こんにちは、yaeです。
「Fork and Pen」は、私が日頃感じてきた食や環境に対する疑問をもとに、その答えやヒントが見つかりそうなレストランを訪れ、身近にある“食の選択肢”について学んでいくフードジャーナル連載です。が、新型コロナの影響があり、直接お店を訪ねるのは我慢をして、お家からリモートでお話を伺いました!
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今回話を聞いた原宿・神宮前にある「SUPERIORITY BURGER(スペリオリティーバーガー)」は全てのメニューがビーガンのハンバーガーショップ。ニューヨーク発祥のカジュアルな雰囲気で、ファストフード店感覚で気軽に入りやすい。そんな親しみやすいお店のハンバーガーがビーガンだったら、ビーガンも身近なものになる。
そもそも、ビーガンってなに?
SUPERIORITY BURGERの前に、まだ馴染みの少ないビーガン(VEGAN)についてのお話。ビーガンとは、動物性食品のものを一切食べないこと。肉や魚はもちろん、卵や、バターなどの乳製品も摂らない。
ビーガンの食を意識するきっかけは人それぞれあるけれど、動物性食品を食べないことにはどんな利点があるのか、ビーガンの人も、そうではない人たちも、本質的な理由を知ることが大事だと思う。
例として、動物のことを考えている人は多い。米国などで毎日大量に消費される牛肉は、生産スピードが追いつかず、肥育ホルモン剤で牛を早く大きくし出荷される。
肥育ホルモン剤自体が、人の体に影響があるのか証明はされていないが、自然でも牧場でも、のびのびと育っていくイメージのある牛が、生まれてからすぐに親牛と離され、狭い檻の中で体が大きくなるクスリで育てられる。これは畜産農家の一つの例に過ぎないが、人が食べるためにされていることで、なんとも気持ちがよくない話。
別の例として、地球温暖化との関係を考えている人。わたしも、肉を食べることと地球温暖化に関係があることを知った時は驚いた。太陽の熱から地球を一定の温度を保つための、温室効果ガスが増えすぎることで、温暖化の原因になると言われている。
温室効果ガスとは二酸化炭素、メタン、フロンなどのガスのことで、牛のおならやげっぷにもメタンガスが含まれている。大量に牛を育てるには、大量の餌、土地、水、エネルギーが必要になる。土地を得るため森林伐採をすることなどで、地球のサイクルを狂わせ、森林火災が起こったり、動物や魚が絶滅の危険にされられている。
自分の食生活を見直したきっかけ
わたし自身、ニューヨーク州の高校で出されていた食事や、毎週のように食べていたファストフードの食生活で体に明らかな異変が起こり、それがきっかけで食に対する意識が変わり、動物性食品を摂ることが、だんだんと少なくなった。
お肉を食べたい日には、素直に楽しんで食べるし、食べたいと思わない日には、わざわざ食べない。ビーガンやベジタリアンだと名乗ることはないけれど、生活をする中で、せっかくなら何を選択すれば気持ちや体が喜ぶのかを意識している。食べるために育てられた動物を、毎日バコンバコンと消費する一人にはなれない。
そして、この自粛期間で、ビーガンの食生活にフォーカスした。そうしているうちに、変化していく生活習慣のなかで、新たに見える可能性や楽しさがあった。
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食生活を変えただけで、今までわたしが持っていた知識やレパートリーが少ないことを痛感し、SUPERIORITY BURGERのクリエイティブでおいしいビーガン料理たちを思い出した。今回お話を伺ったのは、東京店でマネージャーを務める鈴木将也(すずき まさや)さん。
「日本ではまだまだ、ビーガンが選択肢の中にも入っていない」
yae:SUPERIORITY BURGERはどんなお店ですか?
SUPERIORITY BURGER(以下、SUPERIORITY):東京の店舗ではニューヨークのメニューをベースに、全ての商品をビーガンで統一しています。ニューヨークではビーガンでなくても、ここのハンバーガー食べたさに来店されるファンの方も多いのですが、オープンしたての日本ではビーガンレストランとして注目されている面がまだ大きいです。ビーガンの方々の受け皿として認識いただけていることも大変光栄ですし、ニューヨークのようにもっと広くの方々に愛されるお店にしていきたいですね。
yae:SUPERIORITYはメニューが豊富で、わたしも続けて通っているのですが行くたびにメニューが変わっている印象があります。どのようにメニューの考案をしているのですか?
SUPERIORITY:ニューヨークのオーナーシェフが考案したレシピを日本でもそのまま食べられるように構成していますが、仕入れられる野菜の特徴も変わってきますので、向こうと都度コミュニケーションを取りながらメニューを作っていっています。彼が来日した際は、実際にキッチンに立ち、日本の野菜に触れながら一つの料理を作り上げていきます。また、彼が帰国する前に考案し、公開していなかったメニューを順番に出すなど、お客様を飽きさせないような工夫も行っています。
yae:日本限定のメニューもありますよね。
SUPERIORITY:ニュージャパンクリエイションというバーガーは、オープン当初から販売している日本限定メニューです。ニュークリエイションという名の湯葉バーガーがニューヨークで人気で、それを日本では国産の生湯葉を使用したスペシャルなバーガーにしようと作られました。生湯葉と胡麻ソースの相性が抜群で、それを聞きつけ来日したいと言い出すファンがいるほどの反響でした。
yae:おいしそう…。とても人気で、まだ食べられていません。
SUPERIORITY:今までは土日限定にしていたのですが、多数のご要望があり数量限定で毎日提供できるようにしました!
