Oops × NEUT
「EDに悩む、すべての思い合うふたりのため」に、新しい形のメディカルブランドを提案する「Oops」とNEUT Magazineのコラボレーションで、“性”について考える記事シリーズが2021年8月にスタート。全3回にわけて、記事を発信していく。
Vol.1 EDは男性だけの問題じゃない。既存の広告に違和感を感じた若者が立ち上げたポップなED診療サービスOops
「Oops」×NEUTコラボレーション記事の第二回となる今回。モデルの畠山千明(はたけやま ちあき)とヘアスタイリストの畠山遥(はたけやま はるか)、そしてOopsでクリエイティブディレクターを務めるharu.を迎えて鼎談形式で“性”に関するトークが展開された。
前編では3人の性に関する悩みや身体の悩みの解決方法、パートナーとのコミュニケーションのコツについて教えてもらった。後編では、NEUT読者より寄せられた性のお悩みにさらに踏み込んで回答していく。
遠い未来よりも目の前にいるパートナー
前編に続いて3人が注目したのは以下のお悩みだ。
無精子症とは精液中に精子が存在しない状態を指す。男性の100人に1人が当てはまるとも言われる症状である。症状自体は治療によって治る可能性もあるが、相談者はパートナーとの子作りなど、将来への不安を感じているという。これに対しては畠山千明より鋭い意見が。
畠山千明:同棲している彼女がいると、行先は結婚や入籍、子作りに繋げられますがそうだとは限らないですよね。子どもができないことに焦っているように感じますが、今目の前にいるパートナーのことをちゃんと見ずに未来を心配しすぎじゃないかなって思いました。
haru.:私も千明さんの言う通りだと思います。目の前にいる相手と自分はどういうふうに生きていきたいのかをメインに考えるべきなのに、社会の「こうあるべき」に縛られている一面もあるのかなと。
畠山千明:私たち夫婦も、たまに周りから「年取ったら絶対もう一人子どもほしくなるよ」とか言われることもあるんですけど、社会的に「子どもがいる幸せ」が強調されすぎている側面もあると思うんです。もちろんそういう幸せがあることも事実ですが、そこは社会が決めることじゃなくて、それぞれのカップルの価値観でコントロールしていいはずですよね。
あと、相談者さんがおっしゃるように、相談できるコミュニティは確かに少ないかもしれません。でも、本来ならばパートナーや彼女さんも相談できる相手になるんじゃないかなって思うんです。もしかしたら彼女は子どもが欲しくないかもしれないし、子どもができなくてもいいと思っているかもしれませんよね。しんどいけれど、もし彼女がどうしても子どもがほしいのであれば別れる必要もあるかもしれません。あるいは、無精子症は治療法もあるのですが、治療するってなったときにも一緒に取り組んでもらえるような関係性を作らないとその先がしんどいんじゃないかな。少し厳しい言い方かもしれませんが、そういった問題を話し合うことができない、関係性に自信がないのを解消するのが先の方がいいのでは。
haru.:そうですね。セックスもパートナーとの関係性も、お互いの歩み寄りが重要ですよね。自分の欲求を伝えられる関係性作りが大事ですね。
セックス=愛情表現?
欲求や未来のすり合わせの難しさは、パートナー間でしばしば生じる問題であろう。パートナー間で話しにくい性の話といえば、セックスのことという人も多いのでは。NEUT読者からもこんな悩みが寄せられていた。
パートナーが同じ頻度のセックスを望んでいない。それでもセックスを愛情表現と考える自身にとってはストレスフルな状況であるという悩みだ。こんなときはどのように解決していくのがいいのだろうか。
haru.:性欲って難しいですよね。睡眠欲や食欲は湧き出たら自分で解決できるけれど、性欲に関しては他人が介入してくることも多いから、なかなか同じように解決することはできないのかなと。もちろんセルフプレジャーグッズもたくさん出ているし、一人でも楽しめるという方も多いと思うんですが。相手が疲れているときに、私はしたい!というのも違って、コミュニケーションだから対話をしないとひとりよがりになっちゃいますよね。カップルの理想形って、「お互いに愛し合っていて、セックスレスじゃなくて、言葉でも愛情表現する」と定義されることが多いと思うんですが、人によっては全然価値観が違ったりしますよね。基本的には自分とまったく違う人と一緒にいるって、痛みを伴うことなんじゃないかと思います。
畠山遥:そうですね。違う生命体が共存するときにはそううまくいかないですよね。だから自分と違う価値観を持っている人との生活を楽しむ、自分と同じじゃないからこそ楽しめることもあると思います。でも、もし相談者さんがパートナーさんにセックスに関するコミュニケーションを遮断されてしまっているのであれば、それはそれで考えなければいけませんよね。コミュニケーションを取ったうえで結果が変わらないならそれで仕方がないと思うんですけど。
