SEXと戦争。70年代のぶちあげ映画ヒストリー&冬休みにオススメしたい映画リスト|Jo’s Cinema Talk 004

Text: Jo Motoyo

Artwork: moka

2020.12.24

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激動の2020年も、もう終わりですね。
みなさんいかがお過ごしですか?

最近、年末特集系のインタビューなどに答えさせてもらうのですが、どこも今年の総括的な内容で、答えるのがとっても難しかった….。

「今年だからこそ成し遂げられたこと」とか「来年の抱負」とか。
いや〜むずい!(笑)

今年の総括としては、コロナによって色々なことがあったけど、なんだか対岸の火事を眺めているような気持ちがどこかあったというのが素直なところでした。

みなさんの今年の総括は何ですか?

こんにちは、Joです。

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明日はクリスマスということで、ちょっと映画史の時代の流れと反してしまいますが、今回は最後の方にクリスマスにおすすめの映画と、お正月休みにのんびり観れる映画たちを紹介しますね!

やっと1970年代になったので、今回からちょっとお勉強モード終わってエンタメモードです!やったー!

ぶちあげ映画登場

前回を読んでくれた方はわかったかもしれませんが、1940年〜1950年代は世界各国の映画業界が力をつけていったので、アメリカのハリウッド映画の勢いがなくなった時代でした。

そこへ現れたのがぶちあげ映画監督の3人。

ジョージ・ルーカス
スティーブン・スピルバーグ
フランシス・F・コッポラ

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この3人が現れたことにより、ハリウッド業界が経済的に潤い、ニューハリウッドという新しいハリウッドの歴史が出来ました。

映画史に残る実績を作った人たちが全員生きてるって凄くないですか?
映画の歴史って本当に始まったばかりなんだと感じます。

フランシス・F・コッポラは当時の興行成績を塗り替えるほどの大ヒット作品だった『ゴッドファーザー』を制作し、衰退していたハリウッド業界をぶち上げました。

同作、めっちゃくちゃ面白いのですがPart1から3まであって、全部観るのに約9時間かかるので(PartⅠが177分、Part Ⅱが200分、Part IIIが161分)正月休みにでも一気見してほしい作品です。

フランシス・F・コッポラは同じく映画監督のソフィア・コッポラのお父さんで、娘を『ゴッドファーザー』全シリーズに出演させています。

ちなみに『ゴッドファーザー』で有名な結婚式から始まるオープニングシーンは黒澤明の『悪い奴ほどよく眠る』のオープニングシーンに影響を受けたそうです。この歌っている歌手は、当時マフィアとの親交が深いと言われていた歌手・フランク・シナトラがモデルと言われています。

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当時の興行成績を更に塗り替えたのがスティーブン・スピルバーグの『ジョーズ』。
実際の野生のサメが人間に襲いかかることってまず無いらしいのですが、このジョーズのせいで”サメは危険”という認識が出来てしまったとも言われています。

この月に座って釣りをしている少年のロゴ、映画の前に見かけた事あると思うのですが、これ、スピルバーグが創立した映画製作会社Dream Worksのロゴなんです。

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スピルバーグは月と子どもが好きなんだなぁ…

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そしてスピルバーグが制作したジョーズの興行収入を更に塗り替えたのが、ジョージ・ルーカスが制作した『スター・ウォーズ』でした。

ジョージ・ルーカスはアメリカで最も裕福なセレブ1位。(2位はスピルバーグ)
ジョージ・ルーカスは映像の監督収入の増額を拒み、代わりにスター・ウォーズ関連グッズを製作する権利を持ちました。作品を大切にしたいという気持ちがあったんだろうなと推測していますが、そのお陰で多額の収益を得ました。

ほとんどのお金を自身が経営しているルーカス・フィルムに注ぎ、本人は質素な生活をしているらしいです。

また、ジョージ・ルーカスがフランシス・F・コッポラと一緒にアメリカン・ゾエトロープ社という映画制作会社を起業しています。ゾエトロープ、連載第1回で触れましたね!映像の原型と言われているあれです。

スピルバーグとジョージ・ルーカスは親交があり、お互いの作品に自分の作品を出しています。『E.T』のハロウィンシーンに『スター・ウォーズ』のキャラクターであるヨーダが居たり、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』ではE.Tが登場しています。

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この映画界をぶちあげた3人の監督たちに交流があって、お互いの映画製作に影響を与え合っていたと思うと、非常に感慨深いです。一人でムーブメントは作れないから、クリエイター同士が横で繋がって手を取り合ってムーブメントを作っていく。

