やりたいことがやれない、行きたいところへ行けない、会いたい人に会えない…全ては互いの命を守るためと分かりながらも、今までのようにはいかないストレスにイライラが募ることもあったかもしれない。
欲求・欲望を、以前のようにはむき出しにすることができなくなった今、皆、自分の “欲”とどうやって折り合いをつけているのだろうか?
食欲、性欲、物欲、知識欲、さらに自粛生活で気がついた自分の「○○欲」について、編集者、アーティスト、本屋、学生、料理人などさまざまな立場の人に話を聞いた。
「自粛」ムードのなかで“欲”の話をするのはためらわれるかもしれない。
だけど、こんな言葉がある。
「希望──欲望と期待とが丸められて一つになったもの」(アンブローズ・ビアス)
そう、“欲”は希望へと変わる。
この「自粛生活」のなかで生まれた私たちの“欲”が、きっと新しく始まる日々への希望の光になると信じて。
Shuichi Nakamura
SNOW SHOVELING店主
悩める本屋。ただ悩みは暗くない。コロナ禍により自身のアナーキシズムの自制が効かない日々。ワクチンとしてロマンティシズムに傾倒している。嫌いな言葉は「課題解決」。好きな言葉は「席替え」。映画の邦題にうるさい山羊座のA型。今のところストレート。
欲1.食欲
ー人間の三大欲求の一つで、生きるためには欠かせない「食欲」。だけど、ただ腹を満たせばいいってものでもない。今はどんなふうに食欲を満たしている?
ほぼ自炊生活。5/16の今日はビーフ・ストロガノフ食べた。赤ワインをたっぷり使って牛肉を煮込み、最後にサワークリームを添えるのだ。バターライスをつくり、ポテトサラダもつくり、昼でも「はい、エビス」。そしてお菓子とか焼いたりもしてみた。天火オーブンという超絶温度設定の難しいアナログ機を愛用中。その名も「ピース・ドメスティック・オーブン」名機だ。ヤバイでしょ。
欲2.性欲
ーソーシャルディスタンスを保つ必要がある現在、気軽にはスキンシップがとれなくなった。もちろんセックスも。「性欲」の行き場は?
3月末あたりから恋人以外触ってません。とはいえハグしかしてない。No Kissing。
コロナ禍でヨガと瞑想の時間が増えて、2月からラマダン(※)もしてたし(イスラム教徒ではない)、禁欲がエクスタシーになりつつある。ヤバイかな。ヤバイよね。まぁいいか。
※イスラム教徒の五つの義務である「五行」の一つで、イスラム教徒が断食を行う月。約1カ月間、日中の飲食を断ち、神の恵みに感謝する。
欲3.物欲
ーせっかく新しい洋服や靴を買っても、それを身につけて出かけることが叶わない今、「物欲」にはどんな変化が起きている?
今、欲しいものは、近所移動用のスケート・ボード(ロング)と、山小屋で薪割り用のハンドアックス(手斧)。どちらも未購入。あと、近所のフツーの花屋でお花とか気まぐれに買ってる。しかも今日はピンク。花の名前はよく知らない。ヤバくないよね。
欲4.知識欲
ー家の中で過ごす時間、一人で過ごす時間が多くなっている今、どんなことを知りたいと思い、インプットしている?
本
・ずっとディストピア小説を読み漁ってた。
・「華氏451度」レイ・ブラッドベリ
・「われら」エヴゲーニイ・ザミャーチン
・「動物農場」ジョージ・オーウェル
・「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック
映画
・「The Half Of It」
最近観た映画ではダントツなんだけど、邦題(「面白いのはこれから」)はなんとかしてほしい。
あと選書の仕事でビデオ通話を使って、日本中のいろんな人およそ100人弱にカウンセリングをしていたので、街場の情報収集(皆がどう生きてるか?など)はかなりできた気がする。
今後のアウトプットの一つとして、自分も含め、今のこの状況で思ってることや、やってることをZINEにしたらいいと思う。きっとヤバいのできるでしょ。
欲5. ○○欲
ーあなたが今抱えているそのほかの「欲」について聞かせて。
日々の瞑想と(先日他界した)猫との対話から、言葉を用いないこと、思念のようなものを他者と交信、交換できないか考えている。
言葉よりも正直で純心なコミュニケーションなので、そのあたりを言語化しないでどう可視化、感情化、放出、共有できるか、そんな謎の“欲”が高まっている。これはヤヴァい。