再開発が進む「池袋ウエストゲートパーク」の雑踏で語られる、“社会から取り残されていく者たち”の物語

Text: SHIORI KIRIGAYA

Cover: Jeff Busby

2018.10.26

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噴水が撤去されるなど、再開発の動きが目に見える形で進行する「池袋西口公園」にて、「舞台芸術を通じて世界を体験する」をコンセプトに掲げる「東京芸術祭」のパフォーマンスが行われている。同公園といえば、テレビドラマ化された石田衣良の小説「池袋ウエストゲートパーク」の舞台であり、池袋カルチャーを語るのになくてはならない存在といっても過言ではないが、野外劇場として生まれ変わる計画が進んでいる。

そんな変化の過程にある、現地で行われるパフォーマンスから得られるエネルギーを肌で感じるため、筆者は池袋西口公園を訪れた。

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Photography: Kazuyuki Matsumoto

世界的に注目を浴びる、ユニークなストリート演劇

いつものように人びとが行き交う、とある昼間の池袋西口公園。誰が通行人なのか俳優なのか観客にはわからないなか、演劇は始まる。知的障がいを持つ6人の俳優を中心に構成され、ユニークな視点から現代社会に対する鋭い問題提起をした作品が世界的にも注目を浴びるオーストラリアの劇団バック・トゥ・バック・シアターによるサイトスペシフィック作品*1「スモール・メタル・オブジェクツ」だ。作品名のとおり、内容は「小さな金属の物体=お金」を巡る物語で、金銭の価値、そして金銭を巡る人間関係について考察的にアプローチするもの。

劇団自体がユニークであることは間違いないが、上映・鑑賞の方法が珍しいのも彼らの特徴だ。今までには駅やバスターミナル、ショッピングモールなど屋内外の公共空間で上演がされてきており、今回の舞台は池袋西口公園。観客は客席に用意されたヘッドホン越しに、公園の周辺の雑踏のどこかで演じられている極めて私的なドラマに立ち会う。

(*1)特定の場所に存在するために制作された作品や、その置かれる場所の特徴を生かした作品・性質・方法をいう

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Photography: Kazuyuki Matsumoto

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Photography: Kazuyuki Matsumoto

どこに俳優たちがいて、どこで会話が繰り広げられているのか。ヘッドホンから流れてくる会話に耳をすませながら、観客である筆者たちは公園内に目を凝らす。上演中であることを知らない何人もの通行人が公園を横切り、俳優たちの傍を通っていく。俳優たちも、時には通行人に話しかける。なんとも不思議な鑑賞体験だ。

「都市の喧騒の中で出会う、私的な物語」とパンフレットに書かれていたとおり、登場人物たちの淡々とした語りで構成されているのが同作。金銭の取引をめぐり、社会から取り残されていく者たちの日常と孤独、そして友情が会話から垣間見られる。社会に対して問題を提起しようとするとき、人は感情的になってしまうことがある。だが、彼らの淡々とした語りには非常に冷静な社会への姿勢が表れているのだ。

芸術と池袋の、イメージを広げる

同公園では、ナチスが台頭した時代に一世を風靡した音楽劇を現代的そして“池袋的”に演出した「野外劇 三文オペラ」も10月28日まで上演される。無料で観覧できるエリアもあるため、通りがかりに寄ってみてほしい。

このように東京芸術祭では今回取り上げたスモール・メタル・オブジェクツ以外にも、一風かわったクリエイティブなパフォーマンスが豊富にラインナップされており、「芸術」そして「池袋」のイメージを広げるという意味で役割を果たしているといえる。今後再開発が進むなかで既存の池袋カルチャーはどのように残されていくのだろうか。池袋エリアには、多方面からの注目が今後とも集まっていくだろう。

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世界的に注目を浴びるオーストラリアの劇団によるユニークなストリート演劇、日本初演!

日程:2018年10月20日(土)~2018年10月29日(月)
※公演スケジュールについてはこちら

会場:池袋西口公園 ※雨天決行・荒天中止
作・演出:演出:ブルース・グラッドウィン
考案:ブルース・グラッドウィン、サイモン・ラフティ、ソニア・テューベン、
ジュヌヴィエヴ・モリス、ジム・ラッセル
出演:サイモン・ラフティ、ソニア・テューベン ほか
チケット料金:全席自由(整理番号付・専用ヘッドホン付・税込)
前売3,000円
当日3,500円
高校生割引(前売・当日1,000円)
※対象年齢15歳以上 ※高校生は公演当日要年齢証明書
※詳細はこちら

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Photography: Jeff Busby

Tokyo Festival 2018(東京芸術祭)

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東京の多彩で奥深い芸術文化を通して世界とつながることを目指した、都市型総合芸術祭です。東京芸術祭直轄プログラム、フェスティバル/トーキョー18、芸劇オータムセレクション、としま国際アート・カルチャー都市発信プログラム、APAF−アジア舞台芸術人材育成部門の多彩な舞台芸術のプログラムが池袋エリアを彩ります。

会期:2018(平成30)年9月1日(土)~12月9日(日)100日間

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