1996年生まれが企画した、“来場者が参加者になるアートイベント”に老若男女160人が集まったわけ

Text: Shiori Kirigaya

Photography: Shiori Kirigaya unless otherwise stated.

2018.9.13

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2017年12月と2018年4月に開催され、アート好きからそうでない人まで老若男女約160名が訪れたアートイベントをご存知だろうか?「ひと粒のスプリンクル*1が別のスプリンクルと出会って、混ざって、新たに起こす化学反応」をコンセプトとする「sprinkler of(スプリンクラー・オブ)」だ。

これまでパフォーマンスのメンバーとして関わってきたのは、コンテンポラリーダンサーから芸術系の大学でデザイン・油絵・写真・映像専攻者、芸術系以外の大学に通うイラストレーターや映画が好きな学生、自分で服をブランディングしている人、専門学校でメイク・ヘアメイクを学ぶ学生、DJ、ラッパー、シンガーソングライター、染物職人の若者までさまざま。

(*1)お菓子のトッピングとして使用されるカラフルな砂糖菓子。日本では「カラースプレー」とも呼ばれる

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左から主催する杉本音音、須佐京香、チョンキソプ、補助役を務める吉田拓巳

そんな面々が才能をかけあわせて一つの作品を作り、それを見に集まった多様な人々と化学反応を起こす機会を目指す同イベント。今回は、9月23日に第3回目の開催を控えた中心メンバーに話を聞いてみた。

異なる分野の人とつながる場

主催者はすべて1996年生まれの学生で、ヘアメイクの須佐京香(すさ きょうか)と、コンテンポラリーダンサーの杉本音音(すぎもと ねおん)、そして動画クリエイターのチョンキソプ。彼らに加えて取材の場に来てくれたのが、同イベントの準備にあたりスケジュール管理などのマネジメントを担当しているクリエイターの吉田拓巳(よしだ たくみ)。

スプリンクラー・オブは、主催メンバーのチーム名でありイベント名でもある。高校の同級生でともに芸術系の大学に進学した主催メンバーたちで企画して始まったものだが、そこにあった思いの一つが「アートのジャンルに縛られてしまうのではもったいない」というもの。

音音:ダンスの舞台って、現状としてダンサーしか観にこないんですよ。コンテンポラリーダンスは普段生活していてあまり触れる機会のあるものじゃないし、生活になくても別に生きていけるけど、あったらもっと楽しいかもしれないしっていうのがあって、展示と一緒にやることやヘアメイクの力を借りることでもっといろんな人に魅力を広げていけるんじゃないかなって。

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音音(ねおん)

また「一緒に何かを作りたい」という思い以上に、そこには自分と異なる分野の人たちと交流することで見えてくる世界のおもしろさをより多くの人に味わってもらい、自然と視野を広げてもらいたいという考えもあるかもしれない。

チョン:学校以外で、違う分野の人とつながる場って案外少ない気がします。だから、なにかをやっていてもいなくても、自分が普段触れないモノや人に触れる場を自分らで作りたくて始めました。

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チョン

見に来た人からは、「自分も次はやりたい」「ダンスや発表の場ってこんなに自由なんだな」などと感想がもらえることも多く、実際にそこで交わされた会話が次回のコラボレーションへつながっている。

今回のテーマは「渦」

今回のスプリンクラー・オブが今までと異なるのは、参加者にテーマをもとにパフォーマンスや展示を作ってもらう試みをしているところだ。選んだテーマは「渦」。初回は「Saudade/Nostalgia(サウタージ/ノスタルジア)」*2をテーマとしていたが伏せており、今年4月にあった2回目は「Kilig(キリク)」*3をテーマに掲げていたが、それを意識的に作品と関連させることはしていなかった。

京香に言わせれば「一回目と二回目は、どちらかというとキラキラしていてハッピーな感じのテーマ」だったが、今回は趣向の異なるものを選んでみたようだ。

京香:今回は、他人がキラキラしてみえることがあるかもしれないけど、意外とみんな悩みも抱えていたりするし、人との出会いの渦がぐるぐると回っていて深く考えてしまったりもする、そういう暗い部分も含めて表現できる場にしたいなと思って「渦」をテーマに選びました。

