韓国の4人組ロックバンド・Silica Gel。大学時代に結成され、サイケデリックなサウンドとエネルギッシュなライブパフォーマンスで独自の存在感を築いてきた。2016年に1stアルバム『Silica Gel』を発表し、「韓国大衆音楽賞」を含む3つのアワードで新人賞を獲得。その後、「FUJI ROCK FESTIVAL」や「THE FIRST TAKE」への出演など、日本でも高い注目を集めている。
8月20日に3rdアルバム『Ballad of You』をリリースし、9月26日からはアジアツアー、11月21日には渋谷・Spotify O-EASTでの来日公演を控える彼ら。本インタビューでは、「輪廻」や「螺旋脱殻」、手塚治虫『火の鳥』といったキーワードを軸に、『Ballad of You』に込めた思想や創作の背景、そして日本公演への意気込みについて話を聞いた。
左上:キム・ゴンジェ/右上:キム・ハンジュ/左下:チェ・ウンヒ/右下:キム・チュンチュ
アルバム制作を助けたのは、手塚治虫の『火の鳥』
NEUT:3枚目のアルバム『Ballad of You』がまもなくリリースされます。今の率直な気持ちを聞かせてください。
Silica Gel:2枚目のアルバムを出したときと比べると、今回は前作からの制作期間がずっと短かったんです。その分、これまで以上に新しい音楽を早く届けたいという思いが強かったです。
こうして話していると、ファンの皆さんに一日でも早くアルバムを聴いてほしいという気持ちになります。今はそれに尽きますね(笑)。
NEUT:では、『Ballad of You』は、どのようなところから着想を得た作品なのでしょうか。制作の出発点となったアイデアやエピソードがあれば教えてください。
キム・ハンジュ:制作の出発点は、「また新しい音楽を作って発表しよう」という、とてもシンプルな思いでした。制作を進める中で、この作品をどのように形作っていくかを考えていたとき、自分の中で関心が高まっていた「輪廻」や「循環」という概念が思い浮かびました。そこで、今回のアルバムでは、歌詞や楽曲制作にも、そうした感覚を自然に取り入れています。
これまでの作品では、物語を展開していくことに重きを置いていましたが、今回は物語そのものよりも、一つの概念を直感的に掘り下げることに意識が向いていたように思います。
NEUT:一般的に「輪廻」というと、生と死を繰り返す終わりのない循環というイメージがあります。しかし『Ballad of You』では、その循環を厚みや奥行きを持った螺旋として捉え、一見同じ場所を巡っているようでいて、実際には前へ進んでいるものとして描かれています。このような「輪廻」の捉え方に至った背景を教えてください。
キム・ハンジュ:僕自身は仏教徒ではありませんが、仏教には人生のあらゆる出来事を一つの原理で説明しようとする考え方があります。そうした視点から考えると、「輪廻」そのものというよりも、「循環」という概念が人生全体を貫いているように感じました。日常を繰り返すことも、音楽を作ることも、同じような表現を繰り返してしまうことも、すべて一つの循環として捉えられるのではないかと思ったんです。
その考えを深めていく中で、手塚治虫先生の『火の鳥』を読みました。そこでも似たテーマがとても美しく描かれていて、アルバムを構成するうえで大きな助けになりました。
アジアのミュージシャンとして向き合った「東洋の思想」
NEUT:これまで日本のカルチャーの中で、音楽やその他の作品など、『火の鳥』以外に皆さんが影響を受けたものがあれば教えていただけますか?
