「冬は日本よりも寒いし、鬱々と暗い」。それでも“生きるのが楽しい”と感じられる国、スウェーデン|スウェーデンで日本人として生きることとは VOL.1

2018.1.4

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スウェーデンと聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか?IKEAやH&Mなどのグローバル企業、社会保障制度が充実している、ジェンダー間格差が他国と比べて小さいなどのポジティブな印象を持っている日本人が大半かもしれない。

だが、そんな「先進的で憧れの的」というイメージが強いスウェーデンで実際に生活すると、どんなことが見えてくるのか。また、スウェーデンなど北欧諸国は「北欧」というカテゴリーで一括りにして語られることが多いのも事実。これについてはどう考えたらいいのだろうか。

Be inspired!は今回、スウェーデンに住んだことのある若者6人にインタビューを実施。彼らにはスウェーデン事情に加え、日本がスウェーデンから学べることはあるのかを聞いてみた。本記事ではその回答の前編を紹介していく。

片波見 せるさ(学生、24歳)

Photo by 撮影者

ーどれくらいスウェーデンに住んでいますか?

住み始めて今年で3年半になります。

ースウェーデンのどこに住んでいますか?そこはどんな場所ですか?

スウェーデン第二の都市Göteborg(ヨーテボリ)に住んでいます。西海岸に位置する、自動車メーカーVolvo(ボルボ)の生まれた地です。

ースウェーデンで何をしているのですか?

大学院で、日本とスウェーデンの茅葺き民家と野外博物館について調査しています。

ースウェーデンの好きなところは?

一言でいうと、感性豊かに過ごせるところでしょうか。日の長い夏には、海や湖で泳いだり森でキイチゴやキノコを摘んだりして過ごし、寒く暗い冬には、コーヒーやビールを片手に友人と様々なことについて語り合って過ごします。子ども、働いている人、男性であろうと女性であろうと、みなに生活を楽しむ権利が保証されています。

また、ここの人たちはさまざまな出身地や家族構成、恋愛観、仕事や勉強における経験を持っているので、話していておもしろいです。素朴な毎日ですが、生きていて楽しいと思えるのでスウェーデンが好きです。

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ースウェーデンの嫌いなところは?

移民局や大学などの仕事が遅いこと。お菓子や食べ物の種類が少ないこと。冬の鬱々とする暗さ。

ースウェーデンで「日本人だから」「アジア人だから」などの理由で差別を受けたことはありますか?受けた場合、それはどんなものでしたか?

ないです。6人に1人が外国生まれ(2015年、Statistics Swedenのデータ)というスウェーデンにおいて、差別は敏感なトピックです。私の住むヨーテボリでは、差別的な言動は「レイシストだ」と厳しく非難されます。しかし、田舎では移民に対する反感が高まっているようです。

ー日本がスウェーデンから学べることはなんでしょうか?

性のあり方や移民に対する支援、ワークライフバランス、政治教育など、たくさんあります。

ースウェーデンが日本から学べることはなんでしょうか?

生徒が自分たちで学校の掃除をすることや、公共交通機関が時間通りに動くことは、スウェーデン人が日本から学びたい点だとよく聞きます。

ースウェーデンなど北欧諸国が「北欧」と一括りにして語られがちなことについてどう思いますか?また一括りにして語られがちなのはなぜでしょうか?

特になんとも思いません。社会制度や気候風土は北欧の国々で共通していることが多々ありますから。「スウェーデンでは、」と言うことだって、カテゴリー化です。括ってもいいけれど、そのあとでほぐすことが必要だと思います。

片波見さんの運営する、ヨーテボリの街や美術館、スウェーデン料理のレシピ等を紹介していくブログはこちら

Tami(23歳、マーケター、ときどきエディター)

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ーどれくらいスウェーデンに住んでいましたか?

約10ヶ月間。

ースウェーデンのどこに住んでいましたか?そこはどんな場所ですか?

ヨーテボリというスウェーデン第二の都市です。

ースウェーデンで何をしていましたか?

学生として留学していました。

ースウェーデンの好きなところは?

自分が自由でいられるところ。私自身、意見や好き嫌いがはっきりしているせいか日本では「とがってる」なんて言われたり、政治や経済の話をしたくても「お堅い話」だから話せないような雰囲気があったり、そもそも空気を読むのも苦手だったり、日本での生活は窮屈なことが多くて。でもスウェーデンに行ったら正反対だった。むしろ自分よりも主張が激しい人や過激な話をする人ばかりで本当におもしろかった。

あとは挨拶としてハグするところ。最初は抵抗あったけど、本当に仲良くなれてる感じがして心地いい。ジェンダーの差別が少なく、男だから・女だからみたいな議論もないところも最高。

あとはfika(フィーカ)の文化が好き!フィーカは「お茶をする」という意味だけど、「友人や家族と過ごす大切な時間」や「プライベートを大切にする空間」など、もっと深い意味があります(彼女が書いたフィーカについての記事はこちら)。好きなところはたくさんあります!

ースウェーデンの嫌いなところは?

