2022年4月、成人年齢が20歳から18歳に引き下がり、本日2023年1月9日に、18〜20歳の3学年を対象とした合同成人式が開催された。
そこで今回、日本発のクリーンビューティーブランド「7NaNatural」と、「先入観に縛られない<ニュートラル>な視点」を届けていくメディア「NEUT Magazine」が新成人の本音に迫る。
「大人になること」について強い思いがある新成人をSNSで公募し、大学生で昨夏から俳優活動を始めたNIJI、カフェで働きながら創作活動を行うHINATAにインタビューすることとなった。
取材対象者を募集した際に同時に新成人に向けて行った「大人のイメージ」のリサーチでは、飲み会での作法や厳しい社会のルールなど、プレッシャーや不安を感じている18〜20歳も少なくなかった。そこで、環境を変えるのは難しくとも、年齢や性別、固定観念にとらわれず、トレンドや人に左右されない軸を持つことが社会をヘルシーに生き抜く鍵になると考え、「大人」になる心境だけでなく「自分らしさ」についても話を伺った。
ビジュアルでは、同じく新成人のヘアメイクアップアーティスト・Sakiが、「個性」や「自由」を大切にする7NaNaturalのカラースティックを使って、インタビューをもとにイメージしたそれぞれの「らしさ」をメイクで表現。最後には、NIJIとHINATAが自由な発想で自分の顔に絵を描き、“成人のとき”をビジュアルに残した。
HINATA(19歳)
NEUT:まず最初に、簡単な自己紹介をお願いします。
HINATA:HINATAです。19歳です。普段はカフェでアルバイトをしています。
編みものが好きで、オリジナルのバッグを作って販売しています。今は、友だちと作るZINEの企画のためにセーターを編んでいます。あとは趣味で絵を描いています。
NEUT:「成人年齢の引き下げ」や「三学年合同の成人式」についてどう思いますか?
HINATA:初めて知ったときは早く大人になりたかったので、すごく嬉しかったです。高校をやめて18歳で社会の一員として働き始めてからは、不安を感じるようになりました。
同世代の友人も、成人式を迎えて大人として認められることが具体的にどういうことか、ピンと来ていない子が多いと思います。できることが増えて楽しみな反面、社会からの扱いと未熟な自分とのギャップに漠然と不安があります。
メイクアップアーティストSakiさんからのコメント▼
カラフル好きで、太陽みたいな笑顔が印象的なHINATAさん。「チャ」と「キ」、「モモ」の3色を使って、そばかすと日焼けしたような頬を再現しました。リップはHINATAさんに選んでもらった「チャ」を使っています。
NEUT:高校をやめて友達と比べると一足お先に社会に入ったのですね。
HINATA:高校1年生までは、普通に学校生活を楽しんでいました。新型コロナウィルスの流行によってステイホームが長い間続き、やっと学校が再開したと思ったら心がついていかず、通うことができなくなってしまいました。
校門から先に行けなかったり、制服を着てメイクをしたのに自転車に乗れなかったり…。「自分の心と体に向き合いたい」と考え、18歳で学校をやめました。
心のケアに集中したくて高校をやめたのに、周囲の大人からの「学校辞めたなら働かなきゃだめでしょ」という声に押されて、無理やり働き始めました。それでも心のしんどさは消えず、以前のバイト先では「行かなきゃ」と分かっていても、出勤できないことが続きました。当時は、お店への申し訳なさや「あたりまえ」ができている人たちと自分を比べることで、どんどん自己嫌悪に陥っていきました。
NEUT:何が変わるきっかけになったのですか?
