消費の中心地「原宿」で、お金を使わずに、仲間と楽しく食べるスープの味|都会のローカルコミュニティ、「原宿キャットストリート CATs」の活動日誌 #004

Text: Genki Nakamura

Photography: Shiori Kirigaya unless otherwise stated.

2019.12.20

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こんにちは、CATs(キャッツ)の中村元気(なかむら げんき)です。
毎度ですがCATsは、原宿の裏通りにある、個性的な店舗の立ち並ぶキャットストリートのお店の人を中心とする人たちと始めた地域コミュニティ活動です。全ての活動の根底には「消費の中心地」といわれる原宿だからこそ「消費」について考え、都会だからこそ「困ったときに助け合えるような関係性」を作りたいという共通した思いがあります。

言ってみれば、消費地だからこそ、当たり前に買い物して消費したくないという、僕の非常にあまのじゃくな性格がこの活動を作っているわけです。今回は原宿地域で捨てられてしまっている食品をどうやったらストリートの日常に組み込めるかという活動の一部をご紹介します。

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左からオオヤマ タカコさん、中村元気
都会のローカルコミュニティ、「原宿キャットストリート CATs」の活動日誌 についてはこちら

廃棄されてしまうキャベツの葉入りスープをみんなで食べる

CATsが月に一回開催しているゴミ拾いの活動「CATs Cleanup」では、最後にコーヒーを出してみんなで飲むことが定番なのですが、そのコーヒー豆はコーヒー屋さんから少しいただいたサンプルのお豆を使っていることもあります。冬の寒い季節にはスープを出していて、具にはキャットストリートの八百屋さんから売る時に剥いでしまうキャベツの葉の外側の3枚目までを譲ってもらって入れています。

売る時に捨ててしまう部分と言っても、キャベツ自体は売り物と同じものですし、十分美味しいんです。購入する人が見た目を気にしたり、持ちにくいなどの理由も廃棄につながっているんだとか。

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2018年冬の様子
Photography: CATs Cleanup

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2018年冬の様子
Photography: CATs Cleanup

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キャットストリートの八百屋さん

量も十分、なんせ無料。お金をかけなくても、人と人のつながりのなかで原宿で楽しい時間を過ごせるんですよね。でもここで言いたいのは、ただ「お得だよ!」とか、「ゴミ出してんじゃないよ!」という話ではなくて、街でお金をかけずに楽しいイベントを作るためには、街のいろんな人の仕事を知っていることや、日々信頼関係が築けているかというような要素が必要になるんです。

参加者へその素材をいただいた理由と同時にお店の紹介をして、改めてお店に言ってもらうように促すと、話を聞いてからお店に行った人はただのお客さんよりももっと強い関係性を持ったお客さんになるので、深いコミュニケーションや日々の挨拶なんかにつながるんです。また、素材のことを紹介することで少しでも生産者や売っている人の思いに触れながら食べることができます。

街のみんなと仲良くなれば、街のことも大事にしたくなる?

以前記事で書いたクリーンアップを振り返ってみても、このキャットストリートでの活動では、何より参加者同士のコミュニケーションを大事にしています。街のみんなと仲良くなれば、街のことも大事にしたくなるだろうと考えているからです。関係性を築くことは、対象を丁寧に扱うことだと思っています。気にかけたり、手伝ったり、その人のために何かをしたりとか。

街の誰かが出した「もの」を、誰かが「価値」に変えることで、ゴミではなくなる。つまり、ゴミが人を繋ぎ、人の輪を作っていくってことですね。このように考えていると、「ゴミ」(=自分的にはゴミではないんですけど)には無限の可能性があるんじゃないかなと思ったりしているわけです。スープの例で言えば、自然と地域の「フードロス」への対策にもなっているんです。

フードロスってなんだっけ?ってところですが、売れ残ったものや食べ残されたもの、期限切れになってしまったものなど、本来は食べることができた食品を廃棄してしまうことを指します。生産や加工の過程で出ることもあります。日本では平成31年の農林水産省が出したデータによると、643万トンのフードロスが出ているそう。これは世界中で行われている食料援助の約2倍に相当する量で、その廃棄自体にも年間2兆円のお金をかけているのです。

オオヤマ タカコさんが考えるフードロスの原因

今回紹介するキャットストリートの仲間は、「0 waste」をコアコンセプトに、企業、消費者、行政の3つのレイヤーを巻き込み「ゴミを出さない経済循環」を提案することで、持続可能な社会を目指す530week(ゴミゼロウィーク)という団体で一緒に活動しているオオヤマ タカコさん。去年、八百屋さんでもらったキャベツでスープを作ってくれました。ちなみに彼女は当時原宿に住んでいました。

530weekのオオヤマ タカコさん

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彼女がいつも言っていることに僕はとっても共感しています。農家や地球を大切にしたケータリングのディレクションなどを行い、フードロスをはじめとする問題に取り組むうえでの考えを彼女に教えてもらいました。

社会問題は様々な問題が関係しあって起こっているので、フードロスの問題だけを解決しても根本的な解決はできないと思っています。例えば、家庭でのフードロスの問題が顕著になっていますが、その背景には仕事が忙しかったり、1人暮らしで、買いものを使い切れないなど、理由は様々ですが人間のライフスタイルとつながります。だからこそフードロスの問題を解決するには、人間のライフスタイルを変化させていくためにはどうしたらよいのかを考える必要があります。その答えとして、人間が自然の一部であると認識をすることで、よい暮らしをするためには、自然に準じた暮らしをすることが一番だと考えています。

