痴漢やセクハラが“当たり前”の日本に、「セクハラの問題」を投げかけるソーシャルアクションとは #私たちは驚きません|「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会 #060

2018.5.15

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このところ、ニュースで「セクハラ(セクシャルハラスメント)」という言葉を聞かない日がない。ハリウッドで始まった、セクハラをされた経験を告白する#metoo運動は、日本の有名人も賛同したこともあり、比較的広まった。

でもなかには、「セクハラの定義って?」「セクハラの問題点って何?」と理解があやふやな人もいるかもしれない。そんな人たちにも伝わるように、わかりやすくて可愛いポスターを使ってセクハラの問題について呼びかける若い女性たちがいる。

本記事で紹介するのは、彼女たちが日本のアート界でのセクハラに焦点を当て、広めようとしているハッシュタグ「#NotSuprised」「#私たちは驚きません」についてだ。

▶︎ハッシュタグ・アクティビズムについてはこちら

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日本で芸術を学ぶ学生の7割は女性、だが立場が上になるほど男性が多い

日本のアート界の#metooでは、女性のヌード撮影で知られる写真家の荒木経惟氏の“ミューズ”と称されてきた元モデルが公開した、モデルとして尊重されるのではなく物のような扱いを受けていた事実を綴った手記も記憶に新しい。しかし、それが公開される約3か月前から社会派アートグループ明日少女隊と、フェミニズムやメンタルヘルスなどのトピックを扱ってきたオンラインマガジンhoneyhandsが「日本のアート界のセクハラ問題」に対して行動を始めていた。それはニューヨークのアート業界の女性たちが立ち上がり、アート界でのセクハラや性差別を告発する活動のためにまとめた「セクハラの定義」がわかりやすく、日本で紹介したいと思ったのがきっかけだった。

日本のアート界の実態というと、まず大学の芸術学部の学生の7割が女性であるものの、上の立場になるほど男性が多く、構造的な問題が存在していることが想像できる。さらにジェンダーやフェミニズムについての教育があまり行われておらず、性差別がアートの一部であるかのように扱われることも少なくない。これでは性差別の問題を訴える手段としてのフェミニスト・アートを知る機会が得られにくいだけではなく、そういったアートを積極的に作る基盤が存在していないと考えられる。

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Illustration: Lola Rose

「セクハラの定義」って一体?

彼女たちが日本語に訳して紹介する、ニューヨークのアート業界の女性たちが結成した団体WANSがまとめた「セクハラの定義」では、セクハラは「性的な行動により、被害者を警戒させたり、支配したり、貶めたり、おびえさせたり、いじめたり、軽く扱ったり、屈辱を与えたり、困らせたりすることで、個人的または制度的な虐待」。そして多くの場合、加害者が性的な行動を道具・武器とし、権力を乱用しているのがセクハラの構造だ。また彼女たちによると、その行動の具体例には以下のようなものがある。

お世辞、または軽蔑的な言葉。
人の肉体的な外見や服に対する求めてもいない言葉。
人の性的な指向または性自認に関するコメント。
人の性生活に関する質問をすること。
一方的な性的主張、招待、ちょっかい。
性的資料を表示したり共有したりして、誰かが不快に感じるようにすること。
不愉快な個人的な贈り物。 狼の口笛(魅力的な女性を見たときの男性の口笛)。
野次。
付け回し。
いやらしい目つき、またはストーカー。
(引用元:明日少女隊

これらの行為がなぜ問題なのかというと、それは性的な価値でその人間の価値を判断したり、人間の尊厳を侵したりして精神的なダメージを与えることになるから。これらの行為だけでなく、その背景にある差別の構造を訴えていくことなしには、性別間の平等を実現させることはできない。また、どんな性別でもセクハラの加害者にも被害者にもなりえることを忘れてはいけない。

チラシを配布して広めるキャンペーン活動

#私たちは驚きませんのキャンペーンでは、アート界のセクハラ問題を考えてもらうために、全国の美術大学や美術館、ギャラリーに配布するためのクラウドファンディングを行う。集まった資金は、主にビラのデザイン代やプリント代、ビラの送付に当てられ、リターンでは、チラシの実物やPDFデータ、明日少女隊によるフェミニストTシャツなども選べる。読者もパトロンとして応援すれば、彼女たちの目標達成に貢献できる仕組みとなっている。

明日少女隊から同キャンペーンでのコラボレーションの話を持ちかけられたhoneyhands編集長hikariは、「セクハラの経験は被害者にはいつまでも残る。被害を受けた人たちにとって生きやすい、(被害について話したいときには)声をあげやすい社会を作るために、とにかく一人でも多くの人の考え方を変えられるように行動したい」という思いがあり、この活動に参加したという。

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チラシの裏面には、WANSがまとめたセクハラの定義と彼女たちがそれを発表した際の書簡の内容が書かれている

まずは「驚かない」ということの発信から

多くあるハッシュタグ・アクティビズムのなかでも、#私たちは驚きませんは日本人に響きやすい文句だと筆者は思う。残念ながら痴漢という行為が珍しくなく、多くのセクハラ行為が身近に存在するからだ。したがって、まず「セクハラがそこらじゅうにあって、もはや驚くこともできない」と発言することから性差別に対する批判は始められるのかもしれない。それだけでも、人々に日常生活のなかで習慣的に行っていた言動が「セクハラかもしれない」と考えさせ、それらが見逃されるべきことでないと気づかせ、そしてセクハラの背景にある性差別的な考え方を認識させるための一歩となるのではないだろうか。

#私たちは驚きません

クラウドファンディング

こちらへ寄付することで活動に協力できます!

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Illustration by Lola Rose

明日少女隊

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honeyhands

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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