“なんでもシェアすることが普通”のSNS時代に知っておくべき「子どもの写真」をシェアすることの危険性 #kidsforprivacy|「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会 #059

Text: KOTONA HAYASHI

Cover photography: Kristina Paukshtite

2018.5.14

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現在、1歳半になる娘が生まれたとき、筆者と夫は「SNSに娘の写真をあげる場合は、基本、顔を隠していこう」と決めた。

とは言っても、今やほとんどの人が何かしらのSNSアカウントを持っていて、「お家に帰って、写真をアップして、コメント・いいねなどをもらうまでが遠足」の時代。筆者としてはあまり頑なにならず、常識の範囲内であれば、友人たちがSNSで娘の写真を共有しても全然オッケー、という心構えでいるのだけど、いかんせんこの“常識の範囲”っていうヤツが難しいのだった。

▶︎ハッシュタグ・アクティビズムについてはこちら

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情報は悪意のある他人にも平等に与えられる

気軽に世界中の情報にアクセスできる現在、何気なくアップした1枚が人生を変えてしまうことだってある。だからこそ、子どもの情報についての権利やプライバシーをきちんと考慮する必要があるのだ。

そこで、自分、家族、友人たちが娘の写真を投稿する際に筆者が設けた線引きは2つ。

①SNSの投稿を見た娘が将来、不愉快な思いを抱かないと思われる写真だけあげる
②SNSの投稿を見た他人が悪用できそうな写真はあげない

1つ目は、娘を一番よく知っているであろう筆者と夫が頭を抱えて考えるしかない。難しいのは2つ目だ。娘をついつい真っ直ぐ愛し、慈しんじゃう筆者は悪意(時には歪んだ好意だったりする)を持った他人の気持ちにはなれないからだ。

多くの場合、親は“子ども自身が傷つくこと”には敏感だけど、“子どもを傷つける悪意があること”には鈍感なのだ。

そこで、そうした悪意から子どもを守るために活動する団体がある。それが、Child Rescue Coalition(チャイルド・レスキュー・コアリション)。

プライバシーこそ子どもを守るための最大の武器

Child Rescue Coalitionは子どもが受けうる性的虐待や心的苦痛を未然に防ぎ、そうした被害を受けた子どもたちを救うために活動する慈善団体だ。彼らはこれまでの経験を踏まえ、この春、SNS上で子どもを悪意から守るために「#kidsforprivacy」(子どもたちにプライバシーを)という活動を開始した。

では、この#kidsforprivacy、一体どんな活動なんだろう?

例えば、#PottyTraining(トイレトレーニング)などは乳幼児を育児中の保護者たちにとってはお馴染みのワードだろう。全裸でおまるの上に乗る我が子。愛らしくも平凡ないつもの風景。

しかし、小児愛者にとって、それは十分に性的で魅力的なピンナップだ。

そこで、#PottyTraining#BathTime(お風呂の時間)や#NakedKids(裸の子ども)など小児愛者たちの関心を引きそうなハッシュタグを、紙に書かれた「Kids For Privacy」という警告文で顔を隠した子どもの写真とともにアップロードする。

そうすることで、上記のようなハッシュタグを使ったり検索した人に届く「プライパシーを訴える匿名の子ども達の写真」は、悪意を持った者たちには警告を、何も知らず“餌”をアップしてしまう保護者たちには注意を喚起することができるのだ。これが、#kidsforprivacyの取り組み。

日常とSNSが一続きの今、子どもを守るためにできること

何気ない日常の風景が、他人の悪意を扇動してしまうことがある。しかし、日常とSNSが密接につながり合うようになってしまった今、私たちはその事実をつい忘れてしまう。

情報が悪用されてしまっても、ほとんどの場合私たちは気づけないし、情報の拡散を止めることも出来ない。だからこそ、「投稿」ボタンを押す前に、「情報がどう見えるのか」を考える必要がある。これは子どもの写真に限らず、SNSでプライベートなことまで共有することが普通になった現代人に共有していえること。

#kidsforprivacyは犯罪の抑止力となるだけでなく、保護者や家族、友人、子どもに関わるすべての人に考えるきっかけを与えるだろう。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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