「グラフィティ」といえば、反社会的なイメージがないだろうか?だが、その“常識”を覆すグラフィティアーティストたちがドイツのベルリンで活動している。彼らは人々を不愉快にする“差別的なマーク”を、ユーモアのある絵に換えようと工夫を凝らしてるのだ。
彼らがなくそうとしているのは、ナチスが使ったシンボルマークであり白人至上主義(特にドイツ民族主義)やユダヤ人排斥を意味する鉤十字の落書き。
ベルリンでは、残念なことにドイツのメルケル首相がシリアなどからやってきた難民を多く受け入れてから、彼らを排斥しようとする人々によるヘイトクライムが増加した。そんなヘイトクライムの1つが鉤十字の落書きだったという。(参照元:Fritz Müller, GOOD)
Photography: Fritz Müller
Photography: PAINTBACK by Legacy BLN
Photography: PAINTBACK by Legacy BLN
Photography: PAINTBACK by Legacy BLN
Photography: Fritz Müller
鉤十字の落書きをポジティブな絵に描き換えるこのムーブメントは、#PaintBack(描き直せ)と名付けられている。そして同ムーブメントを紹介した動画は世界で約150万人が視聴し、雑誌や新聞、そしてSNSでも広まり、クリエイティブに社会をよくするアイデアだと世界で話題になっているのだ。
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Photography: Fritz Müller
さて、この#PaintBackのムーブメントはどのようにして始まったのだろうか。ベルリンでグラフィティに使うスプレーなどを扱う店「Legacy BLN」を経営しているイボー・オマーリは、ある日グラフィティ・アーティストらしからぬ男性がやってきたため、彼に何を描きたいのか尋ねると「子どもたちが遊ぶ公園に鉤十字が落書きされているから隠したい」と答えたという。そこでベルリンで見受けられる「排他的な言動」への対策がないかと考えていたオマーリらが、その男性を手伝ったことから同様の活動を続けることになったのだ。現在では子どもや若者向けのワークショップを開催してムーブメントに参加する人を増やしている。(参照元:GOOD)
#PaintBack from Fritz Müller on Vimeo.
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差別的なグラフィティなら消してしまえという考え方になる人もいるかもしれない。だが、彼らが活動するのは、ストリートアートが盛んなベルリン。彼らは差別的な落書きをただ消すのではなく、見る人を笑顔にするような絵に描き換えることを選んだのだ。
一方、日本ではストリートアートの規制がかなり厳しい。街の景観を壊したくないという考え方もあって当然だが、街の壁をキャンバスとして開放して絵で人々を笑顔にしたり自分を表現したりできる場を作ってもいいかもしれない。そうすればもし差別的な落書きが描かれても、彼らが行なったようなユーモアのある解決法をとれるようになる。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。