チェ・ウンヒ:『はじめの一歩!!』
キム・チュンチュ:手塚治虫先生の作品はかなり昔のものですが、昔の漫画の絵柄から受ける感覚には、最近の『ジャンプ』作品や少年漫画とは大きく異なるものがあると思います。
永井豪先生の初期作品や、ウンヒが挙げていた『あしたのジョー』のような漫画にも、今の作品とは少し違う、独特の雰囲気があります。 今回『火の鳥』について話す中でも、そうした空気感が自然と思い浮かびました。
キム・ハンジュ:昔の漫画や、日本で生まれた芸術作品が持つ力は、本当にすごいと改めて感じます。もちろん、今の日本の芸術も好きですが、この質問を聞いて真っ先に思い浮かんだのは、鈴木清順監督の映画ですね。日本人だからこそ表現できるような圧倒的な美しさがあり、ビジュアル面でとても大きな影響を受けました。
また、『火の鳥』を読んだあと、似た作品を探して市川春子先生の『宝石の国』も読みました。「21世紀の『火の鳥』」と評されているのを見かけましたが、本当に深い感銘を受けた作品です。
キム・ゴンジェ:みんながすでに素晴らしい作品をたくさん挙げてくれましたが、僕は日本の長編アニメーション作品には特別な愛着があり、大きな影響を受けています。
代表的なものでは、『もののけ姫』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』などです。特に『ラピュタ』は、時間がたってから見返しても、新しい発見があります。今見ても非常に洗練された作品だと感じます。
また、日本では作品が公開されたあとも、制作背景やキャラクター設定、作者の考えなどをまとめた資料が数多く発表されますよね。一つの作品で終わるのではなく、その世界が発展し続けていくことがとても魅力的だと思っています。
『千と千尋の神隠し』は学生時代に映画館で観ましたが、最近は韓国で上演された舞台版も観ました。演劇に近い作品でしたが、作品の生命力が今も生き続けていることを強く感じました。出演者の皆さんが作品を心から愛し、舞台づくりに向き合っていることが伝わってきて、一度観たあと、チケット争奪戦を経てもう一度観に行ったほどです。
一つの作品が映画だけで終わらず、演劇になり、音楽や美術へと広がっていく。特に舞台美術は本当に素晴らしかったです。よく作られた作品は、時間がたっても死なずに生き続けます。そういう作品を見るたびに、僕たちもいつか、そんなふうに長く残るものを作りたいと思わされます。
NEUT:統一新羅時代の伝説「万波息笛*(マンパシクチョク)」をタイトルに冠した作品もあります。こういったモチーフを作品に取り入れた理由と、そこから描こうとした世界観 はどのようなものでしょうか。
万波息笛* 統一新羅時代の伝説に登場する笛。吹くことで敵兵を退け、病を癒やし、国のあらゆる災いを鎮める力を持つと伝えられている。
「Manphasickzuck」ミュージックビデオ
キム・ハンジュ:正直に言うと、そこに特別な意図があったわけではありません。 「万波息笛」という言葉が持つ東洋的な響きに惹かれて、タイトルにしました。ただ、統一新羅について歴史に詳しいスタッフから話を聞く中で、仏教文化との結びつきについて知りました。そう考えると、新羅時代の伝説である「万波息笛」は、輪廻や循環という今回のテーマとも自然につながるモチーフになったように思います。
NEUT:日本のカルチャーや東洋の思想など、さまざまな要素を取り入れた今回のアルバムですが、 『Ballad of You』の制作を通して、新たに得た感覚や考え方はありましたか。
キム・チュンチュ:宗教的な話から少し離れると、以前から東洋の宗教が生み出してきたさまざまな概念には興味を持っていました。ただ、それを自分たちの作品へ取り入れようと考えたことはありませんでした。今回、ハンジュが『火の鳥』をアルバムのコンセプトとして提案してくれたことが 、とても興味深かったです。
僕たちはこれまで西洋の音楽から影響を受けることが多く、それが自然なことでもありました。でも今回は、アジアのミュージシャンだからこそ語ることのできるテーマになるのではないかと思いました。アジアのファンとの間にも、新しい共感が生まれるきっかけになるのではないかと感じています。
こうして日本のメディアから仏教や『火の鳥』について質問を受けていると、アジアの人たちとの新しい接点が生まれたようで、とてもうれしいです。
『Ballad of You』の世界を、ライブという体験へ
NEUT: 9月26日からアジアツアーがスタートし、11月21日には来日公演も予定されています。ツアーへの意気込みと、日本のファンへのメッセージをお願いします。
昨年は「Syn.THE.Size X」というタイトルで日本ツアーを行いました。そのとき来てくださった方もいれば、今回初めて観に来てくださる方もいると思います。
11月にはSpotify O-EASTで大切な公演を控えています。 ぜひ会場で、新しいアルバムの楽曲を僕たちがどのように演奏するのか、実際に体感してほしいです。そして、これから発表していく新しい作品や今後の活動も、引き続き見守っていただけたら本当にうれしいです。
Silica Gel Asia Tour「Syn.THE.Size: Ballad of You」 in Tokyo
日時:11月21日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:Spotify O-EAST
住所:東京都渋谷区道玄坂2-14-8
二次抽選チケット:¥7,500(+1drink)
受付期間:8月14日(金)〜月23日(日)23:59
主催:AMUSE(Less+
Silica Gel
独自のサイケデリアと圧倒的なエネルギーを融合させたライブパフォーマンスを武器に、韓国を代表するバンドへと成長した。
2015年のデビュー後、初のフルアルバム『Silica Gel』で、「韓国大衆音楽賞」を含む3つのアワードで新人賞を獲得。
2023年リリースの2ndアルバム『POWER ANDER 99』で高い評価を受け、2024年度韓国大衆音楽賞では「最優秀モダンロック楽曲賞」を3年連続で受賞、「今年の音楽人(ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー)」にも選出された。
2025年にはFUJI ROCK FESTIVALに初出演し、「THE FIRST TAKE」で日本メディア初パフォーマンスを披露。
2026年にはYouTube Foundryグローバルプログラムに選出されるなど、国内外で存在感を高め続けている。