MIT学生が大発明。インドの「汚染された空気」から作られた美しいインク「AIR-INK(エア・インク)」

2017.2.24

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あなたが車やバイクを運転するとき、工場で何かを生産するときや廃棄処理場でゴミを燃やすとき、空気を汚染する物質が大量に排出されている。大気汚染問題の恐ろしさは、空気が地球全体でつながっているために、汚染物質が発生したところだけではなく、その他の地域にも影響を及ぼすところにある。

日本では高度経済成長に伴って大気汚染が「公害」として社会問題化した。急速な発展を遂げている現在のインドでは、WHO(世界保健機関)が容認する基準の15倍もの大気汚染物質が近年大量に放出されており、視界が利かないほどのスモッグが発生するなど深刻だ。人体に対しては肺がんや心臓病、呼吸器系疾患のリスクを高めるという。これを受けてインドの日本大使館は、大気汚染がひどいときには、不要不急の外出をしないよう呼びかけている。(参照元:Bloomberg, Embassy of Japan in India )。

このような汚染の背景には、環境に優しくすることよりも経済的な発展を重視する国に工場を置く日本などの先進国の企業の責任もあり、対策を迫られているのが現状だ。(参照元:(株)エックス都市研究所)そんな中、環境を汚すだけでなく人体にも悪影響を及ぼす大気汚染物質をリサイクルし、普段の生活やクリエイティブワークに欠かせないインクを生み出したインド人がいた。

「大気汚染物質からインクを生み出す」という解決策

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Photo by AIR-INK

大気汚染の深刻なインドに一時帰国したマサチューセッツ工科大学院生Anirudh Sharmaが考えたのは、自動車から出る排気ガスに含まれる黒いすすをインクに変えることだった。そのきっかけは「どうすれば大気汚染物質のような醜いものを、便利なものに変えられるか」という問いを、自らに投げかけたことだった。こうして始まったのが大気中に出て行く大気汚染物質の量を減らすことのできる初めてのインク「AIR-INK(エア・インク)」の開発だ。

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Photo by AIR-INK

エア・インクは自動車の排気口を覆う特殊なパイプを取り付けたまま自動車を走行させて採取した炭素から、人体に悪影響を及ぼす発がん性物質を取り除いて作られる。したがって、汚染物質からできているとはいえ私たちが普段使うペンと同様に使えるのだ。

こうして環境や人体に有害な物質が大気中に放出されるのを防ぐだけではなく、炭素を生活必需品として再利用できるため、社会的に大きな意味を持つといえる。ちなみにインドではたった45分間自動車を走行させるだけで、1本のペンをインクで満たすのに十分な30mlの炭素を採取できるという。このエア・インクはスクリーンプリントや油絵にも使えるという用途の多さや使いやすさだけでなく、スタイリッシュさも魅力だ。(参照元:WIRED, Kickstarter

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Photo by AIR-INK

ペイントアーティストも好む、ハイクオリティのインク

インクを使ったペイントを行う若手のアーティストにもエア・インクのプロジェクトが支持されている。それは、ただインクが環境を改善するのに役立つからではなく、濃くて滲まないというインクとしての魅力を備えているからだ。 ペンは濃く描ける2mm、15mm、30mm、50mmの太さのものが作られており、アートワークに使われることが想定されている。(参照元:Kickstarter

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Photo by AIR-INK

エア・インクはクオリティが高く、クリエイターにエコ・フレンドリーな選択肢をくれる。インク自体が他の多くのインクよりも濃くて、でこぼこした表面にも滲まずに描けるんだ。インクの色は混じり気のない黒で、私の制作するものにぴったりと合う。

香港の壁画家クリストファー・ホー(引用元:Kickstarter

キックスターターで本プロジェクトを応援すると、金額に応じてエア・インクで描いた壁画をパブリックスペースに設置できたり、エア・インクセットがもらえたり、自分の住む都市の大気汚染物質からインクを作ってもらえるなどの特典がある。詳しくはこちら

エア・インクに使用された技術が広まれば、従来のように染料などを合成してインクを製造する必要がなくなるかもしれない。アイデア主のAnirudh Sharmaが所属する、エア・インクを開発したGraviky LabsのFacebookページはこちら

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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