“美の常識”に抗う日本人女性4人に聞いた「ワキ毛を処理しない理由」

2017.6.22

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“女性がワキ毛を処理するのが常識”なんて、いつから言われるようになったのだろうか?女性誌で「マナーとしてワキ毛を処理するべき」と書かれているのを読み、電車で「脱毛サロン」の広告を目にし、“女性は体毛を処理するのが当たり前”だとあなたは思ってしまっているかもしれない。

だが、2016年の調査によるとアメリカでは16歳から24歳の女性の約4人に1人がワキ毛を処理しないという。2013年の調査では彼女たちの5%しか「処理しない選択」をする人がいなかったということだから、この変化は大きなものだ。(参照元:Konbini

これは#FreeThePits/#FreeYourPits(ワキ毛に自由を)という「女性がワキ毛を処理しない権利」を訴えるムーブメントや、#DyedPits(ワキ毛を染めよう)と呼ばれるワキ毛を染めるムーブメントとして広まっており、歌手のマイリー・サイラスやマドンナも参加している。では、日本の女性の“ワキ毛事情”はどうなのだろうか。

Photo by freakynoriky

今回Be inspired!は、「ワキ毛を処理しない選択」をしている日本人女性4人にインタビューを行なった。

freakynoriky(20歳)アーティスト/フォトグラファー/学生

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ーなぜ処理しないの?

子どものときから毛深くて、自分ではコントロールできることじゃないのにそれを「良くないことだと」思わされてた。13歳のときから処理し始めて、何時間もかけて全身から体毛をなくそうとしてた。でも成長してから「社会が女性に押し付けている(非現実的で不健康な)美しさの基準」に自分が洗脳されていて、「毛がない=美しくて清潔で魅力的」だと思わされていたことに気づいた。

それで社会が求めているものに従うのをやめて、本当に必要なとき以外は脱毛しなくなった。それから私の体毛も愛して受け入れてくれる人たちにも出会えた。他人に否定的なことを言われることは今でもあるけど、時間が経つに連れて気になんなくなってきてる。あと、私はめんどくさがりだから単純に脱毛するのが本当にめんどくさい!

ーその選択をしたのは誰かに影響されたから?

社会からの罵倒を甘んじて受け入れないクィア*1の友達が、いつも私が私でいられるように後押ししてくれる!

(*1)セクシュアルマイノリティーの総称。もとは「変わり者」という意味で、セクシュアルマイノリティーを指す蔑称として使用されていたが、現在では肯定的な意味で使われている

ーまわりからどんな反応を受けた?

「不衛生(じゃあ男性はどうなの?って感じだけど)」、「気持ち悪い」、「うわー長いね」っていうのから「(君は)インスピレーションだよ」、「セクシーだね」、「気にしないんでしょ」までいろいろ。

ーワキ毛を処理しなくてよかったと思うことは?

何度も何度も何度も繰り返して剃らなくていいこと(毛ってまた生えてくるもんだからね)(お金があってレーザー脱毛するなら別だけど)。

Photography:http://freakynoriky.tumblr.com/
Art:https://www.facebook.com/freakynori/
Instagram:@freakynoriky

SHOKO YOSHIDA(25歳)シンガーソングライター

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Photo by Koharu Kawakatsu

ーなぜ処理しないの?

女性フェロモンの分泌がさらによくなると以前聞いたことがあるのと、私の見解ですが実際に生えていた方がセクシーに見える。

ーその選択をしたのは誰かに影響されたから?

西洋絵画の裸婦やヒッピー文化からの影響。

ーまわりからどんな反応を受けた?

違和感がない、セクシーと言われる一方、ワキ毛がある女性は受け付けないなどの意見もあった。

ーワキ毛を処理しなくてよかったと思うことは?

自らの活動、私生活において女性であること自らに自信を持ち、アイデンティティを確立できた。

Soundcloud:https://m.soundcloud.com/shoko-y
Instagram:@shoko_yoshida

女性(27歳)カフェ店員

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ーなぜ処理しないの?

まず、 私の人生の貴重な資源である時間とお金とエネルギーは、できる限り「心から望んでやりたいこと」に使いたいと思ってる。だから普段何気なくやってることにいちいち自問自答していて、そのなかで「毛を剃る」という行為は「心からやりたいから、やる」ことではなく「本当はやりたくないけどやっている」ことだった。

毛深い私が毛を剃ると時間を食うし、肌を痛めるし、剃るときのクリームや剃った後の保湿などお金と手間がかかるし、剃り残しや毛が中途半端に生えてきてることが気になって、“煩わしい”としか思わない。実際にだいぶ前に指の毛の処理をやめ、2年程前から腕の毛を全く剃らなくなり、日常生活からストレスがかなり軽減された。そして「この調子で、足やワキもいけるんじゃない?」と考えるようになった。

それと同時に「産まれながらにして生えてるものを剃ることが、“社会の常識や風潮”になっているのはおかしいのではないか? 」や「“女性なら毛の処理を怠ってはならない”は誰が決めたのか?」、「毛がない方が美しくてあると醜い?」、「そもそも“美の概念”とは?」などの疑問が湧いてきた。

ーその選択をしたのは誰かに影響されたから?