個人的には「みんなで手を取り合ってムーブメントを作り上げる」ということが、今後の映像業界全体にとって本当に大事なことだと思っています。(映像業界だけでなく、どの業界にも当てはまると思います)

ちなみにスター・ウォーズの撮影はチュニジア南部のリビアとの国境地帯砂漠地帯で行われたのですが、映画のセットが軍用車両とリビアの人たちに誤解されてしまったことにより、チュニジア政府からセットを解体し国境を離れるよう要請されたそうです。

確かに、スター・ウォーズってセットが巨大すぎるし SFすぎて、軍用の何かと勘違いしてしまいそうですよね。

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映画における性描写の全面解禁

映画はSEXと戦争と相性が良いと言われています。
連載第2回でも触れました映画館の原型とも言われているキネトスコープで当時の人々が見ていたのもソフトポルノでした。

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キネトスコープ

1970年代には映画の検閲が緩和されて、映像の中でも大胆な性描写が可能になりました。

リンダ・ラブレース主演の『ディープ・スロート』が大ヒットし、『ラストタンゴ・イン・パリ』など、もう映画の中で普通に過激なSEXをしているという描写が大胆に描かれる作品が登場しました。

ちなみに『ラストタンゴ・イン・パリ』はTSUTAYAなどに行けばわりと苦労せずに見つけられるのですが、「ディープ・スロート」の方は見つけるのが非常に困難な印象です。私はまだ観たことがありません。
代わりに、リンダラブレースの自伝的映画『ラヴレース』は2014年公開と比較的新しい映画なので、TSUTAYAでもAmazonPrime(Wowowを経由)でもご覧になれます。

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主演のアマンダ・セイフライドがとても可愛いですが、女性的には胸をえぐられる作品でした。

また1970年代は日活ロマン・ポルノが登場しました。
ロマン・ポルノとは映画の中に必ずSEXシーンがある劇映画のことをさします。ピンク映画とも呼ばれています。

新宿や上野に有名な劇場がいくつかあり、ロマン・ポルノを映画館で観ることができるのですが、私は残念ながらまだ行ったことがありません….。

1970年代当時のロマン・ポルノはNETFLIXオリジナル作品「全裸監督」でも描かれていたように、いわゆる本番ではなく、演技としてのSEXだったようです。
いま映画館で上映されているロマン・ポルノは本番なのだろうか….。それをみんなで一斉に観ているという一体感は一度味わってみたいです。

ロマン・ポルノ出身の著名な映画監督って実は多くて、「愛のむきだし」の園子温監督や、「セーラー服と機関銃」の相米慎二監督もロマン・ポルノ出身の監督だったりします。

ロマン・ポルノは制作日数も短く、次々に新しい映画を制作していくので、若手の映画監督にも監督としてのチャンスを与えてくれるような場所としても機能していて、ときおり仕事をご一緒する身近なスタッフさんの中にもロマン・ポルノ出身の方がちらほらいたりします。

と、いうことで性と映画の相性について書きましたが、個人的には夢と映像の相性も抜群に良いと思っています。

黒澤明監督とスピルバーグ監督の共同制作の作品のひとつに、その名も『夢』という作品があるのですがこれは黒澤監督の身近な人達が実際に見た夢を映像化したオムニバス作品です。

クリストファー・ノーランの『インセプション』も夢をテーマにしているので、見比べてみるのも面白いかと思います!

CGとSF

わたし、小さいころの夢が”魔法使いになる”だったんですけど、大きくなって魔法使いにはなれないことに絶望し、映像の監督になったら映像の中だけでも魔法が使えるかなと思って志しました。魔法的なCGやVFXを使うような資金的に恵まれた大作はまだできていませんが、いつか作りたいです。

マイクロソフトとアップルが家庭用PCという概念を1970年台に作ったことにより、1980年あたりになるとCGの技術が格段に上がり、映像業界に革新をもたらします。

1982年に製作された『トロン』は映画史で初めて実写と3DCGの合成に挑戦しました。
いま観るとめっちゃゲーム画面みたい。

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ちなみに1989年に製作された『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』のこちらドノヴァンが急激に老け込んでいくシーン、トロンと比較すると本当によくできていますよね。たった7年なのに、ものすごく技術が躍進的に急発展しているの感じます。

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2018年に公開された『レディプレイヤー1』公開当時スピルバーグは齢70歳。あんなイケイケなフルCGの作品が作れるなんて….気持ちが若いし本当にエネルギッシュな作品だと思いました。

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この『レディプレイヤー1』の制作過程を見ていると、どれほどCGが多用されているのかよくわかります。本当にフルCG….。

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クリスマスを映画と一緒に過ごす

私は大人になってから、基本的には映画とクリスマスを過ごしています。

映画は寂しいときも楽しいときも私たちに寄り添うからね!

