自分らしさへの貪欲なる追求は、“自分に素直になること”から始まる。フランスで学んだ「心の余白の作り方」自分らしさの解体新書 Vol.3

Text & Photography: ユカ

2019.8.28

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こんにちは、ユカです。

前々回からスタートしたこの「自分らしさの解体新書」は、「今の生き方に不満だ。もっと自分らしく生きたい。だけどどうやって自分らしさを見つけたらいいかわからない」、私も含め、そのような同じフラストレーションを持っている方達に、役立つ知識をお届けしていくためのシリーズです。

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今回は、私がパリの代理店で働いていた時代に学んだ「転職で自分の気持ちに正直になる方法」について。

私は今年の春まで約2年ほどOgilvy & Mather(オグルヴィ・アンド・メイザー)という広告代理店のパリ支部で働いていたのですが、この会社にいる時にフランス人の凄まじい「自分らしさへの貪欲なる追求癖」を目の当たりにし、自分らしさを考えるために重要な時間となったので、そのことを今日はお話させてください。

入社5ヶ月後にチームの半分がいなくなる。パリの広告代理店時代

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私がこの会社にジョインしたのは2017年9月。ストラテジック・プランナーという肩書きで、広告や企業のマーケティング活動に関する戦略を決め、その戦略をクリエイティブ部署の方々と一緒に制作物に落とし込むため仕事をしていました。

メインのクライアントはスイスの企業Aとイタリアの企業B。ともに多国籍企業であったので、私のチームも様々な国の人々で構成されていましたが、80%程度はフランス人という環境。

働いて数ヶ月。ようやくチームメンバーの性格や仕事のやり方ががわかって、自分が相手から求められていることを理解し始め、仕事が格段にやりやすくなってきた時。この「やっと慣れてきた時」に突然、企業Aでこの数ヶ月仕事をともにこなしてきた同僚2人は言うのです。

「ユカ、私たち来月末でやめることなったんだ。転職することにした」

2人同時にやめるのってあり得るの?という私の驚きに反して、企業Aのチームから2人減り、更に数ヶ月後にはまた2人転職でいなくなり。最終的に、7人から始まったチームはたった5ヶ月で4人にまで減った。

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会社の同僚と

幾ら何でもこれは特例に違いないと思う私の予想とは裏腹に、もう一方の私が所属する企業Bのチームも6人から始まり、5カ月後にはたった2人に。

広告という変化が激しい業界柄、ひょっとすると私が経験した例は極端かもしれない。だけど本当にフランス人、特にミレニアル世代は軽々と休日のプランを決めるように転職をもやってのけるのだ。

「自分らしさへの貪欲なる追求」は「その時の気持ちに素直に生きる」ことから始まる

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30才を目前に4回転職をしている私が言えたことではないかもしれないけれど、この怒涛なる転職劇の波に飲まれ、それなりに疲弊したパリの代理店での2年間。苦労もあったが、私はフランス人からとても大切な「自分らしさ」についての教訓を得た。

それは「常に自分の気持ちを適切に感じ取れる“心のスペース”を確保することで、感情を自由に表現できるようになり、それによって自分らしさを次々に軌道修正していくことができる」ということだ。

フランス人というかパリジェンヌは、そのシックで洗練されたイメージが先行されがちだが、はっきり言って私は、彼らはかなりのいわゆる「ラテン気質の持ち主」であると思っている。

嫌いはキライ、好きはスキ。つまらない時は果てしなくツマラナイ顔をして、怒りは喧嘩にならないレベルで相手に正しく伝え、発散する。楽しい時間は年齢関係なく飲み踊り狂う。

私がパリで暮らし仲良くなったパリジェンヌたちは、私生活だけでなく、仕事場でも自由に自分の感情を感じ、表現する人たちだ。

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クライアントに対してもイヤはイヤ、ダサいはダサい、と不満は表情で徹底的に伝える。微妙なアイディアが会議で発表された時は明らかな「それつまんないよ」と言う顔で私に改善を求める。そういう「その時々の感情を素直に感じ、表現する人たち」だ。

「感じるべきこと」を感じるために、「心の余白」を確保するパリジェンヌ

彼らはそのように「素直に感情を感じ、表現すること」を公私共に徹底して行っているわけだけれど、それはただむやみに感情を爆発させていることとは違うように見える。

心の余白ー「感じるべきこと」を感じるための「心のスペース」を確保し「内省の時間」をしっかりと日常で確保することによって、自分の哲学を作りあげ、それに反すること・一致することを、そのまま素直に感情として表現をしているようなのだ。

パリという大都市に住みながら、よく目にする光景。それは、カフェで本をゆったりと読んでメモをする人、公園で物思いにふける人、1人散歩をしながらなにやら考えごとをしている人、晴れた日に公園でただなにもせずに寝転んでいるカップル。

パリの代名詞のようなこれらの日常風景は、パリジェンヌたちが「心の余裕」を確保するために個人で行なっていることなのだ。

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このようにパリを認識するようになってから、私はなぜフランス人があっという間に転職していくのか、その理由がわかった気がした。

彼らは自分が「感じるべきこと」を感じる内省の時間をちゃんと確保し、その内省から掴んだ「自分の哲学」を公私共に相手への感情として自由に表現する。自分の哲学と一致しないことは潔く改善し変革するための行動に移し、自分の哲学と近いワクワクすることは次々と増幅していく。そんな思考で、まるで休日のプランを決めるように自由に、そして素直に転職を繰り返していくのだ、と。

「なにもしない」を恐れない

自分の感情を素直に感じるために。そして、その感情を自由に表現をするために。

パリの日常に溢れるようにただぼーっと、自分の思考を整理し、自分の感情から哲学を醸成するための「なにもしない」時間はとても大切だ。

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だけど、「なにもしない」という内省のための時間や場所は、忙しい東京に住んでいる限り、自分で意図的に作らないと絶対的に日常には生まれない空間なのも事実。
 
常に動き、自己鍛錬し、自分の目標に向かって突き進む。友達が多いこと、みんなから好かれることがステータスの忙しい大都市での生活で、自分と向き合う「なにもしない」時間を設けるのは一時停止的なネガティブな印象すらあるかもしれない。

だけど「Yes means No」なのだ。

ネットワーキングに「Yes」と言うことは自分と向きあうことに対して「No」と言っていることでもある。目標追求や情報収集に追われ心の余白を持たないことは、「自分らしさ」を見つけるヒントをくれるための時間に「No」と言うことになる。

「なにもしない」ができる場所がほとんどない都市生活の中で、「心の余白」を確保し「感じるべきこと」を感じられるように。一人、自分自身とゆっくり向き合うことをポジティブに捉えられるような強さを持っていられるように。

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パリから東京に戻ってきて、ちょうど1ヶ月が経とうとしている今、私はこのような意識で「自分らしさ」を探し軌道修正し続けるために「なにもしない時間と空間」を確保しようと試行錯誤しています。

ぜひ、今回のエピソードに共感して頂けた方がいたら、「なにもしない」を恐れず、意図的にそのような時間と空間を作ってみてください。きっとそのような時間の積み重ねで、自分のバックボーンになるような哲学がじわじわと醸成され、感情を素直に感じ表現できるようになり、自分らしさへの行動作りを軽々と行えるようになっていくのだと私は信じています。

次回はこのシリーズ最終回となる「自分らしさを形作るための言葉集め」の方法についてご紹介します。

ユカ

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