日が短くて暗いところかな…。あとは料理がつまらないところ(笑)

ースウェーデンで「日本人だから」「アジア人だから」などの理由で差別を受けたことはありますか?受けた場合、それはどんなものでしたか?

何を差別ととらえるかによると思うけど、私は特に感じませんでした。ときどき、日本語で話していると人から「ニーハオ」って言われることはあったかな。どちらかというとスウェーデン人だと思われてスウェーデン語で話しかけられることが多くて困ってました。

ー日本がスウェーデンから学べることはなんでしょうか?

個人をありのままに認めること。たとえば、同じ寮にトランスジェンダーの友人がいたとき、SheかHeのどちらで呼べばいいか迷った。でもスウェーデン人の友達はみんな疑問に思うこともなくSheと呼んでいた。だってその子は女の子と自認しているのだから。Simple as it is. 日本でもそういう空気感ができてくるといいなあ。

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ースウェーデンが日本から学べることはなんでしょうか?

謙虚さとか丁寧さ、思いやりを持つ姿勢。たとえば、意見が強いあまり自分が絶対であるような態度が気になったかな。相手のことを尊重しつつ優しさをもって接する日本人の姿勢は美しいと思う。

あとは料理の多様性かな(笑)塩味が強く味が単一になりがちな食事メニューが多くて、日本食に慣れているとつまらなく感じてしまう。

ースウェーデンなど北欧諸国が「北欧」と一括りにして語られがちなことについてどう思いますか?また一括りにして語られがちなのはなぜでしょうか?

一括りにされがちなのは、国も近いし言語や文化に共通点があるから。でも国によって空気感や固有のものに違いはあるから、似て非なるものなのです。極端な話、北欧まとめることはアジアを一括りにして認識することと同じような気がします。だからまとめてしまうのは違うんじゃないかなって感じています。

黒坂 謙太(23歳、会社員)

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ーどれくらいスウェーデンに住んでいましたか?

2014年8月から、2015年6月までの10ヶ月間。

ースウェーデンのどこに住んでいましたか?そこはどんな場所ですか?

Ljungskile(ユンシーレ)という、人口3,000人ほどの小さな町。「海と山が出合う場所」というキャッチコピーを持っていて、その名の通り景色が美しいところ。

ースウェーデンで何をしていましたか?

語学留学。

ースウェーデンの好きなところは?

一人ひとりがさまざまなトピックに対し、考え、意見を持つことが求められているところ。また、それを各々が表現し、受け入れようとする姿勢。

ースウェーデンの嫌いなところは?

暗い冬。「この国に生まれていたらな」という嫉妬心のようなものを生み出させるところ。制度的に違和感を感じる部分もないことはないけど、それはすべての国が持っているはずなのでカウントしようと思わない。

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ースウェーデンで「日本人だから」「アジア人だから」などの理由で差別を受けたことはありますか?受けた場合、それはどんなものでしたか?

小さい子から「中国人じゃん」みたいな冷やかしを受けたことはある。大人からはなかった気がする。スウェーデンは移民の多い国なので、一般的に、顔かたちや肌の色のことでどうこう言っているとキリがないという側面や、多様性を是とする風潮はあるように感じた。

ー日本がスウェーデンから学べることはなんでしょうか?

政治的な透明性は与えられるものではなく、与えるものだという観点。自分(たち)にとって本当に大切なものは何なのか、その大切なものの近くにいられるようにするために国や自分には何ができるのか考える姿勢。

ースウェーデンが日本から学べることはなんでしょうか?

多様な食生活は、食料自給率が低くても実現できるという事実。

ースウェーデンなど北欧諸国が「北欧」と一括りにして語られがちなことについてどう思いますか?また一括りにして語られがちなのはなぜでしょうか?

仕方ないと思う。愛媛県出身の自分からすれば、だいたいの日本人が「四国」を一括りで考えるのと同じ。 北欧諸国は、一国一国を見ると面積も経済規模もさほど大きくないし、ざっくり似ている側面も多いから、「とりあえず」まとめてとらえると便利なのだと思う。

黒坂さんが運営に携わる、非営利団体運営ウェブマガジン「北欧ヒュゲリニュース」はこちら

どうすれば「生きているのが楽しい社会」を作り上げられるのか?

スウェーデンには充実した社会保障制度だけでなく、特に都会ではジェンダーや文化的バックグラウンドの多様性が受け入れられている。また、政治など日本では堅いと思われがちな話題もざっくばらんに話せるような環境があるなど、人を惹きつける先進的でポジティブな面が確かにある。

インタビューした若者たちの回答にもあったように、「生活を楽しむ権利が保証」されていることや、プライベートを大切にする「フィーカ」の文化があることなど、人間的な生活を楽しみながら過ごすことに重点が置かれているようなのだ。

だが、そのような社会を作りあげることができたのは、自分の考えや意見を持つべきとされる土壌があったからかもしれない。それがあってはじめて、人々は自分たちにとって心地よい暮らしを手に入れる機会が得られる。日本がスウェーデンから学べることをまず一つ挙げるなら、そんな土壌を作ることではないか。

後編はこちらから。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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