日本と正反対。個人が社会を変えられると信じている「アイスランド国民」が起こした21世紀の“労働革命”

Text: Asuka Yoshida

Photography: ©Arnthor Birkisson

2017.6.23

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共謀罪や受動喫煙法など、いくつかの法案が今、日本の世の中を賑わせているが、それをまるでどこか違う国の出来事のように捉えてはいないだろうか。日本には「国民がどうもがいてもきっと何も変わらない…」と政治に対して諦めているような雰囲気がある。しかしアイスランド人がこの出来事を知れば、すぐにでも立ち上がって行動に移すだろう。一体、日本とアイスランドの国民性の違いは何なのか。

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午後2時38分。オフィスから女性が「消えた」ワケ

2016年の10月24日、午後2時38分。アイスランドでとある“事件”が起きた。時計の針がこの時刻を差すと、オフィスにいた女性たちが一斉に退社し始めたのだ。

実はこの行動は、女性たちが自らの権利を求めて行ったデモ活動の一つ。アイスランドにおける女性の社会的地位は男性よりも低く、同じ仕事をしていても、女性が得る賃金は男性が得る賃金よりも29.7パーセントも低いことへの抗議であった。(参照元:GRAPEVINE)女性たちはサイトやSNSによって呼びかけられたそれぞれの地域の広場に集まり、プラカードを持って男女平等を訴えた。

ちなみに、欧州統計局の調査によると、女性の賃金は男性に比べ29.7%低く、それを8時間労働に当てはめて考えると、女性は午後2時38分以降は毎日タダ働きしているということになるからだそう。このデモ活動は全国規模で行われ、多くの女性たちが参加したという。(参照元:kvennafri公式Facebookページ

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Photo by Arnthor Birkisson

世界一、男女が平等の国が求める、「男女平等」

ここまで大規模なデモ活動が行われるとは、どれほどアイスランドの女性の地位が低いのかと知りたくなるが、驚くべきことにアイスランドは2016年の男女平等ランキングにおいて世界第1位という結果を残している。近年、日本も男女格差の是正に重きを置いているが111位という日本の結果を見ると、どれほど女性の地位が高いかは一目瞭然だろう。(参照元:WEF)それでもアイスランドの女性たちは現状に決して満足することなく、100パーセントの平等を求め立ち上がっている。これは彼女たちが民主主義においては国民の力が強いということを知っているからかもしれない。

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アイスランドは過去にも「ビールを飲む権利」を勝ち取ったり(参照元:BBC)、最近では大統領が冗談で「パイナップル入りピザを禁止したい」と発言して批判を浴び、「自分にそんな権限がないことは喜ばしい」と釈明している。(参照元:Iceland Magagine)過去の歴史から、国民が妥協してはいけない、そして妥協しなければ社会は変えられると学んでいるのだ。

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約7割の日本人の若者が感じる、「社会は変えられない」

それに対し、日本はアイスランドのような全国規模で行われるデモ活動はあまり見られない。それは決して今の日本社会に国民が満足しているからではなく、国民一人の力では何かを変えることはできないと思っているからではないだろうか。

例えば、内閣府が2013年に示したデータによると「社会現象が変えられる」と思っている若者の割合はおよそ30パーセントほどしかない。アメリカやイギリス、ドイツ、フランスといった欧米諸国が50パーセントほどなのに対して、低い数字となっている。だからと言って日本の若者は将来に希望を持っているわけではない。同調査で、「将来に希望がある」、「40歳の自分は幸せだと思う」と答えた日本の若者はともにおよそ60パーセント。アメリカやヨーロッパ各国のおよそ90パーセントが、「将来に希望がある」、「40歳の自分は幸せだと思う」と答えていることと比べると、ダントツに低いのだ。(参照元:内閣府

 

「妥協」よりも必要な、小さな一歩

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アイスランドは世界で一番男女が平等な国にも関わらず、それに対して満足することなく自分たちの権利を勝ち取るために国民が声をあげている。アイスランドには“国民の声が強い”という考え方が根付いているからなのではないだろうか。

 

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それに比べると、今の日本の若者は、国民の声がどれほど有益で国を変える力があるのか知らない、もしくは理解していても諦めている人が多いのかもしれない。この意識の低さは、近年、国民の力で何か国が変わったり、政治が動いたところを見た経験が少ないから仕方のないこととも言える。だが、それを言い訳にするのも少し違う。冒頭の受動喫煙法に関しては、先日サッカー日本代表の本田圭佑選手がTwitterで意見したことで話題となり、この法案を知らなかった人を巻き込んで議論され、自分たちの国について考える、ある意味良い機会となった。(参照元:KeisukeHonda(本田圭佑)

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有名人という差はあるが、私たちは一人ひとりが意見を持ちそれを発信することだけでもだけでも、自分たちの国をよくしていこうという第一歩を踏み出すことになるのだ。将来に希望を抱きたいのであれば、今必要なことは、妥協ではなく、「小さくても社会を変えて行こうとする意識」のはずだ。

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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