HINATA:セルフケアをするようになって、心に左右されずに働けるようになりました。スタッフとして、期待に応えられている実感もあります。
ただ、どうしても生理前は動きが鈍くなってしまいます。正直に言えたら良いけど、他の女性スタッフは普通に働いているので、自分だけ「生理だからゆっくり働かせてください」と言うのは、自分勝手な気がして中々伝えづらいんですよね。でも、良くない現状をそのままにすることで、この先同じように悩む人が出てくるのは避けたいんです。まずは自分から伝えやすい空気を作っていこうと思っています。
NEUT:生理に対する意識は、社会全体で変えていきたいことの一つですよね。現実がすぐに変わらなくても、悩んでいる女性が自責する必要は、一切ないと思います。HINATAさんのセルフケアについて教えてください。
HINATA:最初は、『西の魔女が死んだ』という小説の「悪魔に勝つには生活習慣を整えないとどうにもならないよ」といった内容の一節をきっかけに、身の回りのシンプルなことから整えていこうと思い始めました。
セルフケアの方法は「STAY IN BED」というYouTubeチャンネルを参考にしています。毎朝決まったルーティンを続けるうちに、気付いたら朝から前向きな気持ちで職場に行けるようになりました。しんどい日はリラックスできる香りのハンドクリームやアロマオイルを持って行って、こまめにリフレッシュするようにしています。
NEUT:HINATAさんが考える「大人」ってどんな存在ですか?
HINATA:自分を理解して、その性質を上手く生かしながら社会に適応して生きている人。
元々私が持っていた大人像は、「バリバリ働いているピシッとした人」。いつかは自分もそうならなくちゃいけないと思っていました。だけど、今のバイト先で働くようになってからいろいろな大人と出会って、大人像の幅が一気に広がりました。
NEUT:たくさんの選択肢を知ったことで、HINATAさんらしい大人像を模索することにつながったんですね。憧れの大人はいますか?
HINATA:1人目は、YouTubeチャンネル「STAY IN BED」を発信している菊乃さん。彼女を見ていると、歳を重ねるのが楽しみになるんです。
2人目は、今のバイト先で出会った沖縄県出身の元スタッフです。どんなことも面白がる精神を持っていて、全く仕事を覚えられないスタッフのことも自然体でフォローして、面白いなって思える人でした。その人みたいにはなれないけど、普通の人が嫌がることを「面白い」って言える人に出会えたことで、すごく豊かになったんです。その場をハッピーにして人に良い影響を与えられる人は素敵ですね。
NEUT:どんな大人になりたいですか?
HINATA:忙しく過ごしていたら忘れてしまいそうになるような小さな感情を、大切にできる大人になりたいです。例えば、帰り道にふと空を見て「星がすごく綺麗!」とか、自転車でいつも通る道を歩いてみて新しい発見をしたりとか。そういうマインドでいることで、自分の創作活動にも生きると思っています。お金を稼ぐこともあきらめたくないので、仕事とのバランスを取りながら自分のマインドを満たしていきたいですね。最終的には、人のためにアクションを起こせる人になりたいです。
NEUT:世の中の大人たちに聞いてみたいことは?
HINATA:どんなにしっかりした大人でも、若い頃の話をするときは聞いてるこっちが楽しくなっちゃうくらい目がキラキラするんですよね。どんなことで苦しんで、どうやって乗り越えてきたのか。興味を持ってたこと、お金のやりくり、生きていくマインドや通ったクラブ、聞いてた音楽とか…。20歳のときにどんな過ごし方をしていたのか、たくさん聞いてみたいです。
NEUT:HINATAさんにとって「自分らしさ」ってなんですか?
HINATA:人の変化や感情の動きに敏感で影響を受けやすいんです。つらいときもあるけど、その心の脆さは、周りの人に寄り添えるという強みでもあると思っています。
それから、バイト先で育てている金魚や木に話しかけたり、仕事を置いて犬や小さい子と遊び始めたりしてしまうほど、生きものが好き。愛おしいと思うものに全力で向かっていく素直さも、私らしいところですね。私が感情に嘘をつかず、素直に過ごせているのは、理解してくれる上司や友人のおかげだと思っています。
NEUT:自分だけでなく周りのことも、とても大切にしているんですね。「絶対にゆずれない!」と思うことは?
