「成長とか進歩とか、ちょっとうさんくさい言葉かもな…と思ったりもします」俳優・執筆・プロデュースなど多方面で活躍する松㟢翔平に聞く、働く意味|2周年記念特集MATTER OF CORONA

2020.12.15

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MATTER OF CORONA

2020年10月でNEUT Magazineは2周年を迎えた。
2020年を振り返えるとやはり「新型コロナウイルス」は避けられないキーワード。そこで全ての人に大きな影響を与えたこの「MATTER OF CORONA(コロナに関すること)」について今年最初で最後の特集を組むことにした。

コロナに直面し、人との接触を自粛しなければならない特殊な環境のなかで「孤独のなかの自分とどう向き合うか」は、多くの人にとって大きなテーマだっただろう。そこで本特集では「自分とのリレーションシップ」を等身大の視点から多角的に見つめ直す。

今回は初の試みとして、読者と一緒に特集を制作した。NEUTで集めた19〜25歳の18名がそれぞれのパーソナルな経験からコロナ禍で関心を持った6つのテーマ《SEX》《MUSIC》《MEDIA》《FOOD》《LGBTQ+》《WORK》を、1チーム3人の6チームに分かれて、NEUT編集部の監修のもとそれぞれ企画・取材・執筆した。

▶︎特集ページ

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第6弾のトピックは、「WORK」

長期化する新型コロナ危機の最中、自分に向き合う機会が増えた。どう働きたいか、どう生きたいか、”普通”が”普通”ではなくなった今、これからのスタンダードはどうなるのだろうか。

そんななか、以前から既存の働き方にとらわれず自分らしい働き方・生き方をしているのが松㟢翔平(まつざきしょうへい)だ。俳優、モデルだけでなくコラムニストやブランドのPRなど幅広く活動する彼は、フリーランスとしてジャンルを問わずに多分野で活躍する。「成長とか進歩とか、ちょっとうさんくさい言葉かもな…と思ったりもします」と独自の思想を持つ彼が、自分らしい働き方、そして生き方について語ってくれた。

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松㟢翔平

ーはじめに、普段のお仕事について教えてください。

モデルや俳優、コラムニスト、ディレクションなど。

ディレクションの仕事だと、渋谷PARCOでやったポップアップのイベント(2020年1月に渋谷PARCO1階のスペースCOMINGSOONで行った「宝島 BAODAO -Taiwan Souvenir Shop」)とか、魯肉飯を作ったり(2020年10月から渋谷PELLS coffee&barで提供開始した「小黑滷肉飯」)そういう単発のディレクションですね。やれることが多い方がモチベーションも上がるので、「ここまで裁量を持っていいですか」ってクライアントさんに聞いて、広めに携わらせてもらってたりとか。お店のチラシの打ち出し方とか、ディスプレイの感じも相談します。

ー今回、働き方について取材をさせていただいてるのですが、松㟢さんにとって理想の働き方とはどんなものですか?

どうだろ…性格的に毎日同じ時間に起きて、同じ場所に行くことが難しくて。だから結構今は理想的な働き方してるかもしれません。
例えば撮影やロケハンで知らないところに行けるし、新しい土地をぐるぐる回ってるだけで楽しい。新しい人に会えるとか、新しい場所に行けるとか、そういうことが働くときのモチベーションになっています。

ー職業柄、SNSのフォロワーもたくさんいらっしゃって、街で声をかけられることや、松㟢さんの一言が議論を呼ぶような場面もあると思います。そんないろいろな人の声が届きやすい場所のなかで不安になったり、周囲の声に影響を受けることはありますか?

もちろん影響を受けます。でもそういうものだと思っているので、全く不安はないし、それが今は面白いです。

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ー「人は人」という強い軸を持っていらっしゃるように感じたのですが、他者からの言葉で感情的になることもありますか?

ムカついたりすることもありますよ!SNSに届いたコメントに本当にムカついたら返信とかするんですよ。それこそテラスハウスに出てたときとか、めちゃくちゃ最初の方来てたんで、全部返信してました。それはそれで面白いですよね。

相手が僕のことを誤解してようが、してまいがどっちでもいいんです。むしろ自分以外が自分のことを正しく読むなんてことはかなり難しいことだよなと思っていて。なんなら自分で自分のことを誤読していることがあるかもしれないし。

でもたまに、すごいオリジナリティがあって、クリエイティブな悪口を言ってくる人がいるんですよ。そういうのは「一本取られた〜」みたいな感じで、あんまり嫌な感情にならないですね。核心を突かれて「その通りだな…」と反省することもあります。

ー長期的なキャリアパスに沿って生きることが美徳とされている文化のなかで、コロナ渦では目の前の日々を着実に生きていくことが簡単なことではないと感じました。松㟢さんはそこに対してどのように思っていらっしゃいますか?

