「できる範囲でいいから、おいしくて体に良いもの、そしてなるべく自然環境にも良いものを」これからの私たちのための、食の選び方|Fork and Pen #000

Text: yae

Photography: Shiori Kirigaya unless otherwise stated.

2019.11.25

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はじめまして、yaeです。
わたしは東京で生まれ育ち、15歳~19歳はニューヨーク州にあるボーディングスクール(全寮制の学校)に通い、東京に戻ってきて約3年が経ちました。ものの価値やあり方を見極められるよう、絵画の展示などの作品を通して、表現をしています。

留学1年目で、寮で出る動物性の素材を使った食事が体に合わなかったり、ファストフードやインスタント食品ばかり食べて体調が悪くなったことがきっかけで、オーガニックや、ベジタリアン、ビーガンの食が身近になりました。わたしには食に対する強いこだわりや、決まりごとはないけれど、何を体に取り入れると心と体が喜ぶのか、その時なるべく環境にもやさしい動きができているのかを、自然と考えます。

食べるものを選ぶという、ひとつの選択が、わたしたちと、わたしたちの地球のための大きな選択になります。この連載では、食と自然が繋がっていることを教えてくれる、美味しくてやさしいレストランを紹介していきます!

今回は、レストランの紹介ではなく、わたしが環境について考えるようになったきっかけなど、自己紹介をさせてください。

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yae

ただの違和感が「意識」に変わった

ひとつの場所に人が集まり、同じものを食べたり飲んだり、同じ音楽を聴いたり会話をして空間をシェアすることが好きで、ミュージックイベントの手伝いやオーガナイズを何度かしたことがあった。イベント後の楽しさの余韻が残るころ、会場内で集めるのはいつも、プラカップやペットボトルのゴミ。それらのゴミをまとめているとき、毎回なんとなく違和感を感じていたが「今日はゴミが多いからゴミ出しが面倒だな」と思うくらいで、ゴミが大量に出ることの理由など考えたことはなかった。

今年の春に主催をした、フリーマーケットのイベントで、笑顔で会話をする人々を見ていた。いつも見る好きな光景だったはずなのに、全員がプラカップに入った飲み物を持っていることに、何ともいえない自分へのやるせなさを感じた。「今日の人数分、またはそれ以上の数のプラカップが捨てられてしまうのか」と思うと、どうもいつものように楽しめなくなっていた。案の定、そのイベントが終わったあとには大量のプラカップがゴミ袋にまとめられていた。楽しんでくれた人たちがいるのは事実なのだけれど、どうしてもわたしは、ただゴミを生み出したような気分になり、後味が悪かった。そのうえ、何が環境に良くて、悪いことなのか、なるべく環境によい動きはどういうことなのかが「全くわからない」という自分の無知さに意気消沈した。ただ、そうやって無力さを感じたのがきっかけで、どうすればゴミが少なくなるのかをリサーチしたり考えはじめた。

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わたしが環境のことを気にし始めたきっかけはいろいろあるけれど、無意識のうちに周りの友人に影響を受けたことが多い。食の分野に携わってきた友人のひとりは、けっして人に強制はしないけれど、ものに対しての価値観や意見をはっきりと持っている印象だった。幼い頃からオーガニックな食事が身近にあり、彼女の食に対する意見は確立していて、食材ひとつが、どこにいる誰から来ているものなのか、値段が安いと感じたら、それにはなにか理由があるのか、などを気にして選択をするのが習慣になったという。いつの間にかわたしは、彼女のものや食べ物の扱い方に興味を持ち、影響されていた。

食を提供する側になるのなら なおさらゴミを最低限にしなければと思った

今年の夏、その友人が、ギャラリー・ヨガスタジオ・シェアオフィスなどがあるコートヤード広尾のイベントスペースでもある中庭にあるフードトラックを使って、イベントをやってみないかと誘ってくれた。「フードトラックを通して食に対してのオプションを考えるきっかけになれば」という思いで彼女は運営していた。わたしにとっても、来てくれた誰かにとっても、これが環境への配慮やものの扱い方を、改めてを考えるきっかけにできればと思い、すぐにやりたいと伝えた。

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イベントまでの準備期間は約一ヶ月だった。まず最初に、どうしたら捨てるものを極力出さないよう工夫できるのかで、頭がいっぱいになった。彼女に相談をすると、彼女はすでに積極的にその動きをしていた。フードトラックのためにプラスチックでなく木製の再利用できる備品を用意していたり、ドリンク用にはガラス製のグラス、持ち帰り用のためのカップは、植物性でポリ乳酸由来のプラスチックのプラカップを準備してくれた。これは、地球温暖化の原因になる、燃焼時の二酸化炭素の排出を最も低いレベルに抑え、さとうきび・とうもろこし・じゃがいもなどに含まれるでんぷんを主な原材料にしているため、有毒ガスを排出しない。けれども、わたしたちの身の回りにある石油系プラスチックは、燃焼時には二酸化炭素と有毒ガスを排出し、これらが地球を温める原因のひとつになる。

