「私、10年後もこの服着てるかな?」環境問題を意識する人の“無理ない”服の選び方[NEUT RADIO vol.5]

Text: Natsu Shirotori

Text & Photography: Natsu Shirotori

2019.5.24

Share
Tweet

5月13日、NEUTのラジオ番組「渋谷のニュートラル」の第5回目が放送されました。
メインパーソナリティを務めるのは、以前取材したヒップホップグループDos Monosのメンバーであり広告プランナーとしても活躍中のTAITAN MANとNEUT Magazine編集長のJUN。

渋谷のニュートラル

「渋谷のニュートラル」とは、渋谷を舞台に地域に密着した情報から経済や文化までを扱うラジオ局「渋谷のラジオ」で始まったNEUTのラジオ番組。生放送は公式アプリか、FMラジオ(詳細ページ)から、放送後にはnoteにて音声アーカイブが聞けます。この番組のキーワードは『◯◯をニュートする』。「ニュートする=ニュートラルな視点から物事を捉えること」と独自に定義し、毎回日本で「出る杭」とされている人や、エクストリーム・過激だとされているトピックをあげて、ゲストと共にニュートラルに考えていきます。


NEUTではファッション業界と環境問題に着目し、5月の特集として「WASTED LOVE」を公開しました。そんな特集に合わせ、第5回目となる今回は「『ファッションと環境』をニュート」。シーズンごとに様々なファッションブランドが作り出すトレンドと共に新しい洋服が生産され続け、多くの人々が新しいファッションを追い求めている一方で、ファッション業界には低賃金労働や環境破壊など多くの問題が潜んでいます。そんな中、私たちはどのようにファッションを楽しむことができるのでしょうか?

今回、ゲストとして招いたのはファッションブランドや化粧品ブランドのマーケター兼NEUTほか様々な媒体でライターとして活動するタニムラリサさん。2013年にバングラディシュで起こった縫製工場ビルの崩壊事故をきっかけに始まった、毎年ファッション業界の問題を考えるイベント「FASHION REVOLUTION(ファッションレボリューション)」でのNEUTが企画したトークセッションにも先日登壇してくれました。そんな彼女と一緒に、「ファッションと環境」について考えた渋谷のニュートラル第5回目の内容をダイジェストでお届けします。

「何もしない」という選択

環境に良い服を買うよりも、新しい服を買わないことが一番環境に良いのかもしれない。

トークは先月開催された「FASHION REVOLUTION」の話題からスタート。「FASHION REVOLUTION」に参加するにあたって事前に環境問題について調べたというタニムラさんは、「一人一人の人間が年間の温室効果ガスの排出量を減らすためにできる行動ランキングの1位が子どもを一人作らないことだったんですよね」と話す。「FASHION REVOLUTION」のトークセッションでもこの情報から発展し、環境とファッションについて考えた時にできることは「何もしない」すなわち「新しい服を買わない」ことなのではないかという結論に落ち着いた。環境問題について考えるとき、「何か行動しなくては」「環境に良いものを買わなくては」と新しいものを探してしまう人も多いのではないだろうか。しかし、本当は「何もしない」ことが環境に良いのかもしれない。

width=“100%"

環境問題を知ってしまったらどうやって服を選ぶ?

私、10年後もこの服着てるかな?

「何もしない」ことが環境にとって一番良いとはいえ、服は生活する上で欠かせないアイテムではあるし、ファッションを楽しみたい人だっている。TAITAN MANの「服を買わなきゃいけないってなったらどういう基準で買う?」という問いに答えたのはタニムラさん。タニムラさんが洋服を買うときのポイントは大きく分けるとデザイン、値段、その服を着る期間の3つだ。「この洋服、私は何年ぐらい着るんだろうっていうのはいつも考えます」と語る彼女はは5年後、10年後まで意識して洋服を選ぶことが多いという。

width=“100%"

友達のグッズやバンドTシャツを買うのは悪いこと?

