“デジタルハーバード”と呼ばれるスウェーデンのビジネススクールで学んだ、「自分を知るツール」|自分らしさの解体新書 Vol.2

Text & Photography: ユカ

2019.8.19

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こんにちは、ユカです。

前回からスタートしたこの「自分らしさの解体新書」は、「今の生き方に不満だ。もっと自分らしく生きたい。だけどどうやって自分らしさを見つけたらいいかわからない」、私も含め、そのような同じフラストレーションを持っている方達に、役立つ知識をお届けしていくためのシリーズです。

今回は私がスウェーデン留学中に学んだ、「自分らしく生きるための種を見つける」とても簡単だけれど、マスターすると全ての人生の側面で使うことができるとってもパワフルな思考方法「リフレクション」を紹介したいと思います。

スウェーデン留学中に「詐欺られた」と思った理由

「リフレクション」を学んだのは、今から3年前。私がスウェーデンにあるHyper Island(ハイパーアイランド)という、ビジネスデザインスクールに留学していた時だ。

データをどのようにクリエイティブに使うか?、そういうことに興味があった私は、世界で唯一そのようなプログラムを用意している、このストックホルムの学校へ留学を決めた。

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Hyper Islandという不思議な名前のこの学校は、「デジタルハーバード」なんて風に呼ばれたりするヨーロッパのクリエイティブシーンではなかなかの有名校でもある。そういうこともあって、私は在学中に実用的でテクニカルなスキルを身に付け、卒業後はヨーロッパで大きい仕事ができる会社へと転職できるように、日本で働いていた会社を辞め、スウェーデンへ単身引っ越したのだった。

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が、この学校に通い始めて数ヶ月後、正直言って「詐欺られた」という思いしかなかった。

なぜなら、この学校には実用的で具体的な「方法論を教えてもらうための」レクチャーが一切なかったからだ。

デジタルハーバードで勉強したことは全然デジタルじゃなかった

私が留学前に学校に期待していたのは、具体的な「方法論」を教えてもらうこと。

それはつまり、どのようなコードを書いてデータを抽出し分析し、それをどのようなデジタルツールを使って(例えばイラレやフォトショなど)クリエイティブなアウトプットに変えていくのか。

そういう「何をどうやってやればいいのか」というデジタルに関するレクチャーを期待して行ったのだが、私が1年半の留学を通してこのような「方法論」に関する授業は一つもなかった。

ある一つは除いては。

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それが今回紹介したい「リフレクション」という方法だ。

これはデジタルハーバートが私に教えてくれた、全くデジタルと無関係の、だけど絶対的に自分らしく生き・働き・学び続けるための「自分の感情観察ツール」だ。

「自分の感情の揺れ」の観察で深まる、圧倒的な自己理解と学び

では、リフレクションとはどういうものなのか?

それは「経験」によって生まれる「自分の感情の動き」を丁寧に観察することで、自分がどのようなことが好き・嫌いで、どのような人間なのか、ということを頻繁に理解し整理するための思考方法だ。

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Hyper Islandでは前述したように「何をどうやってやればいいのか」というレクチャーが一切ない代わりに、学校からプロジェクトが与えられる。生徒たちはチームを創り、自力で方法論がわからない中プロジェクトを完成させていくのだ。

このようにプロジェクトを前にして混沌とした状態で、行うのがリフレクションで、下記のような順番で自分自身に質問を投げかけることで、自分の感情を観察し、自己理解を深め、その理解を自身の人生にどう生かしていきたいか考えることができる。

[リフレクションの一連の流れと実施情報]