(*2)ともに「郷愁」や、その「切なさ」を意味する
(*3)フィリピンで話されている言語の一つであるタガログ語で「お腹の中で蝶が舞う気分」を意味する

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京香(きょうか)

大学や専門学校を卒業したあと自分はどんな道を選ぶのがいいのかと、学生なら誰でも一度は考えて悩むことだろう。したがって少し複雑で等身大の心情を表現できそうな今回のテーマだが、「渦」という一語の解釈の幅は広い。クリエイターたちはそこから、どのような発想をするのだろうか。

コンテンポラリーダンスの振り付けを主に担当している音音は、「渦」から何日も同じ夢をみたり、何度も同じ人に出会うなど、輪廻転生に似たような感覚にイメージを膨らませてダンスを作ったという。当日は、どんな「渦」から化学反応が生まれるのか楽しみだ。

夢を一つ実現させるために、今できることを全力で

回を重ねるごとに変化し続けるイベント、スプリンクラー・オブ。メンバーたちも始めた当初は3回目まで続くとは思いもよらなかったようだが、「常に人を楽しませるようなスプリンクラー(振りまく人)でいたい」という願いから、継続的にイベントを行ってきた。見に来た人が、ただの見に来た人では終わらず、次の回では一緒に何かを作るようになるなど、そのオープンでインクルーシブなところが、これほどまでに多くの来場者を集めているのかもしれない。

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「自分たちが自分たちのやりたい表現を今後も続けていけるように、今できることを全力でやる」。そうスプリンクラーズは話していた。そんなポジティブなエネルギーが感じられ、自分とは異なる分野の人たちの表現に触れられる会場へ、ぜひ気軽に足を踏み入れてみてほしい。

sprinkler of

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(以下、ステートメント)
私たちは都立総合芸術高校を卒業し、芸術系の大学へ進学し、それぞれの道(コンテンポラリーダンス、ヘアメイク、映像)を極めています。違った分野のように思えますが、コンテンポラリーダンス、ヘアメイク、映像の3つが掛け合わされることで、お互いの魅力を引き出し、今までになかった新しい空間を生み出します。そして、芸術やそれぞれの分野の新たな可能性を試行錯誤しています。

そして、違った場所で若手クリエイターとして活動している私たちの周りには、ライブペインター、映像クリエイター、アクセサリーデザイナー、ダンサーなどといった、またそれぞれで輝き才能とセンスが溢れる若手クリエイターが沢山います。

“sprinkler of…”の展示・パフォーマンスでは、私たち3人の展示兼パフォーマンスを始めとし、他の若手クリエイターを集め、コラボさせることで、違った形で化学反応を起こし、それぞれの才能がふりまかれる”芸術の遊び場”といった機会をつくっています。

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sprinkler of “Uzuー渦”

9月23日(日)
DAY 15:00〜18:00/NIGHT 19:00〜23:00
@渋谷 E-Base
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町6-15 B1

DOOR ¥1,500(1Drink)
ADVANCE ¥1,000(1Drink)

《Show time》
DAY:
16:30〜17:30 Contemporary Dance×Hairmake×Movie
NIGHT:
19:00〜20:45 Live Painting(大門×raszombie×YULA)
21:00〜22:00 Contemporary Dance×Hairmake×Movie

《Member》
◯Hair&Make
Kyoka, Ashley, Narumi, Miyuki, Kanae, Yui

◯Movie
Chige

◯Dance
Neon, Kayako, Sayaka, Kanako, Karin, Ageha

◯衣装
Yarimizu Tomotake

◯raszombie, LAZY PIZZA DELIVERY, YULA, pino, Mayo Murakami, 大門

◯sprinkler
Kyoka(ヘアメイク)
Chige(映像)
Neon(ダンス)

◯Special thankyou
Takumi – Ken – Kobasan!

Contact:sprinklerof@gmail.com

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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