働き方やライフスタイルが食べ物への優先度を決めているというのは間違いないと思っていて、さらに言えば、そのご飯の食材はどこで誰がどのように作ったのかと言うもののストーリーを知って食べている人はほとんどいないでしょう。確かにそれなら簡単に食べ残すに決まってますし、余分に買って食べずに捨てても何も思わないはずですよね。特にコンビニやスーパーのお惣菜なんかもそういったものの最たる例だと思います。

私たちはその食材をお金で買っているように思うかもしれませんが、地球や作ってくれる農家さんから頂いているということをちゃんと考えなくていけないと思ってます。お財布が痛むくらいで済めばいいですが、ゴミ問題はそんなレベルじゃないことは周知の事実ですよね?自分たちが口にしているもの、使っているものは全て誰かの手によって作られているということを忘れたくないなと思っています。農家さんが最後に食べるあなたを思って作っているし、美味しく届けて販売しようとしている八百屋さんもいるわけで、たくさんの人の手を渡って今あなたの目の前にあります。

一緒に美味しいスープを飲んで、楽しく時間を過ごしたいだけ

原宿という消費の街だからこそ、生産の現場のことを考えたいし気遣いたいんです。野菜はお店に生えてくるわけではないので。誰かが作っているものを、誰かが運んで、誰かが売って、誰かが食べるという大きな輪の中に自分たちがいるということを、ちゃんと認識しておかないと問題の表面しか見えてきませんし、同じ地域にいるのに、自分と考え方の違う人を排除して活動しなくてはならなくなってしまいます。

なので、「問題を知りなさい」というお説教ではなくて、ゴミ問題が大変だからって話でもなくて、あなたと一緒に美味しいスープを飲んで、楽しく話す時間を過ごしたいんです。お腹が空いたら飯を食う。そんな楽しい時間を作るためには、とてつもない数の人が関わっているってことを少しでも想像してみると、なんだか目の前の料理や食材が愛おしくなったりするって話なんです。

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私たちの生活は便利で、手紙や会わなくたって連絡を取ることができたり、話せたりする。つまりは新鮮でリアルタイムな情報が常に手に入るということだけど、なんでこんなにも寂しくて味気ないんだろうと日々思っていました。記事を読んで世界の全てを知った気になっている自分がいることに気づいた時に、あーなんか手触りがあって、リアルで人間臭い暮らしを自分の好きな原宿っていう街でもしたいって。別にかっこつけなくたって、いっぱいお金がなくたって、好きな人とゆるくおしゃべりしながら、一杯のコーヒーを飲んで過ごせる場所があればいいなって思っています。

今回の連載で紹介した、原宿キャットストリートで出会った人
530weekのオオヤマ タカコさん

株式会社fog代表、530理事。自然とそこに暮らす生き物の豊かな生物多様性のいきいきとした様が好き。そのことから長い月日の中で忘れさられた人間も自然の一部であるという意識を取り戻すため、循環型社会に向けたプロセスデザインを食や行動分析、コミュニティ形成などといった多方面から行う。

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中村元気(Genki Nakamura)

Instagram

1992年、埼玉県行田市生まれ。 原宿のキャットストリートという通り沿いで地域活動 CATsを始める。地域に関わる様々なレイヤーの人達と居心地のいい街を作るために日々活動中。消費の中心地だからこそ、クリーンアップなどお金では手に入らない人間関係を作る活動や、表参道の落ち葉を使ったコンポストなど生産側になりゼロから価値を生み出すアクションを実験的に行う。それ以外の活動には都市型屋上農業や、地域のみんなで行うキャンプや山登りなどがある。また、2018年には地域のゴミ問題の根本解決を目指すために「0 waste=ゴミ・無駄のない」ライフスタイルの提案を行う530weekという活動を立ち上げ、5/30にイベントを開催した。

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CATs

Facebook

東京の中心で昔ながらの商店街のような空気感を持つ、CAT street で働く人たちがメインのコミュニティ。商いをする人たちが、商い以外の活動を通して繋がっている。”ACT DIFFERENT” というコンセプトを掲げていて、消費の中心地、原宿で日常的に消費について考え、行動できる仕組みを作ったりもしている。

目的:
*都市の真ん中で、地域に関わる個人や店舗が有機的につながること
*地域に関わる人が、当たり前の日常に少し変化を起こすこと
*地域に関わる人が、生活に必要な物だけを選ぶライフスタイルが浸透すること

活動:
*Cleanup
*Compost
*CAFE SHIBUYAGAWA
*CAMP CLUB
*Meetup

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CATs cleanup vol.70

Facebookイベントページ

今回でとうとう70回目のクリーンアップ。始めるきっかけになった日を今でもはっきりと思い出します。だんだんと増える仲間たちとこれからも一緒に原宿のことを考えていきたいと思っています。

70回の記念の回なので、今回もステッカーを制作しています。今回はPAIK DESIGN OFFICEのデザイナーのパイクさんが描いてくれています!!ぜひ参加して手に入れてください!!

今回の記事同様スープをご用意しています。どんなスープが出るかはお楽しみに。
お椀とお箸は必ず持って参加してくださいね!

これからも多くの参加者が原宿を好きになりますように。

日時:12/21(土)9:00-10:30
集合場所:CHOP COFFEE CAT STREET店前
持ち物:オープンマインドとマイお椀、マイ箸、マイカップ

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PAIK DESIGN OFFICEのデザイナーのパイクさんによるステッカーデザイン

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