1. What do I feel? What’s on my mind?

自分が今何を感じているか、どのような感情が心の中にあるのか、感じて書き出す。

2. What affected me the most?

どのような事象が今感じている感情を生み出したのか探り、その事象が自分にとってどのような経験だったのか振り返り、書き出す。

3. What did I learn about myself?

その特定の事象が自分に与えた感情を理解することで、自分がどのような性格・特徴のある人間なのか、自分自身についての学びを書き出す。

4. What did I learn about others?

その特定の事象が他人の行動に与えた影響を振り返り、他人(多くの場合プロジェクトメンバー)についての学びを書き出す。

5. How will I apply this learning to my life?

この自分と他人についての学びを、今後の人生にどう生かしていくのか、具体的な方法を書き出す。

わかりにくいと思うので、私が在学中に行ったリフレクションの例を出すとこんな感じだ。

1. What do I feel? What’s on my mind?

少しイライラしている。気分が落ち込んでいる気がする。

2. What affected me the most?

今日のプロジェクトに取り込んでいる最中に、チームメンバーが自分より多く休憩をとるところを見て、少しイラっとしたような気がする。だから今のこのネガティブな感情は、この事象に起因している気がする。

3. What did I learn about myself?

私には、日本の会社で働いていた時に常識だった厳しい労働規律があって、知らず知らずのうちに、同等の規律を他人にも求めてしまう傾向があるのかもしれない。

4. What did I learn about others?

私のチームメンバーは、私の労働規律に合わせようしたり、合わせていないことへの罪悪感は特に抱いていないように見える。「自分の規律は、誰かに合わせるのではなく、自分自身で決める」といった哲学を持っているのかもしれない。

5. How will I apply this learning to my life?

ユルい労働規律であっても、チームメンバーの生産性が高いのであれば、私は無駄にイライラする必要はない。自分の価値観と合わない人にイライラするのは私の人生にネガティブな感情をたくさんもたらすので、「人は人、私は私」と常に自分に言い聞かせる必要がある。

リフレクションで「自分らしさの種」を見つける

リフレクションで自分がどのようなことに楽しい・イラつく・嬉しい・悲しいの気持ちを示すのか。それが徐々に理解できると、自分への理解が深まり、自分らしさの種が見つかりやすくなるのだ。

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留学して1年経った頃、私はリフレクションのパワーを実感するとともに、やっとこの学校がデジタルハーバードと言われる所以がわかった気がした。

様々な領域でテクノロジーが必要とされる今の時代、個人が知るべきことは「どうやってプログラミングをするか?どうやって使いやすいデザインのデジタルプロダクトを作るか?」そんなプラクティカルな知識はあまり重要ではない。

本当に必要なのは、「自分は何を作りたいのか?」という、自分の中にだけ眠る「自分らしい自己動機」に向き合うことだ。

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きっと「自分が本当に何をやりたいのか」を見つけられた人は、実現のための知識修得なんて、ググったり、YouTubeのHow to動画を見れば簡単にできるはず。

だからこそ、この学校では授業や先生から小手先の知識を学ぶことよりも、「自分自身に徹底的に向き合うこと」を教えているのだ、と。

1週間に30分。リフレクションタイムのススメ

1年半のスウェーデン留学ですっかりこのリフレクション習慣を身につけた私は今、ことあるごとに自分の感情を観察しまくっています。

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それは仕事の場面だけに限らず、友人・パートナーとの関係、または個人で過ごす時間など。様々な場面で自分の感情を丁寧に観察していくことで、自分のポジティブな感情を増幅させ、ネガティブな感情を排除するためのヒントを見つけ、それに沿って自分らしく人生をデザインしていくことができるからです。
毎日仕事や楽しい予定に溢れ、スケジュールをこなしていく日々の中。30分だけ、1週間に一回、自分の感情を観察するリフレクションタイムを是非設けてみてください。この時間の積み重で「自分らしさの種」が見つかると信じ、私も現在進行中で実践しています。

次回は私がパリの代理店時代に学んだ「転職トライ&エラーで自分らしさを試し続ける方法」についてお話したいと思います。

ユカ

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東京とパリで活動するFreelance Humanity-centered Strategist。 人間らしさが個人・社会・環境レベルで宿る生き方を探り、発信し、プロジェクトとして色々形にしています。

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