haru.:確かに。あと、私が気になったのは、「自分にとってセックスは大切な愛情表現」と書かれていますが、パートナーはそれを愛情として受け取れていないから苦痛なんじゃないかなと。パートナーは何を愛情表現と捉えていて、自分は何を愛情表現だと思っているのかが話し合えていないのかなと思います。愛情表現が宙に浮いているような。
畠山千明:そう考えると子育てとも近い感じがしました。親は愛情と思っているけれど、子どもには伝わっていなかったり。せっかく愛し合っていても、一方通行な愛情表現になってしまっていたらもったいないですね。
自分の欲求を知ることから始めよう
セックスを愛情表現と捉える人もいれば、性欲を向けられた途端になんともいえない気持ち悪さを感じてしまうという意見も寄せられた。
例え大切にしてくれていても、セックスをしたとしても、その後気持ち悪くなってしまいパートナーになりたいとは思えないというこのお悩みに対して、同じような経験があるというharu.は、一つの解決方法を教えてくれた。
haru.:私の経験からすると、自分に自信がないんじゃないかなって思います。自分のことをまだ愛せていなかった10代の頃、同じような体験をしました。セックスに限らず、「なんで私のことなんて好きなんだろう」なんて考えたりしました。相手の問題というよりかは、自分との対話ができていないのかもしれないなと思います。
畠山千明:なるほど。私は、流れでセックスしてしまっているような感覚が気持ち悪いのかなとも思いました。言葉や何か区切りがないままにセックスしてしまっている感覚というか。
haru.:それは、責任の所在が分からないからかもしれないですね。
畠山千明:そうそう!何か不信感が芽生えちゃっているのかもしれないなと思いました。告白は必ずしも男性からする必要はないし、この相談者さんがしてもいいと思うんですけど、何か言葉がほしいのかもなって。
畠山遥:ただの性欲の処理として見ているだけではないってことを、お互いに言語化して伝えていければ、もう少し解決しそうなのかな。
haru.:何を求めているのかが自分でちゃんと分かっていない状態でセックスをしてしまうことが自分でも気持ち悪いのかもしれませんね。自分も気持ち悪いから、一緒に時間を共にした相手も気持ち悪く見えたり。自分の欲求、何を欲っしているのか分かることから自分を愛せるようになって乗り越えられるのはないでしょうか。
“性”の悩みを解決する鍵は対話にあり
人の数だけ悩みはあり、普段あまり人に言えないからこそ、性の悩みは深くて難しい。数々の悩みを見ながら、語り合ってきた今回の鼎談を通じて3人はどんなことを感じたのだろうか。
畠山千明:総じて、性の悩みはコミュニケーションの悩みでしたよね。
畠山遥:悩んでいることをすり合わせできる基盤を作って、ちゃんと話し合えれば解決できそうな項目がほとんどでしたね。もちろんそれだけでは解決できない問題もあるとは思うんですけど、話し合えば、解消のために一緒に協力するか、できないならお別れするか、明確になっていきそうですよね。
haru.:たとえパートナーだといっても他人ってことを忘れちゃいけないですね。いくら話ができて、通じ合っていると思っても、他人なんですよね。だから話さなければ伝わらない。
畠山千明:そうですね。私たちもそれを真摯に受け止めて夫婦生活をしています。それに、娘にも伝えていきたいなって思っています。いずれセックスをするときが来るのかもしれないけれど、同意のうえでなければだめ、まだ怖い、準備ができていないと思うなら相手に合わせる必要はないって。性に関すること大切だけどは、一歩間違えると自分も相手も傷つけてしまうかもしれないからこそ、ちゃんとコミュニケーションが取れるようにしておきたいですよね。
セックスは、相手とのコミュニケーションでもあり、自分とのコミュニケーションでもある。今回の鼎談でも話に上がったように、自分が何を望むのか、そして相手が何を望むのか、時には言葉にして確認していくことが必要なのかもしれない。セックスの延長上にあるのは長い付き合いだとしても、そのひとときの付き合いだとしても、その2人あるいは複数人の関係だ。これまで公の場で十分に話されてこなかったテーマだからこそ“性”に個人差は大きいのである。誰かを、そして自分を大切にしたいと思うとき、自分の「当たり前」や社会一般の「普通」は通用しないことを思い出してほしい。そして、ちょっと恥ずかしくても自分が思う理想の関係やセックスを相手に伝えてみるのはどうだろうか。話してみたら、案外悩む必要もなかったなんてこともありそうだ。
畠山千明
1991年生まれ。モデル。初めてのオーディションの条件に合わせて髪をカットし、バズカットの女性モデルとして脚光を浴びる。現在は、子育てをしながらランウェイショーや雑誌等で活躍。また、最近ではビーズアクセサリーブランドの「chiaki no bi-zu」も立ち上げ、売り上げの寄付活動なども行う。▷Instagram
畠山遥
ヘアスタイリスト。明治神宮前のヘアサロン兼コーヒースタンド「whyte」に所属。1970~80年代のカルチャー・ファッションにも精通し、ヘアだけではない独自のスタイルを提案。DJとしての活動を行うことも。▷Instagram