人とは違ったセルフィーを撮りたいがために、わざわざ危険な行為に出る人たちがいる。そのせいでけがをする人もいれば、死に至ってしまう人までいる。だがセルフィーによる問題は、自分の命を危険にさらすことだけではない。
珍しいセルフィーを撮るために野生動物に近づけば、その動物に相当なストレスをかけ、もしそれを家へ連れて帰ってしまった場合にはその経験が野生動物にとってトラウマとなるらしいのだ。
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インスタグラムによる動物の権利を守るための呼びかけ
今や自身のライフスタイルや楽しかった思い出などを示すツールとなっているインスタグラムだが、そのインスタグラムがユーザーにある警告をしていることを知っているだろうか。
インスタグラムでは動物たちとのセルフィーの検索時に「動物虐待」に関する警告を出し、ユーザーに自然環境や野生生物への配慮を呼びかけている。
#koalaselfie(コアラとのセルフィー)、#elephantselfie(ゾウとのセルフィー)といったハッシュタグを検索してみるとわかるが、野生動物に危害を加えるおそれのある行為を助長する投稿に関わる可能性があるとみなされ、警告の表示が出されるのだ。
これはインスタグラムがWorld Wildlife Fund(世界自然保護基金)とTRAFFIC(野生生物の取引を監視・調査するNGO)、World Animal Protection(動物保護に取り組むNGO)と共同で行なっている取り組みで、他にも#tigerpet(トラをペットに)のような野生動物に対する虐待になりかねない行為や、#exoticanimalforsale(珍しい動物を売っています)のような絶滅の危機に瀕した動物の売買を思わせるハッシュタグの検索時にも警告が出る。
蔓延する、野生動物を危険にさらすセルフィー
多くの人が可愛い動物たちと写真を撮ったり、楽しい思い出の一つとして写真に残したりしたいという気持ちを抱くだろう。しかし、楽しいから、珍しいからというような理由で、動物にかかるストレスをないがしろにしていいわけはない。動物たちはインスタ映えの道具でもないのだ。インスタグラムにおけるこの呼びかけは、そんなユーザーの軽率な行動が動物たちを危険にさらすかもしれないと思うきっかけを与えてくれている。これは同時にユーザ自身が危険な目に会わないようにするためにも大事なことだ。
観光客のセルフィーのため野生動物たちの自然の習慣が奪われ騒がしい場所で生活させられているという事実があるだけではない。海岸近くで絶滅の危険にさらされているイルカの赤ちゃんが発見されて水から引き上げられ、ビーチにいる人たちのセルフィーのために次から次へと回されたあと、ストレスで死んでしまったケースもある。またセルフィーを撮ろうと近づいてくる人に対し、アシカが攻撃的になり、人間がけがをしたケースもある。(参照元:Independent, The Washington Post)
World Animal Protection Internationalによると、インスタグラムにおける野生動物とのセルフィーの数は340億枚にも及ぶ。それに危機感を感じた同団体はインスタグラムとの取り組みに合わせ、サイト上に動物たちとの正しいセルフィーの撮り方を掲載している。
もし野生動物とセルフィーを撮るなら、動物たちが自然環境の中で自由に動き回れて人から安全な距離を保つこと、また反対に押えつけられたり餌でおびき寄せたり、動物たちが人に危害を加える可能性がある場合は撮ってならないそうだ。(参照元:World Animal Protection International)
SNSが生活に欠かせないものとなりつつある今、まわりの人や動物にも配慮して使う必要があることを忘れてはならない。
社会への影響に配慮したインスタグラムの使い方
変わったセルフィーを撮ることで「いいね!」をもらうより、優先すべきことは当然ある。それは自分の命の安全を守ることであり、ほかの命を大切にすることだ。忘れがちになっているかもしれないが、セルフィーを撮る前に思い出してほしい。
「野生動物とのセルフィー」に警告を出すなら「海に落ちるギリギリのところで撮るセルフィー」、あるいは実弾が入っているかもしれない「銃をかまえたセルフィー」などのハッシュタグに警告を出す日も近いのだろうか。それとも自分の身を危険にさらすことはただの「自己責任」となるのだろうか。インスタグラムの対策に注目するのもいいかもしれない。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。