練を行うプログラムを運営しているマリアムだ。

そこで暮らす難民が直面する問題はというと、レバノン政府に定住を認められていないため、公式に学校に通ったり職に就いたりできないというもの。さらに、難民キャンプ内でも女性が就ける職がないことが、彼女たちにとって大きな問題だ。また祖国へ行きたい思いがあっても、紛争が今なお続いているため、彼女たちは何よりも毎日の生活をどうするかに目を向けている。

(*1)一般的に「中東」と呼ばれる地域

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クラウドファンディングに挑戦

自らの力で事業を始めるしか方法はなかったと説明するのが、これについては正しいだろう。マリアムは、自らがおかれた状況を改善しようと、まわりの女性たちの得意な料理を使ったケータリングサービスを思いつく。その事業には、厨房だけでなく配達するトラックが必要で、それらを購入する費用をまかなうために、現代的な資金調達の方法であるクラウドファンディングを使った。

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初めは思うように資金が集まらなかったものの、世界共通のクラウドファンディングサイトを利用したおかげか、世界中から彼女たちの現状と取り組みを知った人々から支援金が集まり、最終的には目標金額を超えた。それを使いトラックを購入したあとも、マリアムたちの事業について知った店主が費用をすべて返金してくれるなど、レバノン内での視線も温かいものだったといえる。

事業に成功して手に入れたもの

そのようにして始まったソフラは、今日もパレスチナやシリア、イラクの郷土料理を作って提供している。それを通して彼女たちが得たのは経済的な余裕や自立だけではなかった。定住が認められないだけではなく、働くことさえできなかった自分自身に価値を見出したり達成感を味わえたりしたのは、彼女たちにとって非常に大きな利益だ。

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ドルマ(ブドウの葉で米、挽肉、香味野菜などを包んだ料理で、料理中央アジアから北アフリカまで広く食べられている)

同ドキュメンタリーでは、ソフラで料理人を務める女性たちの調理の場面や、それぞれの郷土料理の歴史・ほかの料理との類似性ついて話す様子が映されるが、何よりも彼女たちの表情が生き生きしており、よく耳にする「食が人をつなぐ」という表現も決して大げさではないと思わされる。実際にレバノンの食卓へ味わい深い食事を提供することで、難民に対する見方に変化をもたらすこともあるかもしれない。宗教やアレルギー、思想などへの配慮は言わずもがな必要だが、衣食住の一つである「食」の力は、さまざまな違いを超えて人々をつなげるものではないだろうか。

日本では現在のところ、9月7日から始まるUNHCR難民映画祭でしか同作は上映されないため、ぜひこの機会に観てほしい。東京上映のチケットの申し込みは9月4日までだ。

予告編

※動画が見られない方はこちら

『ソフラ 〜夢をキッチンカーにのせて〜』

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9月7日(金)16:00開始
イタリア文化会館(東京)<満席>

9月8日(土)16:00開始
イタリア文化会館(東京)

9月29日(土)15:30開始
グローバルフェスタ2018(東京)

9月29日(土)13:00開始
札幌プラザ2・5(札幌)
※札幌上映は『君たちを忘れない ~チョン・ウソンのイラクレポート~』を併映

10月7日(日)18:00開始
名古屋国際センター 別棟ホール(名古屋)

UNHCR難民映画祭の映画詳細ページはこちら
チケットの申し込みはこちら(※東京は9/4(火)まで)

地域 :中東(レバノン)
監督 :トーマス・モーガン
製作国:アメリカ、レバノン
製作年:2017年
上映時間:73分
カテゴリー:ドキュメンタリー
言語:(音声)アラビア語 (字幕)日本語、英語
エル・グウナ映画祭(2017) Mentor Arabia 賞、 Cinema for Humanity Audience 賞
日本初上映

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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