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Photography: yae

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Illustration: yae

イベントのメインフードは、グリルサンドイッチのケータリングをするSOUTH MIDDLE(サウスミドル)が協力をしてくれてミートボールサンドを出し、わたしは果物からシロップを作り、ホームメイドのドリンクを販売することにした。1991年のアメリカ映画『ハートブルー』をパロディにし「Get Hocked on the MEATBALL SUBS 」(ミートボールサブに夢中になれ!)というタイトルをつけた。あえてポップなタイトルとフライヤーを描き、環境を気にした取り組みをこちらがしていることは特にアピールしなかった。今や環境を配慮したもの選びは、決して特別なことではないと思うからこそ、いつも通りの楽しさの中にポンッとそれに沿った動きを入れることが、気持ちが良いと思った。

100か0かではなく、自分の中の0に近づけようとすること

環境問題についての知識はまだまだ少ないが、可能な限りで、このイベントでできることを考えた。買い出しでは何件かスーパーや直営店を回り、過剰にビニールに包まれた果物や野菜たちや、外国産の安い商品ではなく、なるべく梱包が少なく、国産で生産者の情報が少しでもわかる商品を探した。しかし、スーパーや直営店で知れる情報はほんの少し。いくらこちらが意識しても、すでに店頭に並んでいるもののビニールの多さや、情報量の少なさに対しては、どうにもできないのが現実だった。その時初めて、材料一つひとつに対しての責任を感じ、生産者との公正な取引を目指すフェアトレードや、生産者と買い手が直接取引をする、ダイレクトトレードの大切さを実感した。

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例えばペットボトルの炭酸水を発注すれば、仕入れ代も抑えられるし、使いやすいのだけれど、リターナブル(返却して再利用可能)なビンを選んだ。ペットボトルのお茶も発注せず、茶葉からお茶を入れた。ストローが必要な飲み物には、紙の味がしてしまったり、形が変わってしまうデメリットはあったが、ちょうどパリに行った母がおみやげでくれた、紙ストローを使ってみた。イベント後の帰り道、使わなかった炭酸水のビンなども持ち帰えらなければならないため、バランスを崩すと倒れそうになる荷物の重さだったが、だからといって排気ガスを出すタクシーを使う、という選択肢はわたしの中にはなく、フラフラになりながらも、いつも通り自転車で移動をした。持てる荷物のキャパもあり、水と氷は仕方なく近くで買ってしまったのが反省点でもあるが、「全く使わない」ではなく、「なるべく使わない」が目標だったので、次回に活かす改善点としてノートに書きとめた。このイベントを振り返ったとき、その時点での自分の知識や、できることの範囲はどこまでだったのかがとてもよく見えた。

地球のための動きではなく、今とこれからの私たちのため

地球に存在するすべてのものは、自然や、自然の力を使って生まれたのに、大切にされず捨てられた資源は一瞬で「ゴミ」になってしまう。

わたしが生まれた22年前には、すでに沢山のもので溢れかえっていたのだろうし、わたしもつい最近まで使い捨てをすることは当たり前だとさえ思っていた。けれど、客観的に今の生活を見てみると、環境破壊の原因のひとつであるプラスチックはもちろん、紙や食品など身の回りにある資源やものの量は多すぎると感じる。このまま、増える捨てる燃やす、を繰り返しては地球はゴミ屋敷のようになるのかな?と思うほど。

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ナチュラルに環境を考えているオーナーが営むサンドイッチ屋「SANDWICH CLUB」の「Omlet & Ham sandwich」

世界的にプラスチックを減らす動きはあるが、プラスチック以外のものなら気にせず大量に使っていいというわけでもないと感じた。その他の資源やエネルギーの扱い方を、改めて考えることが、まずわたしたちが最初にするべきこと。それは食べるものでも、食べものを包んでいるものでも、手にする、口にする、すべてのモノに対して。自分の使うものを使う分だけ、そしてなるべく長く使うことが、これからの目標であり、チャレンジなのだと思う。そして、何かが必要になるシチュエーションがあったときには、なるべく未来のわたしたちにとって、なるべく良いものを、なるべく良い使い方ができるようにしたい。

せっかく食べるのなら、ただ食べるのではもったいない

食はわたしたちの大切な文化で、毎日必ず選択肢がある。できる範囲でいいから、おいしくて体に良いもの、そしてなるべく自然環境にも良いものを、一人ひとりが意識して選択するだけで、ゴミの量も、自然破壊も減るはず。

一つひとつの食の選択が、必ず自然と繋がっていることを考えてみる。でも、きっとひとりで意識して実行するのは簡単なことではないから、教えてくれそうな飲食店に行ってみる。自然環境を大事にしているオーナーやシェフのこだわり方は様々で、自然から生まれたものの大切さを、お料理が教えてくれたり、店員さんが直接説明してくれたり、お店のスタイルや使うものが教えてくれたりする。そんな思いが詰まったお店を、ひとつでも知っていたら、自分の中の選択肢も増える。おいしくて、自然を近くに感じられるのってシンプルで、嬉しいこと。次回の、Fork and Penをお楽しみに!

yae

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1997年東京生まれ。ニューヨークの高校に留学していた15歳〜19歳の間、人との出会いを大切にしながら、さまざまな文化や価値観に触れる。今は、現代の「もの」のあり方を改めて考えるきっかけを作れるよう、自身の表現方法を探索中。シンガーとして都内を中心としたミュージックイベントに出演したり、アートワークの展示をしたりしている。

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