“今を楽しむこと”が得意なドイツに移住し、フリーランスとして働く26歳の彼女に学ぶ、自分らしい生き方

Text: Noemi Minami

Photography: TOKIO OKADA unless otherwise stated.

2018.2.7

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生まれてくる国を誰も選ぶことはできない。

だからといって生まれ育った国が自分に1番合っているかというと、そうでもないこともある。

今回、Be inspired!は大学卒業後すぐに日本を離れ、ドイツで生きていくことを決断したWSBI(ワサビ)に話を聞いた。どうしてドイツなのか、ドイツで日本人として生きていくこととはどういうことか、ドイツの“今”やドイツ移住に関する情報、ワークスタイル&ライフスタイルについてベルリンから発信している彼女が考えることを少し教えてもらった。

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ーどれくらいドイツに住んでいますか?

約2年半が過ぎました。移住したのは2015年の4月。2014年の9月に大学を卒業し、そこから海外で自活していくための準備期間が8ヶ月間ありました。

ードイツのどこに住んでいますか?そこはどんな場所ですか?

首都ベルリンです。ベルリンは人口のおよそ18%が外国生まれ、若年層の人口が増加している多様性とエネルギーに溢れた場所です。ベルリンはアートやビジネスのプロジェクトや新しいアイデアがいつもなにかしら生まれている、とても刺激的な場所です。

私が初めてベルリンを旅行で訪れた時、直感的に「この街は思想でまわっているな」と感じたのですが、2年半住んでみてもその印象は変わっていません。アイデアが重要視されるし、この街はどんな人でも受け入れるようなオープンさがあります。

ードイツで何をしているのですか?

フリーランスのディレクター/翻訳家/ライターとして活動しています。

ドイツに来たきっかけを話すと、私は2012年〜2013年までイギリスのマンチェスター大学というところに交換留学をしていました。そこでの体験からヨーロッパのライフスタイルにすごく共感して、将来住むなら絶対ヨーロッパだと確信しました。

しかし私はヨーロッパに仕事もコネもないので、自分の力だけで移住実現性のあるヨーロッパの国がどこかないか探していたところ、ドイツのベルリンを見つけました。

大学でたまたま4年間ドイツ語を第二外国語として履修していたので、ドイツ語をある程度使えるのもアドバンテージでした。その時はまさかドイツに自分が住むとは思っていなかったのですが、今ベルリンに腰を落ち着けてみて、やっぱりここが1番自分に合っていると感じます。

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ードイツの好きなところは?

みんなが「生活を楽しむ」ということを知っているところです。

全体的に流れる時間がゆっくりしていて生活にゆとりを持てます。冬は寒くて気候は厳しいですが、ドイツは衣食住で言えば圧倒的に住環境に力を入れている国なので、そんなときはDIYやボードゲームなど室内で豊かに暮らすための方法もたくさんあるんです。

あとはこれでもか!というくらい合理的なところです。ドイツ人のコミュニケーション自体もそうですが、歯に衣着せぬ感じでサバサバしているので、単細胞な私はなにかとやりやすいです。(笑)

ードイツの嫌いなところは?

役所関係の煩雑さはどうにかして欲しいですね。私はビザ申請に4回失敗しているので….。(ビザ取得苦労談はこちらから)

あと、嫌いというほどではないですがサービス業全般の質はもう少し向上するべきだと思います。

ードイツで「日本人だから」「アジア人だから」などの理由で差別を受けたことはありますか?

私自身は一度もありません。ベルリンは外国人も多く、壁が崩壊した歴史的な背景からもリベラルな空気があるのでそこまで差別を心配する必要はないと思います。

ただ、やはり近年の移民増加の背景から移民に対して反感を持つ人もいることは事実ですし、外国人でも人種によってベルリンで体験していることはだいぶ違います。

たとえば、私はカンボジア出身の女性から「外出するたびに差別的なことを言われる」と聞いてとてもびっくりした覚えがあります。日本人として生きていてそんなことがベルリンで起こるとは信じられないですが、同じ外国人でも肌の色や人種によって体験していることが違うと思います。

差別を怖がる人も多いですが、日本でも外国でもどこに行っても、人のあらを探していじわるなことをする人は一定数います。私の差別へのスタンスとしては、言うべきところではしっかり戦おうと思っています。ただ、そもそもそんな人にかまっている暇はないので怖がるのさえ時間の無駄ですし、もっと楽しいことはまわりにたくさんあるのでそちらに目を向けたほうがいいかなと思います。

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ー日本がドイツから学べることはなんでしょうか?

「今を楽しむ」ということですかね。日本というよりか東京は最先端のテクノロジーも発達しているし、情報も早い。それがエキサイティングでもあるけど、常に最新のものにキャッチアップしていなければいけないという強迫観念を感じている人も多いはず。日本は人口の約9割が日本人なので、経済ファーストで新しいテクノロジーを取り入れてインフラをガラッと変えてしまうことも欧州と比べると比較的容易ですよね。

欧州は多様性を重視しているので、なかなかそうはいきません。多様性に対応しなければいけないとも言えるけれど。でも、そうしたものを一旦横に置いて将来じゃなくてもっとスローなペースで「今」を楽しむことに関しては本当に長けていると感じます。

ードイツが日本から学べることはなんでしょうか?

ないものねだりに聞こえてしまうかもしれないけれど、IT分野で働いている身として時々ドイツは頭が固い、テクノロジーに懐疑的な面があると感じることはありますね。業界で出会うドイツ人はかなりオープンな人ばかりですが、国としてそういうものを取り入れるスピードは日本に比べると遅かったり…。でも日本と似ているところもあるのかもしれないです。お互いモバイル決済やカード払いがそこまで社会に浸透していなかったり…。

ただ、こういうのって結局、その国ごとに抱えている事情もたどってきた歴史も違うので一概に「見習うべき」と言えない部分があるなぁと最近は感じています。重要なのはどの国にも一長一短あることを理解して、その上で自分に合う場所に住むことだと感じています。

誰だって「これは妥協できるけどこれだけは絶対譲れない!」というものってあるじゃないですか。その度合いだと思いますよ。

今私たちは本当に良い時代に生きていて、やりたいと思っていることはほとんど何でもできるし、困っていることはどんどん解決される。海外移住というのは私の夢でしたが、それだけじゃなくやりたいことは本当になんでもできるので、もっと人生を楽しむ人が日本に増えればいいなと思っています。そしてそのことの価値がきちんと世の中に認められるように、私もドイツから自分が見ているフレッシュな情報を発信していこうと思っています。

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「終身雇用」という概念がいまだに存在感を示す日本では、「大学を卒業して、就活して、就職する」というレールのままに進んでいかないと、取り返しのつかないことになるのではないかという、目に見えないプレッシャーがあるのかもしれない。

それでも、一歩日本から離れてみるといろいろな生き方が存在していることを強く感じられる。どの生き方が優っているということではなく、WSBIがいうように、自分の「譲れないこと」を見つけレールや国は無視して進めば、自分に合った形でやりたいことをしながら、そして「今を楽しみながら」生きていくことが意外と簡単にできるのかもしれない。

WSBI(ワサビ)

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ディレクター/翻訳家/ライター

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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