俺は目の前のアーティストやバンドからグッズを買ってるから、「ファッションと環境の問題には加担していない」みたいなツラはできないと思った。

続いて「好きなバンドのTシャツとかライブ行くと買っちゃうけど、それってボディが結構安かったりするじゃん。生産背景のこと考えるとそのTシャツのボディが低賃金労働者によって作られてるかもしれない」とJUNが切り出し、話はクリエイターやアーティストのTシャツをテーマに展開。TAITAN MANは上のように語り、アーティストやクリエイターを応援する気持ちでグッズを買ったとしても、時にそれが環境破壊や低賃金労働に加担してしまうことになるかもしれないということに気づかされたという。この問題に関してタニムラさんは「白か黒か、良いか悪いか、0か100かみたいに考えちゃうとこの問題は辛くなっちゃう」と改めてファッションと環境の問題の難しさを指摘した。その上で、「常に100%環境に良いものを」と突き詰めることができなくても自分のできる範囲で環境問題を考えることが必要だと語った。

width=“100%"

理想のファッションブランド

価格や生産背景に透明性のあることがこれからは必須になってくるんじゃないかな。

理想のファッションブランドについて尋ねられたタニムラさんはこう答えた。「生産者の顔が見える野菜」のようにファッション業界でも生産者の顔や現場が可視化されたブランドがスタンダードになっていくのではないかというのが彼女の見解。JUNもNEUTで連載中のALL YOURSEVERY DENIM10YCなどを例に挙げ、工場を見せるブランドが増えつつあると述べた。さらに「デザイナーの思想だけじゃなくて、服の原材料とか縫製工場まで見せるのがブランドストーリーに入ってくるってことだよね」と続けた。

新しいブランドは必要なのか

ファッションは日々の生活に彩りを与えてくれるからこれからも新しい作品や洋服は見たい。

最後にTAITAN MANから挙がった「新しいブランドは表現者がいる限り作られるけど、新しいブランドが必要か必要じゃないかっていう議論どう思う?」という質問に対してタニムラさんはこのように答えた。これにはTAITAN MANも同意を示し「そんなに窮屈になってほしくないって気持ちもやっぱ生じてしまう」と環境に配慮したとしてもファッションがつまらないものにはなってほしくない、との気持ちを吐露した。

width=“100%"

好きなことと正しいことのバランスをとる

100%正しいことができないからって言って投げやりにならずに、ちょっとずつでも自分のできることをやればいい。

今回の放送で、タニムラさんがまとめとして提案してくれたのは「できる範囲での環境への配慮とおしゃれの楽しみをバランスよく取り入れる」ということだ。100%オーガニック製品で服を揃えることは難しいが、ファッションの一部に古着を取り入れる、着なくなった服はリサイクルショップに売る、など少しずつなら環境を意識したファッションの楽しみ方ができるだろう。この記事を読み終わったら、まずはファッションと環境問題について検索してみるところから始めてみてもいいかもしれない。

以上、第5回「渋谷のニュートラル」をダイジェストでお送りしました。

次回は6月10日16:10より放送予定です。

タニムラリサ

外資系ラグジュアリーブランド、ファッションブランド、化粧品ブランドなどのマーケターとして活動。同時にライターとしてNEUT Magazineほか、様々な媒体でファッションやフェミニズムなどをテーマに執筆。現在起業準備中。

width=“100%"

TAITAN MAN

1993年生まれ。3人組ヒップホップグループDos Monosのメンバーとして活動中。2017年には韓国・ソウルでのライブやSUMMER SONIC2017への出演を果たした。2018年には日本人として初めてアメリカ・LAのレーベル「Deathbomb Arc」との契約を結び、初の音源「Clean Ya Nerves」をリリースした。2019年6月6日に1st アルバム「Dos City」のリリースパーティを開催予定。

width=“100%"

JUN

1992年生まれ。成蹊大学卒業後、社会派ウェブマガジン『Be inspired!』の編集長を経て、現在は2018年10月に『Be inspired!』からリニューアル創刊した『NEUT Magazine(ニュートマガジン)』で創刊編集長を務める。「既存の価値観に縛られずに生きるための選択肢」をコンセプトとする同誌で、消費の仕方や働き方、ジェンダー・セクシュアリティ・人種などのアイデンティティのあり方、環境問題などについて発信している。

width=“100%"

 

Share
Tweet
★ここを分記する

series

Creative Village