去年までは、一個一個どんだけ種類が違っても、目の前の仕事や生活に集中していくことを意識していたんです。コラムを書く、モデルの撮影に行く、映画でお芝居をする、取材を受ける、休む、遊ぶ、髪を切る。しかし最近になって、それを「繰り返し」のように感じることがあるようになってしまって、どうも鬱々としてきてしまって。この東京で、だいたい似たような場所に行き、飲むときの話もだいたい一緒で。別にコロナのせいではなくて自分のせいなんですけれど。
だから今年からは、毎日本のページをめくっていくような感覚で生きています。

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ーそういう感覚でいることが自分のメンタルにとっていいと。

いいですね!仕事での集中力も上がります。ラッパーのTravis Scott(トラヴィス・スコット)って今めちゃめちゃ売れてるじゃないですか。これは先輩から聞いた話なんですが、そんなTravis Scottでも最初は小さなバーでのライブから始めていて、その映像もネットに残ってる。その頃からちゃんと記録しているんですよ。たぶん彼らは売れてない時期を悪いこととして見ていなかったんじゃないかなと思う。小さなバーでのパフォーマンスから何万人も入るスタジアムでのパフォーマンスまで全部繋がってるっていうか。彼らにとってはそのスタジアムのあとも多分同じように続いてて、そこで終わらないんだという感覚なんじゃないかな。そういう意味で僕も常に自分の人生をちゃんと本みたいにめくれば先に行くと思っている。

ー松㟢さん自身は今どの辺りにいるイメージですか。

『ハリーポッター』でいったら、まだ汽車にも乗っていないですよ。

本は横にページをめくれば、成長するかどうかは別として、お話は進んで行く。人は成長するだけじゃなく、停滞や後退することもありますしね。

別に自分が成長しようがしてまいが時間は進むし、歳はとるし。いまだに成長って背が伸びるぐらいのことでしか認識できないんですよ。歳をとれば確かに経験をすることは増えるかもしれないけれど、経験することでできなくなることもある。成長とか進歩とか、もしかしたらちょっとうさんくさいかもな…と思ったりもします。

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ー以前打ち合わせしていたときにおっしゃっていた「サラリーマンもフリーランスも変わらない、やることの内容の問題じゃないかな」という発言も印象的でした。

僕は中学時代はアニメーターになりたくて、高校・大学時代は映画監督になるために俳優をやってみたいなと思ってました。

子どものときの夢が「フリーランスになりたい」とか「サラリーマンになりたい」ってことはあんまりないじゃないですか?アニメーターや俳優、お花屋さん、YouTuberがフリーランスか正社員かを考えて、なることを夢見る人ってあまりいないと思うんですよね。自分が何をしたいのかをピュアに考えていけば、雇用形態は関係ないですよね。フリーランスかサラリーマンかどっちが絶対合ってるかなんてことは、やっぱり自分にしかわからないと思いますし、そんなヒステリックに二極化できることでもないと思う。

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ー今の松㟢さんの考えにはどのようにたどり着いたのでしょうか?

家族が放任主義だったことの影響は大きいと思います。ここまで育ててもらってこういうこというのもあれですが、親もだらしないところがあった記憶もあり。なんかそれを見て別に大人ってそこまでめちゃくちゃしっかりしなきゃいけないんだっていうプレッシャーをあんまり感じなかったのかもしれないですね。あと、映画がすごい好きなので、映画から学び、影響を受けたことがいっぱいありました。映画って自由だなって。

ー映画の登場人物で「働き方」がかっこいいと思える人、または作品はありますか?

この人っていうのはないけれど、映画を見るときに登場人物の仕事に注目して見てみると、いろんな仕事をしている人が出てきて面白いと思います。何の映画でもいいんですが、『ハリーポッター』だったら、校長先生とか、音楽の先生とか、仕事って感じで描かないけど、必ず何かの仕事をしてる人が映画では描かれてる。『羊たちの沈黙』ではFBIの仕事を垣間見れる。世の中にはいろんな仕事をしている人がいるっていうのを映画は教えてくれますね。

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ー以前打ち合わせしていたときに「そもそも生きてること自体にあまり意味なんてないんじゃないか」という言葉があったんですけども、最後に、その考えにいたったきっかけがあれば、伺いたいです。

別に僕が消えようが社会は何も変わらないと思う。すごく嫌な言い方をしたら、人生は死ぬまでの暇つぶしかもしれない。どうせならその暇つぶしに没頭したい。

僕は映画がすごい好きで、映画の現場に携わりたいから俳優をやっています。やっぱりいい作品は、世の中に残り、人に影響を与え続けるので、今映画に携われることが、生きるモチベーションに繋がってます。

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目の前の仕事に自分がどのくらいコミットできるのかということを基準に仕事と向き合う、いたってまっすぐな松㟢さんの視点が印象的だった。「すごく嫌な言い方をしたら、人生は死ぬまでの暇つぶしかもしれない。どうせならその暇つぶしに没頭したい」という彼の言葉は、生きていることそれ自体ではなく、彼がいかに生きるかを追求していることを裏付ける言葉のようだ。多種多様な仕事に携わりながらも、一貫して自然体の”松㟢翔平”らしさが感じられるのは、彼がその役割において何を求め、何を提供できるのかを知っているからかもしれない。

仕事について悩んでいる際に自分と向き合うことは、時につらく出口のないトンネルのように感じるが、そんな今の自分の地点さえも本の1ページだと考えられれば、より大きな視野が持てるのではないだろうか。

松㟢翔平

Instagram

松㟢翔平 Shohei Matsuzaki まつざき・しょうへい
埼玉県生。俳優、モデル、コラムニスト。東京と台北で生活している。編集人・長畑宏明と一緒にポッドキャスト『HAPPYDAYS 松㟢翔平の楽しい日々』を配信中。
Mail: matuzakishouhei@gmail.com

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《WORK》チームメンバー

Nanami Kobayashi
2000年生まれ。大学でジャーナリズムを学びながら、ライターとして活動を行う。好きなのは日記を書くこと、木漏れ日を浴びること。
Instagram: @nanamikoba

miku
1999年生まれ。フリーランスとして編集・ライター業を行う。趣味は海外旅行。
Instagram: @3kmik

Yuko Tamegai
1993年生まれ。PR職に従事。公私ともに、人がどのように情報を受け取り価値観を育んでいくのかを探求中。マイブームは観葉植物を育てることと少年漫画を読むこと。
Instagram: @tmgiuk

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