HINATA:デジタルから離れてリラックスすること。去年の夏に行った熊本県の阿蘇で壮大な自然を前にしたとき、自分の存在や悩みがすごく小さなことのような気がして「大丈夫」と思えたんです。“自然”と“旅行”は生きていくうえで欠かせない、特別なセルフケアです。
ネガティブな感情も、なくしたくないものの一つです。落ち込んだときにしか描けない絵や文章があるし、自分が残したものを見て後から整理することができる。落ち込むことは好きじゃないけど、幸せすぎると社会に訴えたいことがかすんでしまって、創作意欲が全く湧かないんですよね。
NEUT:忘れたくない「子ども心」は?
HINATA:ずっと好きな自分でいるために、遊びも仕事も全力で楽しみたいです。
子どもって、奇想天外な発想ですごく楽しそうに遊ぶじゃないですか。例えば、ぬりえ。大人は決められた正しい色を選ぶけど、子どもたちはぐちゃぐちゃになったとしても、ぬりたい色を迷わず使いますよね。私も、そういうピュアな心を持って生きていたいです。
NEUT:感じたままに生きていくことを大切にしたいですよね。最後にHINATAさんらしさをメイクで表現した感想を教えてください。
HINATA:身の回りに置くインテリアや小物はカラフルな一方で服装やメイクはシンプルなことが多いので、チークとそばかすがすごく新鮮でした。大人がテーマだったけど、小さい頃にクレヨンでのびのびと絵を描いていた自由な感覚になれて、とても楽しかったです。
NIJI
NEUT:まず最初に、簡単な自己紹介をお願いします。
NIJI:19歳、埼玉県出身です。大学では芸術研究を専攻しています。今年の夏から姉の紹介で俳優活動を始めました。最近だと、『冗談じゃないよ』という映画に出演させていただいています。
NEUT:「成人年齢の引き下げ」や「三学年合同の成人式」について、どう感じていますか?
NIJI:長い間続いてきた「あたりまえ」が変わる瞬間に、当事者として直面することに対して、驚きと戸惑いがあります。いろいろな意見があると思うけど、個人的には社会の一員としての自覚をはやく持てるような気がして、すごく前向きに捉えていますね。
NIJIさんは、ものごとを冷静に捉えて先を見据えているところが印象的でした。メイクをする男性が少しずつ増えている中で、まだまだ偏見のある社会への思いも込めて、NIJIさんが選んだ肌なじみの良い「キ」を中心に、あえてナチュラルな仕上がりを目指しました。
NEUT:大人に近づいていることを実感する瞬間はありますか?
NIJI:高校卒業後、映画制作の現場やバイト先などで、違う役割を持った人たちが一つのものを作り上げるために動いているのを間近に見る機会がありました。社会も同じで、自分もその一端を担っていると気付いたときに、大人に近づいていることを感じましたね。
NEUT:「成人」というテーマからは少し離れますが、18歳で選挙権を得たことで“社会の一端を担っている”という実感は生まれましたか?
NIJI:うーん、正直選挙を通して社会とつながれているという実感は、あまりないんですよね。もちろん政治に参加することはすごく大切ですし、僕自身も投票には行きました。ただ、共感できる政党に投票しても結果には中々反映されない。本音を言えば、正攻法で現状を変えることには難しさを感じています。
平和に貢献したアーティストの一人であるジョン・レノン。彼の作品のような感受性に訴えかけるアートの方が、社会変革への影響力が強いんじゃないか。今の僕はそう思っています。
NEUT:NEUT Magazineも、カルチャーを通して社会問題に興味を持ってもらおうとしているので、共感できるところです。いろいろな人が自分の得意分野で頑張ることで、それぞれ違う角度から社会変革にアプローチできる。アートも、その手段の一つですよね。
NEUT:「大人になる」ってどういうことだと思いますか?