ということで、映画史の流れに沿ったクリスマスにおすすめの映画をご紹介させてください!

『ファンタジア』(1940)

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ディズニーの大傑作と言われる本作。小さい頃に観た方も多いのではないでしょうか?
クリスマスの日に本作を家族で観ながらディナーとか素敵ですね。
先日、子どもがいるお友達の家で観たら、大人の方が盛り上がって、子どもは全く興味を示さずでした(笑)。

『戦場のメリークリスマス』(1983)

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こちらは夏の設定で、クリスマスをあまり感じない本作ですが、坂本龍一さんのあの名曲が聞けます。そして坂本龍一さんご自身も出演していますし、全盛期のBOWIEとビートたけしさんが観れます。内容的には戦争捕虜になった軍人と、それを監視する軍人の話なので、いささかヘビーストーリーで決して観やすいわけではないですが、ラストが「くぅ〜っ」となります。

『グレムリン』(1984)

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スピルバーグが総指揮をとった本作。ただただギズモがめちゃくちゃに可愛いし、めちゃくちゃにクリスマスを感じます。私もモグワイが欲しい!!(笑)

ちなみにスピルバーグは早撮りで有名で、香盤(撮影スケジュールという意味の業界用語)通りに撮影し、時間ぴったりに撮り終えるらしいです。
それゆえ多作とも言われていて、全盛期はほぼ1〜2年の間に1本は必ず撮影し、その合間に別作品の総指揮もしています。本当にエネルギッシュ。

『フランケンウィニー』(1984&2012)

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ティム・バートンがディズニー在籍時代に作った短編映画、フランケン・ウィニー(1984)。日本語字幕ないですがこちらで観れます。35分のショートムービーです。
実は本作、フランシス・F・コッポラ監督の娘、ソフィア・コッポラ監督が少しだけ登場しています。ソフィア監督がまだティーンエージャーだったころと思われます。ぜひ探してみてください。

『フランケン・ウィニー』(1984)をリメイクしたのが『フランケン・ウィニー』(2012)

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2012年にリメイクされた『フランケン・ウィニー』はストップモーションアニメ(人形を使ってコマ撮り撮影された映像のこと)としては初めて3D上映されました。
クリスマスとはお話が関係ないのですが、「少年の身にミラクルが起きる」みたいなキラキラ体験にちょっとクリスマスを感じるので、おすすめさせて頂きます。

『東京ゴッドファーザーズ』(2003)

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クリスマスに、ゴミ山から赤ちゃんを拾ったホームレスたちのお話。今は亡き今敏監督が描いたちょっと寂しくてちょっと可笑しいミラクルクリスマスストーリーです。
今監督は本当に本当に本当に残念ながら46歳で亡くなってしまったので、あまり作品数が多くはないのですが、その作品のどれもが最高に面白い…..お正月に一気見したい今敏監督作品もこのあとに載っているので、ぜひ読み進めてみてください。

『タンジェリン』(2015)

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ちょっとだけマイナーな作品ですが、クリスマスイブにトランス・ジェンダーの娼婦二人が彼氏の浮気相手を探してLA中を駆けずり回るという作品です。こちらまさかの全編iPhone5s撮影。映画の中で次々に問題が起きるし、主人公2人の会話が面白くて最後までスカッと見れちゃいます。
ショーン・ベイカーという監督なのですが、この『タンジェリン』が評価されて作った『フロリダ・プロジェクト』(2017)という作品でも一部分だけiPhoneで撮影した箇所があります。
クリスマスに『タンジェリン』、お正月休み『フロリダ・プロジェクト』と二作合わせて観てみるのも良いと思います!
個人的にとても好きな監督です。ぜひ観てみてほしい…!!!

