色白になりたい日本人、日焼けしたい欧米人

2016.10.3

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日焼け防止のために日焼け止めクリームを塗り、日傘をさす。コスメ用品の広告で当たり前のように目にする「美白」という文字は多くの日本人女性にとっては必要不可欠なキーワードだ。白い肌は美しさと直結しているといっても過言ではない。

しかし、筆者がヨーロッパで目の当たりにしたのは、真逆の光景だった。初夏を迎えたヨーロッパを旅していたとき、多くの人が水着を着て海…ではなく公園で日光浴をする光景をよく目にした。その理由は、日焼けした肌を手にしたいから。

その光景に見慣れた頃、帰国して真っ先に目に飛び込んできた「Japanese Beauty 美白」を謳う空港の巨大広告。このギャップに違和感を覚えてしまうのは筆者だけではないだろう。

「日焼けしたい」欧米事情

欧米では、白人の人たちを中心に、日焼けした肌がトレンドになっている。それは、日焼けした肌の方が健康的で元気に見えるから。一般的に、白すぎる肌は病気がちで栄養不足な人を思い起こさせるという。そのため健康で元気な印象を与える「日焼けした肌」が好まれるのだ。でも彼らだって日焼け止めクリームを塗るじゃないか、と話しを聞いてみると「日焼けすると赤くて痛くなるから」「皮膚ガンになってしまうのが怖いから」と、予想とは違った答えが返ってきた。なるほど、美白を気にしてたわけではないのか。

さらに、バカンスで遊んできたことを示すステータスとしても見栄えがいいという。欧米では夏の間、一か月から一か月半のバカンス休暇をもらうことができる。ビーチで楽しんで、昼夜問わずにパーティーして…遊びまくりなバカンスを過ごし、日焼けして帰ってくることが一種のステータスになっているので、日焼けはその「証」にも映るのだ。こんなこと聞いたら羨ましく思ってしまうのも無理はない。

色白を好む日本の歴史

それでは、なぜ日本では色白がいいとされているのだろうか。古くから女性は、白を美しい色として身にまとうことに強い憧れがあったという。
“おしろい”に代表されるように、自然な美白肌というよりも真っ白な肌が好まれた。この風潮は上流階級のみにみられる傾向でもあった。身分が低いと、化粧品を買うことができない。そのうえ、階級上、農作業や大工など屋外で作業をする職業に就く人が大多数だった。屋外に毎日、しかも長時間いれば、日焼けをするのは当たり前。だから、そもそも日焼けしていない肌を持つのは身分が高い証でもあった。江戸時代以降、庶民も化粧品を使用し始めると、今度は「真っ白」から「自然だけど白い肌」が望まれるように変わっていった。それが戦後、ハリウッドの映画やポップカルチャーなど欧米文化が再流行し、欧米人の持つ「自然で白く美しい」肌に近づく化粧スタイルが確立されていった。歴史と西洋文化が織り交ざってできた巨大広告的な言葉が「美白」というコンセプトを生み出したといえるだろう。

男女関係なく、美しさは色では図ることができない。

日本では、まだまだ色白が好まれる傾向が強いように感じる。最近では「美白男子」と呼ばれるように、男性も白い肌を手に入れる努力を惜しまない。
一方、欧米では日焼けのほうがいい印象を与えやすいという理由から日焼けした肌が好まれる。しかし、異なる文化の正反対な「美」の認識を考慮すれば、「白い肌」や「日焼けした肌」自体に普遍的な「美」は存在していないともいえる。「美白」という言葉をもう一度考えてみてほしい。

その言葉が張り巡らされていることで、人々が白い肌を渇望するシステムが出来上がってしまっているのではないだろうか。でも根本的な価値がないことを考えれば、社会の意見は無視して、自分が好きなようにすればいいのではないかと思わずにはいられない。

秋の始まり。日差しを楽しむのも悪くない。

via. lanivcox.com, The New York Times

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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