NIJI:個人的には、「大人っぽい面を増やしていくこと」だと思っています。ある日突然大人になるわけじゃなくて、経験を積み重ねながらコントロールできるものを増やしていくイメージです。経験から考えたことが煮詰まるほど、大人になっていくんじゃないかな。
NEUT:なるほど。「大人」という形ではなく、経験を重ねるにつれてできあがっていく一面ということですね。
NIJI:高校生までは、親や先生が身近な大人でした。子どもである自分に「しっかりした大人」として接する役割を持った人たちですね。でも少しずつ社会にでていろいろな大人と対等に関わるなかで、大人らしくない面を見る機会が増えました。社会人としてのキャリアやスキルでは敵わない人にも、より人間らしい部分で自分と変わらない面があることを知ったんです。「大人」って、一つの役割とも考えられますね。
NEUT:大人になることで不安なことはありますか?
「習ってない」って言うとちょっと間抜けですけど、「自立」や「お金」のことは自分で学んでいかないといけないので、少しハードルを感じます。
NEUT:たしかに。誰もが通る道なのに、教育の場で自立について教わる機会って少ないですよね。
NIJI:あとは、友人関係です。学生時代にどれだけ楽しい時間をともに過ごしても、社会への考え方や見据える将来は当然違いますよね。ふとした瞬間に、今仲の良い友人とこの先どんな関係性になっていくのか、不安に感じます。同時に「大人になったらどんな人と一緒にいるんだろう?」とも考えます。逆に、10年後に自分や周りがどうなっているのか想像すると、すごく楽しみです。今抱えている不安も、少しずつ先を見始めている証拠なのかも。
NEUT:世の中の大人に聞きたいことはありますか?
NIJI:すごく飽き性で一つのことに楽しさを見出し続けるのが苦手なんです。一つの仕事を長く続けている人に、何にやりがいを感じているのか聞いてみたいですね。
NEUT:今度は「自分らしさ」について話を聞かせてください。NIJIさんの考える「自分らしさ」とは?
NIJI:平和主義なので、自分も相手も幸せな状態が心地良いんです。なので、共通点を見つけたら嬉しいのはもちろん、「違い」にも肯定的でいたいと思っています。全く違うタイプの人でも、カテゴライズせず貪欲に知ろうとする姿勢は大切にしていきたいです。
NEUT:ファッションに関してはどんな格好が自分らしいと感じますか?
NIJI:年を重ねるごとにどんどん熟成されていく、味わい深いオールドスタイルが好きですね。
NEUT:それでは、「絶対にゆずれない!」ということはありますか?
NIJI:ないですね。むしろ、ゆずってなんぼ。そうすることで相手が喜んだり、幸せな気持ちになることに価値を感じます。
NEUT:そこもNIJIさんらしさと一貫していますね。忘れたくない「子ども心」は?
NIJI:自然の中で遊ぶことです。地元に川があって、小学生の頃はよく遊んでいました。リラックスできるので、今でもたまに足を運びます。自然と共にあることは忘れたくないですね。
NEUT:最後に、今回メイクを通してNIJIさんらしさを表現していただきました。いかがでしたか?
NIJI:マスカラやアイラインをするアイメイクは初めてだったので、全く違う自分になった気がして面白かったです。ペイントでは、表現者として憧れているダリのひげをイメージしました。今回大人について考えてみて、自分と社会の認識をチューニングすることができました。大人として生きていく準備運動になったような気がします。
成人した二人は、社会からのプレッシャーを感じながらも、「大人」として生きていくことに少しずつ向き合い始めている。自分に向き合い、将来という曖昧なものに目をこらすNIJIとHINATAは、私たちが忘れかけていた大人の入口に立つ感覚を思い出させてくれた。
「しっかりした」、「バリバリ働いている」といった二人が思い描いていた「特定の大人像」をくつがえしたのは、さまざまな大人との出会い。多様なロールモデルと関わることは、「なりたい自分」に近づく第一歩だと考えることができそうだ。
凄まじいスピードで移り変わる社会に流されず、揺らぐことのない自分だけの「軸」を持つことは、自分の人生を自由に選び取っていくために欠かせない大切なことだ。この先いくつ年を重ねても、「自分らしさ」と向き合うプロセスは続いていく。
新成人の皆さま、おめでとうございます。
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