初来日!SXSW映画部門の大物ディレクターに聞く「本当に良い映画」

Text: SHIORI KIRIGAYA

Photography: Reo Takahashi

2016.7.21

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「みんな思ったよりも背が高かった。夫は2メートルちょっとだから、日本で一番背が高い人になるんじゃないかってみんなが冗談を言っていたのだけど、そんなことはなかったのよ(笑)」

そう初めて訪れた日本の感想をもらし、フランクな雰囲気で始まった今回のジャネット・ピアソン氏へのBe inspired!独占取材。

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なんと彼女は、米・テキサス州で毎年3月に開催される音楽、映画、インタラクティブの三部作で構成される大規模なフェスティバル『サウス・バイ・サウスウエスト(以下SXSW)』の映画部門の敏腕トップディレクターだ。

2008年にSXSWの映画部門プロデューサーに就任以来、数多くのヒット映画やインディペンデント映画が世に出る前の選考を行なっていたジャネット・ピアソン氏。

ミニシアター新宿シネマカリテで7/22(金)まで開催されている「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」に合わせ初来日した彼女に「本当に良い映画とはなにか」贅沢にも伺った。

「新しい才能」を見つけるならSXSWで

SXSWは米・ユタ州で開催されるインディペンデント映画の宝庫として知られる「サンダンス映画祭」に続く第二の映画祭で、規模は仏・カンヌ映画祭と同程度だが、客層の面では全く異なりカジュアルでエッジが利いているのが特徴だ。

SXSWにはどの応募作品も必ず審査員が見て審査するというポリシーがあり、新しい才能の発掘にも力を入れている。ここで上映される作品のほとんどが世界で初めて上映されるものであることから数多くの映画バイヤーたちも訪れるという。

「魅力ある映画」とは

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ーSXSWで公開される映画を選ぶのに関わっているのですか?それともコンセプトを決めるだけですか?

私は作品の選考にも深く関わっています。自分だけでやっているのではなくチームで協力していて、2500の長編映画と5000の短編映画が出品され、最終的にフェスで流す長編を140作品、短編は110作品まで絞らないといけません。ですが毎年いい作品が来ているため少し多めに上映しているのが事実です。応募作品を見てどれにするのか選ぶのは大変大きな仕事なのです。楽しそうに聞こえると思うけど、実際に楽しいと思えるのは自分が好きな映画に出会えたときだけで、それまでは本当に大変です。

ーどんな基準で選んでいますか?

いろんなジャンルの作品をフェスのために選びたいから、映画を10のセクションに当てはめ、それぞれから一定数の作品が上映できるように映画を選考していきます。笑えるものも、ホラー映画も、予算をかけて作ったものも欲しいし、かなりの低予算で作った作品もいい、それからドキュメンタリーやノンフィクション、逸話、音楽映画、世界を巡るものなどさまざまなジャンルの作品を求めているのです。選ぶ基準は、主に『私たちの心を動かすか』。私たちの心に話しかけてくるようなものか、それで私たちの感情はどう反応するのか。私たちが映画を見るとき、本当に多くの映画を短時間で見る。ひとつ見たあとにひとつそしてまたひとつ。一晩で12本とかね。でもこんなにたくさん見ていても、抜きん出ていて心を動かされるものは見つかります。

ー選んだ作品に似たような傾向はあると思いますか?

どうしてもバイアスはかかってしまうとは思っています。同じような作品ばかりになってはいけないので自分に問いかけ直すようにしているけれど。私が好きな作品がどんなものかというと、『自然』であるもの。私たちは主題に対する創作力や独創的なアプローチを求めています。例えば、2年前に『Krisha』(原題)というアメリカの感謝祭の日に家族が集まって食事をしている様子を描いた映画があったけれど、感謝祭をテーマにした映画は山ほどある。描かれすぎていて面白くないテーマだと思った。でも見始めて3分くらいで、なぜか引き込まれて、それがどうしてなのかわからなかった。これを撮った彼には才能があって、他の映画にもありそうな場面なのに続きを見ずにはいられなかったのです。私たちが求めているのはそんな映画です。

インディペンデント映画の現在

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ー「インディペンデント映画(自主制作映画やメジャーなスタジオに属さない映画)」や「ドキュメンタリー映画」。両映画とも、普通のハリウッド映画系の一般的な娯楽映画と比べて強いメッセージが込められていることが多いのにもかかわらず、見に来る観客の数が少ないが、この状況をどう捉えますか?

それは大きなトピックね。夫そして私もインディペンデント映画に長く関わってきたけれど、80年代や90年代初頭にはインディペンデント映画でも高いリーチを誇ったものがあった。だけど、時代はこういった映画にとってはどんどん難しくなってきているのです。テレビで契約できるチャンネルも昔と比べてうんと増えてきているから。もっと多くの人が見てくれるといいと思うけれど、私の仕事は面白いと思った映画や才能のある人を応援すること、そして彼ら自身の作品を試せるような機会を生み出すことだと思っています。その質問に対して簡単な答えはないけれど、『面白いもの』をこれからも保っていきたいと思っています。今まであまり多くの人に読まれないような本をたくさん読んできたけれど、自分にとっては大きな意味があった。そういうものはそれでいいと思っているの。

ジャネット・ピアソン氏をインスパイアするもの

ージャネットさんが今まで最もインスパイアを受けたものは何ですか?

私の好きな作品を創るアーティストからは大きなインスパイアを受けていると思う。私はアーティストではないけれど、アーティストの才能を助けたり観客と結びつけたりすることは本当にエキサイティングで私の人生に意味を持たせていると思う。その才能は音楽でも書き物でも映画でも。才能のある人の育成し、才能に磨きをかけ、また批評するということは素晴らしい。 それは私が大切にしていることです。

「独自の視点」というエッセンス

「独自の視点」で物事にアプローチすべきなのは、インディペンデント映画界だけの話ではない。自分にしかできないことを持つことは、自分の生きたいように生きていくために必要だ。

ジャネット・ピアソン氏の話を聞いていると、今まで聞いたことのない映画のタイトルや監督の名前が多数出てきて圧倒されたが、“自分にしかわからないもの”を愛することの大切さに気づかされた気がする。

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SXSW TOKYO SCREENING WEEK 2016 | EVENT TRAILER

※動画が見られない方はこちら

SXSW TOKYO SCREENING WEEK

Website

7月16日〜22日

ミニシアターの新宿カリテが「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016」の一環として、SXSWで上映された厳選作品を日本でも上映する初の試み。ラインナップは多ジャンルから選ばれている。

最終日の7月22日(金)の上映作品はおバカ映画でも超社会派映画でもあるという「ロアー」(原題:ROAR)で、特別ゲストトーク<映画宣伝いまむかし>を上映前に聞くことができる。

会場の新宿シネマカリテの詳細はこちら

チケット購入ページはこちら

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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