『ビル・マーレイ・クリスマス』(2015)

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こちらはソフィア・コッポラ監督がネットフリックスオリジナル作品として制作した映画です。クリスマスの夜に、とあるホテルでビル・マーレイが豪華なゲストに出くわして、一緒に歌う、みたいなチルな映画です(笑)。
なんかあんまり難しいこと考えたくないな…っていう、ゆったりしたクリスマスを過ごしたい方におすすめです。

お正月は映像パラダイス

続けてお正月休みは一気見できる作品を紹介します!
もう私はお正月はずっっっっと映像を観ています。
至福の時間すぎる。お正月最高。今から楽しみ。

毎年、わたしのInstagramストーリーでお正月に何を観たかなどを気まぐれに投稿したりしているので、もし気になる人はのぞいてみてください。暇なお正月を一緒に映像観ながら過ごしましょ!
あと毎年、大晦日に今年観たベストファイブ映画などもInstagramのストーリーにて紹介しておりますので、気になる方はぜひ大晦日、チェックしてみてください。

ちなみに私は1日に5本とか、起きていられればもはや何本でも映画/映像を観れるのですが、これを周りに言うとびっくりされます。

「映画は体力を使う」とか「映像は目が疲れる」っておっしゃる方多いのですが、監督の私が言うのもあれなのですが、映像なんて流し見で良いと思っています!景色の一部として観ていれば良い!(笑)
頭を使う必要もないし、邪道かもしれませんが疲れたら途中でも普通に再生ボタンを停止してお散歩でもすればいいって思っています。

映像は最後まで観る必要は無いんです。

と、色々言いましたが、映画史の中でご紹介出来なかったけどぜひ観て欲しい作品や、お正月に家族で観れる作品、見直したい作品、一気見したい作品、ダラダラしたいお正月にぴったりの作品などをここでご紹介します!

『妄想代理人』

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クリスマスでも紹介した今敏監督のアニメシリーズ作品です。複数の主人公がいるような作品を”群像劇”というのですが、群像劇アニメの本作、ミステリー要素もあって、途中でやめられない中毒性があります。くせになってしまうので、お正月に一気に観るのがおすすめです。
ネトフリやHuluに加入している方は貼り付けたYouTubeリンクではなく、ぜひ高画質でご覧ください。

『ツイン・ピークス』(1990)

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こちら2017年に続編がネットフリックスで公開されたので、一時話題になりましたよね。
残念ながらDVD以外でご覧になることが出来ないのですが、ぜひとも観て欲しい一作です。小さな田舎街ツイン・ピークスでおきた、一人の美少女高校生の謎の死。その死を街の重要人物たちが探る、という物語です。サスペンスなのに、どこかコミカルでロマンティックで可愛い本作。登場人物がとにかく個性的で、本当に面白いんです。ただ、素敵な登場人物がとても多いので、間隔をあけて観ると何がなんだかわからなくなってしまうので、一気見がおすすめです。

『劇場版 ムーミン谷の彗星』(2015)

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ムーミンが「彗星が落ちてくるかもしれない」という噂を確かめに旅に出るというお話なのですが、劇中の台詞がとにかくエモーショナルでぐっと来てしまう本作。「どうせ死んじゃうならママに会いたい」とムーミンが言ったりするのですが、ムーミンってそういうこと言うキャラクターなんだ….と普通にびっくりしたりします。スナフキンが人間じゃなく妖精というのも個人的にはびっくりしました(笑)。
最後は拍子抜けするくらい良い感じに終わるので、どんな感じにお話が終わるのかぜひ見届けて欲しいです。お正月に家族と一緒に安全なこたつから、ムーミンの大冒険を観る、みたいな、ほっこりお正月を過ごしたい方におすすめです。
そしてエンディングの曲をビョークが歌っています。豪華…

『Happiness is:スヌーピーと幸せのブランケット』

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観たことある方もいるかもですが大人になって見直すと、はっと気づかされる本作。
ブランケットがないと安心出来ない“ライナス”が主人公で、周りのキャラクターたちが「そろそろ大人にならなくちゃ」とライナスのブランケットを取り上げるストーリーなのですが、最後にライナスが言う言葉が本当に胸に刺さる…。
大切なものは人それぞれ違うんだって、改めて思わせてくれる作品です。お正月に観たら少しだけ優しい気持ちで一年を始められそうなので、おすすめします!

みなさま良い年越し+良いお年を!

せっかくなので、TSUTAYAなどに行って、DVDジャケットを観ながらDVDを借りるのもおすすめです!
配信でさくっと観るのと、DVDで観るのはまたちょっと味が違うというか、映像体験が変わるなって個人的には思っています。

お正月は「寂しい気分の時に観たい映画のおすすめ」「気分をあげたい時におすすめの映画」「恋人と観たい映画」「ファッション映画」など、パーソナルに合わせた映画のおすすめなどもInstagramのDMで送ってくれたら、時間見つけて答えられるところまで答えますので、お気軽にご連絡ください。

それではみなさん、長くなりましたが、ぜひとも良いクリスマス、良いお正月をお過ごしください!

Joより

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