「初めましては、ルッコラとレタス。そして、いただきます」ベイン理紗が育てた野菜を初めて食べてもらうまで|FEEL FARM FIELD #002 前編

Text & Artworks : Lisa Bayne

2022.3.15

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こんにちは、ベイン理紗です。
この連載「FEEL FARM FIELD」では東京で活動をしている私が山梨に畑をもつ中で出会う人についてや発見を綴っていきます。
「FEEL(五感を)FARM(農から) FIELD(広げていく)」という意味を込めて、3つのキーワードをもとに、知らなかったこと・知りたいこと・分からないことに愚直に向き合うことの楽しさ、面白さをお届けします。
この記事を読みながら、頭と身体で五感や繋がりを感じること、日々転がり落ちている興味を拾い上げてみることを一緒にできたら嬉しいです。
それぞれの頭も身体も心も、それぞれのものでしかないのだから。

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夏の兆しが見えてきたなか、2021年の6月、7月にそれぞれ2回ずつ山梨を訪れた。今回は植えた野菜の様子を見に行った話。自分の家でできる家庭菜園の話。そして、誰かに自分の野菜を食べてもらう“味覚”についての話。3月が始まり少しずつ春が訪れる予感を感じつつ、これを機に自宅で農作業を始めるのもアリかも…!

“土界”は思っているよりもはるかに広い

初めて山梨を降り立った5月の終わりから2週間後、また山梨へ向かった。
私は東京に住んでいるのと、学校や仕事の関係で、長期的に山梨へ出向くことはできない。その代わり、0siteのファウンダーである憲正が自分の畑の手入れのついでに私の畑の経過の写真を送ってくれたりしていた。(ありがとう、憲正!)

経過の写真を見ると、2週間後には芽が出て私が知っていた野菜の形へ。小学校1年生か2年生の頃の朝顔を育てる授業を思い出した。数日前植えたばかりの種から、1mmほどのいろいろな緑の芽がぽこっと土から顔を出しているのだ!生き物は、本当に、少しずつ、着実に成長するんだと、それまで疑いの目を持っていたかのように驚いて感心したのを覚えてる。
なにより、水もあげてなければ機械を使って雑草や虫を100%排除したわけじゃないのにね。(放置して育てる「不耕起栽培」については前回の記事から)でも、野菜をはじめとした植物がとてもセンシティブであることも同時に知った。

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左からルッコラ・レタス・芽の出ていないなにか(忘れちゃった…)・シナモンバジル
種まきして14日後(2021.6.15)の様子。

植える時期が1週間遅ければ、芽の出ることのない種があったり、土の中にいながらどれくらい日照度(太陽が当たる度合い)かによって芽が出て育っていくスピードは全然違ったりする。これは、土の中にいる微生物や水分量が関係しているからだそうだ。現代だと、土の中にいる微生物も土の種類も水分度も思うようにコントロールすることはできる。化学肥料を撒けば植物へ栄養が行き届くし、農薬を撒けば育てている野菜にとって害となる虫や植物がなくなるからありがたい話だ。第1次産業のような自然界を相手にして人間のための生産を繰り返す農家さんにとっては、そうしなければやっていられないのかもしれない。でも私は、私が生きるために取り入れる食事が届けられる状態になるまで、自然ではどんなプロセスがあって何が関わっているのかを知りたかったから、今のところ肥料や農薬を含ませた栽培をする気はない。それもあってかそれぞれ成長の度合いはさまざまで、育てやすいと言われている葉野菜は順調に成長してくれていた。私の知っているルッコラとレタスの原型が既に少し見えている。これが育って食べ物となって誰かの栄養になると思ったら勝手にワクワクしてしまう。と言いつつ、植えたことは覚えているけれど、何を植えたかを思い出せないまま芽が出てこない植物もあった。では原因は何かといえば、それがわからないのだ。私の種の埋め方かもしれないし、日照度が少なかった、そこの土の部分だけ栄養や水分が足りていなかったのかもしれない。

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頻繁に来ることができないということもあって、その日は成長過程と共にグレードアップが必要な野菜たちへ夏に向けて手をつけた。それが「果菜類」だ。
果菜類というのは、果実や種に実がなる部分を食べる野菜の種類のこと。私が植えた野菜の中だと、トマト、きゅうり、追加で植えた茄子がある。その中でもトマトときゅうりは「誘引」という作業が必要になるのだ。これは、成長していく茎の行方を導いてあげることで栄養を行きやすくさせ、野菜が成長しやすい環境を作ってあげる作業のこと。野菜や季節によって誘引するために使う道具は違うのだが、私が使ったのは支柱と紐。

例えば、きゅうりはつる性という種類に分けることができる。その特徴として挙げられるのがくねくねと巻きついていくような成長の仕方。これは、きゅうり自身が太陽という栄養を浴びるため上に上にと伸びていくためなんだって。けれど畑の場合は近くに木があるわけでもない。(ましてや太陽を浴びたいなら木陰にはいられない)だからきゅうりが充分な栄養を吸収できてなおかつ、伸びていく蔦が絡まったり埋もれたりしないように支柱を立てて助けてあげるわけ。そしてもう1つに果菜類特有の理由がある。果菜類は先ほども綴ったように、実がなったものを私たちが食べる。実がたっぷり詰まった野菜はどっしりしていて、重い。すると、茎は耐えられず折れたりくなったりしてしまう。すると太陽を浴びることもできず、せっかく立派に育とうとする実がなることも難しくなる。
そのために必要なのが「支柱立て」なのだ。

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誘引作業のために支えるシールもあるけど、なるべく人工のものは使わず藁の紐で代用。
こっちの方が素朴でスタイリッシュでかっこいい気もする。

成長していく果菜類を最後まで身につけるための助けをしている。どうか野菜たちが次会うときに元気に育っていますように!

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