人種も性別も体型もさまざまな裸の40人が踊る。フランスのコレクティブKourtrajméのプロジェクト「PINKNOISE」

Text: Noemi Minami

Photography: Marilou Chabert

2020.4.21

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人種も性別も体型もさまざまな裸の40人が、エレクトロ・トランスミュージックに合わせて踊り、キスをし、抱き合っている。

流動的なジェンダー、多様なセクシュアリティ、社会が決めるつける美の基準から解放されたさまざまな体型。
愛、セックス、裸。
人々は社会のタブーから解放され、自身の体とアイデンティティを取り戻す。

PINKNOISE – Papa Belly

Pink Noise – Papa Belly from Pink Noise on Vimeo.

2020年4月の初め、突如インターネットに現れたこの衝撃的な音楽映像はフランスが生んだ気鋭の監督が集まるコレクティブKourtrajmé(コートラジメ)のプロジェクトで、謎に包まれるアーティストPINKNOISE(ピンクノイズ)の新作『Papa Belly’s』のMVだった。

Kourtrajméは、少年時代から付き合いのあるフランスの映像監督4人、Romain Gavras(ロマン・ガヴラス)、Kim Chapiron(キム・シャピロン)、Ladj Ly(ラジ・リ)、Toumani Sangaré(トゥマニ・サンガレ)がフランス映画界に革命を起こすべく1996年に結成したコレクティブである。

90年代のパリの郊外を舞台に移民の若者たちを描いたMathieu Kassovitz(マチュー・カソヴィッツ)監督のカルト的映画『憎しみ』に触発されたコートラジメのメンバーは、既存の映画界の保守的な構造を破壊すること、そしてフランスの多様な人種を反映する作品作りを目指した。そしてコレクティブはすぐにドキュメンタリーやショートフィルムで注目を集める。

2003年に公開されたフランスのヒップホップ集団Mafia K’1Fryの『Pour ceux』のMVは特に称賛され、2008年にRomain Gavrasが監督したJusticeの『Stress』のMVでは、暴力的な子どもたちが街を徘徊する映像でフランス市民を動揺させた。最近では、2019年第27回カンヌ国際映画祭で審査員賞に輝いたLadj Lyの『レ・ミゼラブル』が日本で2月に公開されたばかりだった。

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PINKNOISEの正体ははっきりとは分かっていない。オフィシャルのYouTubeやVimeoを見てみても『Papa Belly’s』の他には去年公開された『Too Hot』しか見当たらない。そしてまたこの『Too Hot』も奇妙で力強い音楽映像なことは確かである。

だが今回、NEUTは幸運にもこの『Papa Belly’s』に出演したフランスのアーティストRébecca Chaillon(レベッカ・シャイヨン)に話を聞くことができた。気になる撮影現場はどうだったのか。このセンセーショナルな作品は何を意味するのか。

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ーまず初めにあなた自身について少し教えてください

私はパリの郊外に住んでいる34歳の女性、Rébecca Chaillon。ボディパフォーマンスやフードパフォーマンスをしたり親密さをポリティカルな素材として執筆をすることに情熱を持つ黒人の太ったダイク(レズビアンを意味するスラング)。「DANS LE VENTRE」 (お腹の中を意味する)という劇団で監督をしていて、RER Q(フランスの電車会社から取った名前)という官能小説を制作しているトランス・ダイク・ノンバイナリー*1・フェミニストコレクティブでも執筆をしてる。

ーどのような経緯で今回『Papa Belly’s』にキャスティングされたのですか。そしてなぜ出演を引き受けたのですか

Kim Chapironには、キャスティングディレクターのLola Diane(ローラ・ディアヌ)を通して知り合った。私とキムが息が合うって彼女は分かってたみたい。
ダイクたちやトランスジェンダーがサッカーをするという私の劇や、私が裸で45分の間に4枚のピザを食べながら、10本のタバコを吸って、8本のビールを飲み干しいくパフォーマンスを見たからかな。

元々キムの『変人村』や彼のコートラジメの作品が好きだったし、コートラジメという彼が作り上げた家族は本当に素晴らしいと思う。
それに、まるで天才の子どもみたいに目を見開いて興奮しながらプロジェクトについて話すところにも惹かれた。
夢を見させてくれると思ったし、大勢の人が裸で踊ってドローンで撮影するっていうアイデアは最高だと思った。

ー40人が裸で親密な関係になるというのは特殊な環境だと思いますが、撮影現場はどんな雰囲気でしたか

それがすごく自然に感じたから不思議だよね。裸っていっても靴だけ履いてたけどね!ah ah!
撮影現場にいたチームが居心地のいい環境を作ってくれたし、部屋にいる全ての人が笑顔で、お互いを優しい目で見ていた。
(なんといっても制汗剤スプレー!)
みんなお互いに敬意を持って、楽しんでいた。
私たちはクレイジーにダンスした。
私はベルリンに行かなきゃ行けなかったから、キスのシーンにはいられなかったのが残念だけど。
キムの“仕事の家族”がみんなキムの周りにいたのもいいなと思った。

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ーこの音楽映像は何を表現していると思いますか

ヒッピーみたいに聞こえたら嫌だけど、裸でいると人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、年齢、体型、障がいが、よく見えて、同時に見えないように感じた。

今あげたようなトピックは私にとって大切なテーマだったから、最初は若くて細くてクールでセクシーな人たちのための映像になったら嫌だなって思ってたの。
もしくは逆に、マイノリティのためだけの映像になっても嫌だった。

でもそんな心配はいらなかった。
多様性のための、自然のための、快感のための作品だった。

私が思うに、この作品は、体の内側から音楽やダンスを楽しむことがテーマだったと思うの。社会的制約まみれの「社会的体」じゃなくて。

ーこの映像では人々がありのままの自分を受け入れ、性を受け入れているような印象を受けました。その一部になるというのはどのような感覚でしたか

ユートピア的な一時だった。自分のなかに強さを感じた。
最初は自分の裸を性的なものとして見ないように葛藤はあった。最終的には楽しんだけど。みんながそれぞれ好きなようにダンスしてたから。
私のファット・ブラックボディが憐れみではなく強さを表しているということに誇りを感じた。
それに、たまには私だけが「多様性の象徴」じゃないっていうのが嬉しかった。

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ー最後に、もしそれが体型であれ、ジェンダーであれ、セクシュアリティであれ、自身を受け入れることが難しい人に、あなたならどのような言葉をかけますか

自分を愛するための時間はいくらでもある!
別に自分を大好きにならなきゃいけないわけじゃない。
あなたはあなたの人生のエキスパートなんだから、他人にどうこう言わせなくていい。すっごく信頼している人じゃない限りね。
本を読んで、ドキュメンタリーを見て、あなたと同じような人に出会い、彼らを愛せばいい。だって、そうすれば、いちいち人とぶつからなくてもいい。安全な人たちと安全な場所を作ることができる。

私はコミュニティのなかに希望と答えを見つけたの。
アフロフェミニズムコミュニティ、太った人たち、クィアの人たち、演劇の人たち…。
ひどいことも多い現実世界を生きていくのにコミュニティの人たちが強さや知識を私にくれるの。

(*1)ノンバイナリーとは「男」か「女」でもない、もしくは両方を持ち合わせている性別のこと

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