オーストラリアに住んでいたとき、ナチュラル系コミュニティに住む女性たちが皆ワキ毛を生やしっぱなしで堂々としている姿がカッコよくて感銘を受け、「ワキ毛が生えていたら恥ずかしいなんて、ちっぽけなことを気にして生きていたくない」と強く思った。

そこで出会ったシュタイナー教育*2を受けている14歳の女の子が、あるとき私に「足の毛を剃らないことにしたんだ。女だけ剃るなんておかしい」と言い出した。それに対して「同感。でも、私は毛が黒くて男子並みに濃いし、見た目的にちょっとアウトだから剃るしかないかなー」と反応すると、彼女には「その“見た目的にアウト”っていうのだって社会からそう思わされるように刷り込まれてるだけでしょ」と反論され、大きな影響を受けた。実際、全部ムダ毛を綺麗に剃ったあとのツルツルの肌を触ると、「ああ〜気持ちいいし綺麗だな」と思うのだけど、それも社会からの刷り込みなのかもしれない。

(*2)教育を芸術行為だと考え、子どもの知性だけでなくの体や心、精神性の形成を重んじる教育。オーストリアのルドルフ・シュタイナーが始めた

ーまわりからどんな反応を受けた?

普段の生活では気づかれてないのか、ノーコメントなのか、特に触れられることはない。

最近、自分の感じている“ムダ毛処理文化”への違和感をどうしても表現したくなって、フェイスブックで「ワキ毛についての葛藤」をワキ毛写真付きで公開した際は、普段の投稿の2〜3倍のいいね!がつき、普段は全く交流のないFB友達からもたくさんのコメントが来た。(でもこの投稿をする直前まで、インスタで海外の#bodyhairdontcareとタグ付けされた若い女性の写真を見まくって自分を鼓舞して投稿する勇気をもらったw)

女性からのコメントの内容は、「同感」「もっと自由な風潮になるべき」「日本は他国に比べて毛に対して厳しすぎる」「私も剃ってないよ〜」など。男性陣からは「男も全く処理しないわけじゃなくて切ったり抜いたりして手入れしてる」ということを教えてもらった。フェイスブックにはリアル友達しかいないのでさすがに「ドン引き」みたいな反応はなくて、「こういうこと声に出してくれて嬉しい!」という応援的メッセージが多かった。(まあ、ドン引きした人はスルーしたのだと思うけど w)

ーワキ毛を処理しなくてよかったと思うことは?

自分の弱さと向き合う機会ができた。また、comfort zone(生ぬるい居心地の良いだけの世界)を抜け出して、より自由な自分になるための挑戦を経験できている。例えば、「女性だって生やしたければ堂々とワキ毛を生やし、恥ずかしく感じずにすむ社会であってほしい」と考える反面、意識的にノースリーブの洋服を避けてしまったり、周りにどう思われるかを未だに気にしている自分に気づく。

永久脱毛をしている女性など「今後ワキ毛で悩まなくていい女性を羨ましく思う気持ち」も未だに自分の中にある。でも、周りにどう思われるかを気にしてワキ毛の処理をし続けている限り、例えば「戦争反対だけど武器開発に資金援助している銀行の口座を持ってるのに似た自己矛盾」と、「それに賛成しない文化作りに加担してるような気」になって落ち込む。

おとなしく周りに合わせて剃っていたときは、自分自身の感じている違和感に蓋をしていたから、剃らなくなって湧いてきた自分のいろんな感情をフルに感じることで、人生がより面白くなっている。それから「する行為、しない行為を自分で選んで主体的に生きている」感が気持ちいい。たとえ再びムダ毛を剃ったとしても、それは「剃らないことを経験した上で、剃りたいから剃る」のであって、「ただ何も考えずに周りに合わせて剃っている」のと自分の中ではまったく違う意味を持つ行為だから。あとは、毛に愛着が湧いた。伸ばしてると、ペットや植物みたいに成長が楽しみになったり愛しくなったりする w何よりもラク!!!

Instagram:@jj_downunder

Mistress Youko SM女王

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ーなぜ処理しないの?

ワキ毛は私のセクシーシンボルだから。私のわき毛はもう体の一部なっているし、わき毛を愛しているから。10年弱一度も剃っていません。

ーその選択をしたのは誰かに影響されたから?

影響は特にないです。

ーまわりからどんな反応を受けた?

常日頃から変わり者達に囲まれて生活していたので、特別驚かれることはなかった。しかし、私は自分のワキ毛はセクシーポイントとして捉えているので、日常生活の場では見せないようにと電車や街中では露出はしません。海やプールなどではジロジロ見られることが多いですが、気にしていません。

ーワキ毛を処理しなくてよかったと思うことは?

ワキ毛の濃さやにおい・ワキ汗などが、昔はコンプレックスだったけれど、それこそが「自分の個性=私にしかない魅力」だと認めて受け入れ、その個性をまずは自分で愛したことで、人を惹きつけるセクシーポイント・自分だけの「魅力」に変化したこと。

そして一般的には剃るもの・恥ずべきものを、堂々と貫くことで 自分に確固たる自信が持てたこと。国内外問わず、多くのワキ毛好きの男性に出会えたこと。

Homepage:http://www.spice-bdsm.com
Instagram : @mistressyouko

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彼女たちから始まる、“美の常識”を塗り替えるムーブメント

4人は「社会が求める“女性の美しさ”に疑問を持って」、「より自由な自分になるために」また「自身のアイデンティティとして」ワキ毛を生やしたままにすることを選んでいる。そして彼女たちの多くは、その選択で「自分の確固たる自信」を得ているのだ。

これを聞いてどう思っただろうか?今回紹介した人の多くはアーティストなど「自分を表現できる職」に就いている人たちだったが、社会的なムーブメントはそんなアイコンによって始動されることも珍しくない。

彼女たちのような存在が、社会的に女性だけが「ワキ毛の処理」を求められていることに対する問題提起となり、より多くの日本人女性が社会が勝手に決めた“美の常識”を塗り替え、「自分の体に対する自由な選択」をするきっかけになるのかもしれない。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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