弱さや脆さを音楽にする理由。Mudd the studentが『LAGEON』に込めたもの

Photography: Kim so yeon unless otherwise stated.

Text & Edit: Jun Hirayama

2026.4.20

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韓国・ソウルを拠点に活動するアーティスト、Mudd the student。Balming Tigerのメンバーとしても知られる彼の音楽は、ヒップホップともロックとも言い切れない、ジャンルの境界を横断するサウンドで注目を集めてきた。

2026年2月24日、渋谷CLUB QUATTROで開催された新シリーズ「QUATTRO Alternative」の初回公演では、Parannoulや君島大空らと共に出演。クラブクアトロが掲げる“枠組みを超えた瞬間”というコンセプトのなかで、その存在感を強く印象づけた。

最新アルバム『LAGEON(ラジョン)』では、90年代オルタナティブロックの質感を感じさせるサウンドとともに、これまで以上にパーソナルな感情が露わになる。“弱さ”や“失敗”をなぜ音楽にするのか。そして彼が語る「オルタナティブ」とは何なのか。

東京でのライブ直前に行ったインタビューを、NEUTがQ&A形式で届ける。

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「ジャンルがある」とも「ない」とも言える音楽

NEUT:まずは、Mudd the studentという名前の由来から聞かせてください。「student=学び続ける姿勢」という意味が込められていると理解していますが、あなたにとって“student”とは?

Mudd the student:学校を卒業しても、一生“学生の姿勢”で生きるべきだと、いつからか感じていました。まだ学ぶことがたくさんあって、人生は死ぬまで学び続けるものだと思ったからです。音楽も、それ以外のすべてのことも含めて。

NEUT:あなたの音楽は、ジャンルをひと言で表すのが難しい印象があります。自分のスタイルを言葉にすると?

Mudd the student:見方によってはジャンルがたくさんあるとも言えるし、ジャンルがないとも言えると思います。自分の音楽をひとつに定義するのは、いつも難しい。

Balming Tigerのジャンルを聞かれたら「Alternative K-POP」と答えるんですが、自分の音楽も同じ言葉がしっくりきます。

NEUT:ジャンルで区切りたがる人が多い、ということですね。

Mudd the student:そうですね。ヒップホップだと言われることもあれば、そうじゃないと言われることもある。だから「ラッパーじゃない」と否定するより、「ラッパーでもある」と言いたい。可能性を開けておきたいんです。そうすると音楽の中にも自然といろんな要素が混ざっていきます。

NEUT:『LAGEON(ラジョン)』では、ノイズやオルタナティブロックの雰囲気も感じました。影響はありますか?

Mudd the student:あります。いちばん好きな時代は90年代のオルタナティブロックです。あの時代は“ロックの最後の時代”みたいな感覚があって、すごく荒々しくて、最後まで突き進んだ音楽が多かった。

最近の音楽はすごく綺麗に整っているけど、僕の人生はそうじゃない。失敗もあるし、傷もある。だからあの時代の音楽がいちばん自分に近いと感じます。

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アルバムタイトル『LAGEON(ラジョン)』に込められた個人的な記憶

NEUT:『LAGEON(ラジョン)』という名前の意味を教えてください。

Mudd the student:思春期の頃、両親がやっていた食堂の名前です。
何度も店を開いては閉じて…を繰り返していて、その中のひとつがラジョンでした。
家族くらいしか知らない言葉なんですが、響きがかっこよくてタイトルにしました。

NEUT:『LAGEON(ラジョン)』に収録された音楽からは弱さや失敗、少しダークな部分まで感じました。なぜそうしたテーマを音楽に?

Mudd the student:自分の弱さや脆さを見せることで、人を慰めたいという気持ちがいちばん大きかったです。

最初のEP『Field Trip』では社会に出たばかりの痛みを書いたけど、今振り返ると少し子どもの視点だったなと思う。だから今回は、もっと大人として、いろんな痛みに共感したかった。そのためには、自分の弱い部分までさらけ出さないと届かないと思ったんです。

歌詞には実体験もありますし、フィクションとして組み替えている部分もあります。比喩やメタファーを通したほうが、音楽としてより美しく伝わる気がしていて。最終的には、少しでも慰めを届けられたらいいなと思っていました。

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「すべてがオルタナティブ」な時代の中で

NEUT:アジアでもオルタナティブなシーンが広がっているように感じます。いまの変化についてどう思いますか?

Mudd the student:僕はどこか“ルーツのないアーティスト”だと思っています。いろんなものを大胆にミックスしているだけ。今は、全部がオルタナティブとも言える気がする。
ただ、独創的なものを作ろうとする流れがメインストリームで注目されているのは嬉しいですね。コラボするなら、ジャンルに縛られない人ともやりたいし、逆に強いルーツを持つ人ともやってみたいです。

NEUT:最後に、日本のリスナーへメッセージをお願いします。

Mudd the student:僕の音楽をもっとたくさん聴いてほしいです。日本にももっと頻繁に来たいです。ありがとうございます。

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Mudd the student / マッド・ザ・スチューデント

Mudd the student Instagram / Balming Tiger Instagram

オルタナティブK‑POPグループ『Balming Tiger』のシンガーソングライターで、ジャンルの境界を越える音楽を通じて自らの内面世界を率直に表現している。 プロデュース・ラップ・ボーカルを網羅する創作力を基に、デビューEP『Field Trip』で初めて存在感を示し、Balming Tigerの活動、Parannoulとのコラボ、テレビ番組や広告など多様な作品で大衆性と個性を同時に示した。 また、昨年11月に初の正規アルバム『LAGEON』をリリースし、さらに活発な活動を続けている。

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LAGEON

配信リンク

リリース日:2025年11月25日
レーベル:Balming Tiger, CAM
トラックリスト:
1. 123
2. cache
3. Undertaker
4. RAT feat. Harto Falión
5. i
6. Phoenix
7. (behringer angel)
8. APA freestyle feat. that same street
9. K-Pg
10. Best Thing
11. Fireman
12. (210418_5)
13. Active now feat. Parannoul
14. Bunker

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