「肉食」が「環境」を壊す

2016.6.25

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少し前にアリアナ・グランデが実践しているとして話題になった「アリアナ式ダイエット」。これは彼女が肉だけではなく、卵や牛乳などの動物性のものを一切摂らない「ビーガン」であると発言したため、ダイエットの効果を取り上げてメディアが名づけたものである。このように日本では、「菜食主義=ダイエット」という見方をされがちである「ベジタリアン」や「ビーガン」の思想は、実はもっと深いところにあるようだ。

「食べられない」のではなく、「食べない」

日本では「肉」や「卵」が食べられないと聞くと、宗教やアレルギーの問題を想像する人が多いだろう。しかし、世界では「食べられない」のではなく、あえて「食べない」を貫く人たちもいる。それは「ベジタリアン」や「ビーガン」と呼ばれる人たちだ。日本におけるベジタリアンやビーガンは、未だにイメージにとどまらず実際にダイエットを目的としている人が多く、そう理解している人も多いかもしれない。

しかし欧米では、「動物愛護」や「環境保護」の思想のもと、ベジタリアンやビーガンになる人の方が多いのだ。彼らは、動物などを殺すことに反対する非暴力の思想や、肥料生産のために消費される消費燃料への反発を込めた思想のもとに、「食べない」ことを選択しているのだ。

ハンバーガーのために、切られる「木」

知らない人も多いかもしれないが、実は私たちが肉を食べることが環境破壊へとつながっているのだ。例えば一つの「ハンバーガー」をつくるのに必要な農地は16平方メートル。私たちが「ハンバーガー」一つを食べるそのために、森林が切り崩され、自然破壊が進んでいるという。そしてそれだけには留まらず、そうして育てられた家畜からは酸性雨の原因となるアンモニアなどの汚水ガスも排出される。国連食糧農業機関による2006年度の調査結果によると、その総量は世界全体の3分の2にものぼるという。

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Photo by Morgan Aragon

環境を守る「ベジタリアン」の思想

こういった背景を理解し、ベジタリアンやビーガンになる人が多い欧米。そのため、一人ひとりの環境への意識も必然的に高くなるようである。実際に、ベジタリアンが多い国ほど環境保護への意識も高い。たとえば、環境大国と言われるドイツでは、2011年のベジタリアン人口は国民の1割にものぼる(ドイツベジタリアン連盟調べ)。ドイツはヨーロッパの中でも特に環境を守る意識が強い国として知られており、ペットボトルやビンはリサイクルに回すようにとデポジット制がとられ、ペットボトルには約30円、ビンには約20円のデポジットがかけられている。もちろん、スーパーでも食材は計り売りするところがほとんどだ。あらかじめ小分けにして余計なゴミは出さないようにされている。

また、同じように環境を守る意識が高いスウェーデンでも、ドイツと同じ国民の1割がベジタリアンという結果がアニマルライツ・スウェーデンの調査で明らかになっている。スウェーデンの家庭のゴミリサイクル率は96パーセント(日本は20パーセント)、グリーン電力は46パーセント(日本は9パーセント)である。また、エコカーに買い替えると駐車場が無料になる、4歳から環境教育が始まるなど小さいころから環境を大切にする意識も植えつけられている。

「友達にベジタリアンはいますか?」

10人に1人がベジタリアンという環境先進国「ドイツ」。そこでは、自分はベジタリアンでなくとも、友達が環境保全の意識のもとベジタリアンという人も多い。そのため、環境について考える機会が自然と多くなる。それに比べ、ベジタリアンと聞くと「ダイエットしてるのね」という言葉がかえってきてもおかしくない日本。この現状は、国民の環境を守る意識が低いことを物語っているのかもしれない。もちろん、日本でも環境保護を訴える人は多い。しかし環境問題へのアクションとしての菜食主義者がいることを知っている人は同じくらい多いとはいえないだろう。美容のためでもパフォーマンスでもなく環境のためのベジタリアンやビーガンに対する認識が広まれば、自然と人々の間で環境問題に対する意識も高まっていくのではないか。

via. Veganic Japan Inc., Yahoo!ニュース, Slimme, FAO報告, Japan Vegetarian Society, エコスマート能力認定委員会

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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