Photography: ©︎YUMCH
yae:たくさんメニューがありますが、その中でもこだわりの一品といえばどれですか?
SUPERIORITY:まず食べていただきたいのは店名にもなっているスペリオリティーバーガーですね。キヌアやひよこ豆、野菜をミックスしたパテや、カシューナッツで作った独自のチーズ風ソース、セミドライトマトなど、バーガーを構成する一つ一つの食材に時間をかけて細部までこだわり抜いたメニューです。ニューヨークでビーガンフードの常識を覆した一品です。
お肉だから、お肉でないから、というようなラインに捉われない
yae:ビーガンの食生活は、良さを感じながらも栄養バランスの取り方の工夫がいつも以上に必要となるなど難しさも感じました。どう向き合うのが良いのでしょうか。
SUPERIORITY:ビーガンを意識する理由はいろいろあると思いますが、大事なのは身体に合い、自分自身が楽しめるものを選ぶことだと思います。「お肉じゃなくても、おいしいよ」ではなく、お肉だから、お肉でないから、というようなラインに捉われずに、ビーガンフードが認識されていけばと思います。ビーガンの方も、そうじゃない方も、おいしいが理由で同じものを食べるような。
yae:そうですよね、まさにそこにはまりました。そのスタイルに!(笑)
yae:環境のことを考えてビーガンになる人もいると思いますが、お客さんに見えるところでは環境への配慮を何かしていますか?
SUPERIORITY:環境に配慮することを、自然なこととして取り入れる意識はニューヨークからきていますね。
例えば、プラカップは生分解性のPLA*1のプラスチックで作られたものを、テイクアウトではバガス素材*2の容器や紙袋を使用しています。また、ニューヨーク店はテイクアウトがメインの営業形態ですが、東京店は23席あってイートインの方もゆっくり食事を楽しめる空間なので、今後は繰り返し利用のバランスに注意しながら、捨てるものを減らす取り組みも考えています。
yae:お客さまに見えないところで行っている取り組みもありますか?
SUPERIORITY:仕込みの量の調整やフードロスを減らすように心がけています。
yae:どうしてお店を通してビーガンを広めようとしているのでしょうか?
SUPERIORITY:やっぱり、初めてSUPERIORITYのハンバーガーを食べた時の衝撃ですね。食べ応え、味のインパクト、そして満足感。ビーガンフードの良さは人ぞれぞれに思いがあると考えますが、ここのハンバーガーの間口の広さはとても魅力的と感じています。オーナーシェフがハードコアバンドのドラマーというプロフィールも特徴的ですし、きっかけは様々でもSUPERIORITYのバーガーを知ってもらい、ビーガンフードが自然と食事の選択肢の一つになることが素敵だなと思います。親しみやすいハンバーガーショップの一員として、ビーガンが身近なものになっていってほしいですね。
yae:こういうビーガンのメニューが豊富なお店が増えれば、自然にビーガンを選べていいですね!
(*1)植物由来のプラスチック素材PLA(ポリ乳酸)。生分解性で、対応した環境であれば化合物が分解され自然に還る。
(*2)燃料として使い切れず廃棄されてしまうことが多いさとうきびの搾りカス(バガス)を使った生分解性の素材。対応した環境であれば90日程度で分解され自然に還る。
SUPERIORITY BURGERの心地よさ
可愛らしい看板に沿って歩き、螺旋階段を降りると、かっこいい空間が広がる。席の広さや洗練されたシンプルなスペースなど、飾っていないクールな店内から、なんとなくニューヨークの空気感を思い出す。
わたしが通った高校の学食でも、マンハッタンの街中のレストランでも、ビーガンの食は当たり前に並んでいた。SUPERIORITY BURGERもビーガンを特別なものとしてではなく、日常的なものとして認識し、押し付けずに徹底している。
動物性の食品を食べないことには、動物愛護、環境問題、健康のためなど、様々な理由があるけれど、こだわりがある人、ない人も関係なく、おいしくビーガンのメニューを食べてほしいという、SUPERIORITY BURGERの心地のよいカジュアルさ。そしてバーガーのパンチの強さに驚かされ、今まで思っていたビーガンに対しての印象を一瞬で変えられた。
ビーガンバーガーを食べるあなたがビーガンでなくていい
たしかに、お肉を食べることを疑問に思ったことはないのに、なぜ、お肉を食べないことには疑問を持ってしまっていたのだろう。自分の体と心がポジティブに動くには、どうしたら良いのかを考えて、食べるものを改めて選んでみると、物事をフラットに捉えることができたり、自分を動かす新しいきっかけになるかもしれない。
もしも、ビーガンが身近なものでは無いと感じるのなら、SUPERIORITY BURGERに行ってみて!食べるバーガーがビーガンなだけで、口にした瞬間になにかを発見することも。いつもと違う目線で、できる範囲でいいから、意識してみるだけで、もやもやしていた何かが無くなるかもしれない。
yae
1997年東京生まれ。ニューヨークの高校に留学していた15歳〜19歳の間、人との出会いを大切にしながら、さまざまな文化や価値観に触れる。今は、現代の「もの」のあり方を改めて考えるきっかけを作れるよう、自身の表現方法を探索中。シンガーとして都内を中心としたミュージックイベントに出演したり、アートワークの展示をしたりしている。