「踊り」を通して感じ、表現するアイデンティティ。『アイヌ』と『琉球』にルーツを持つダンサーAOI

Text: Noemi Minami

Photography: STORM LUU

2018.11.14

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独自の言語や生活習慣、芸術文化を持ち、共に日本に併合された歴史を持つアイヌと琉球。母方に琉球、父方にアイヌのルーツを持つAOIは、東京を拠点に自身のルーツを踊りを通して感じ、表現している。

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AOI

「自分にアイヌのルーツがあるってことを知ったのは高校生のときだったんだ」。
ルーツについてAOIに聞くと、そう返ってきたので少し驚いた。

18歳のときにダンスの専門学校に入学するために上京した彼女は北海道で生まれ育った。年に二度沖縄を訪れるのが家族の習慣で、親戚はみな琉球舞踊を嗜んでいたためAOIも自然と小さい頃から踊り始めた。文化的に触れ合うことが多かった琉球とは対照的に、アイヌにルーツを持っていることを知ったのが高校生のときだったのは、アイヌ人の祖母と結婚した祖父の意向だった。
その祖母は父が二歳のときに他界したため、AOIに彼女との記憶はない。

「アイヌは少数民族だからあえては言ってなかったんだって」と振り返りながら、初めて自身のアイヌのルーツについて聞いたときは、特に驚くこともなく「ふーん、なるほど」と腑に落ちたと話す。琉球の文化と触れ合うことが多かったのもあるのか、小さい頃から民族的なものに惹かれていたAOIは、自身にアイヌのルーツがあると知ったあとはいろいろな資料館を訪れた。特にアイヌの「紋章」の、その美しさに夢中になった。

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日本とアイヌの関係の歴史を振り返れば、それは迫害の歴史だといわれている。祖父母が若い頃は、悲しいけれどアイヌとの関係を「きっと言えなかったんだよね」と姉と話すこともあり、「具体的に誰かが何をされたって経験がないから、悲しみは私にはわからない。だけど、今こうやって私がアイヌにルーツがあるって普通に言えること自体、時代が変わったんだと思った」とAOIは実感している。

もともと踊りのルーツが琉球にあり、それにアイヌの要素を足して表現活動を行なっているAOI。まわりのクリエーターに協力してもらい、アイヌの紋章をヘナタトゥーで体にのせ、自身の踊りを撮影、ビデオや写真として展示をしたこともあった。

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作品の一部
Photography: Reranaru.

最初は「おばあちゃんとすごく親交が深かったわけではないし、アイヌの苦しみを知っているわけではない」から、自身のルーツを公に出すことには迷いもあった。それでも「ルーツに入っているっていうのは確実」であるから、自分なりに表現することを決意した。アイヌをリスペクトし、音楽やアートで表現している多くのアーティストの存在にも後押しされた。いろんな人がいろんな形でアイヌを表現することを「それはすごく素敵なこと」だと考える彼女は、自身のルーツはあえて発信していきたいと今は強く思うと話してくれた。

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アイヌに限らず琉球に関しても、彼女にとっては自身のルーツを踊りで感じ、表現することはごく自然なことである。「アイヌ文化の存続が難しくなってきている現状についてその現実と向き合いながら生きる人たちみたいに重い言葉は簡単に言えないから、アイヌの芸術を表現するアーティストがいるよってことを私は発信したい」、そんな彼女の言葉からわかるのは、活動の根底にある琉球やアイヌの芸術への愛であり、それはあくまでも自身のアイデンティティ感じたり、表現する方法であるということである。表現への健康的な欲求が、結果的に文化発信の側面を担っているのは、音楽や踊り、アートならではのことなのかもしれない。

琉球とアイヌの芸術をミックスしたAOIの作品

※動画が見られない方はこちら

AOI

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