10人の若者が描く、未来のあるべき姿|キットずっといい未来 総集編

Text: Iori Inohara

Photography: Jeremy Benkemoun unless otherwise stated.

2021.9.30

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  2020年7月にレジ袋の有料化が開始してはやくも一年。まだ一年。個人の環境問題への関心が少しずつ高まる一方で企業もまた、社会におけるそのあり方が問われるようになってきている。
 プラスチック問題への課題意識から、食品メーカー・ネスレが2022年までに全ての“キットカット”のパッケージをリサイクル・リユース可能な素材へと変えるサステナブルプロジェクト「#キットずっと」を始めた。この動きに端を発し、現在#キットずっとプロジェクトはサステナビリティにまつわるさまざまなコンテンツを発信している。
 「キットずっといい未来」(ネスレ&NEUT powered by REING)では、その活動の一環としてNEUT Magazineとコラボレーション。環境問題をメインに社会課題に対してアクションを起こす人々を対象にインタビューを行ってきた。サステナブルな未来について対話を重ねた相手はブランドの創設者からSNSメディア創設者まで多岐に渡り、その切り口も実にさまざま。
 そして、2021年2月に始まった本連載は前回のVol.7をもって完結し、また新たな形で動き出すことになった。今回はこれまでの連載の総集編として、インタビュー記事を振り返っていく。また、“キットカット”のInstagramでのみ掲載していたインタビューもご紹介。
 インタビューに応じてくれた人々の活動の根っこにはどのような思いがあるのか。また、それぞれが描く#キットずっといい未来のために、私たち個人と社会はどのように変化していけるのだろうか。色とりどりの声を集めた本連載は、環境のために明日からできる身近なアクションのヒントになるかもしれない。

Vol.1(2021年2月9日)
長谷川ミラ

「日本の若い人たちに向けてもっと分かりやすく仲介人のような役ができたらいいな」長谷川ミラが話す、日本と欧米における環境問題の情報のギャップ

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モデル業とファッションブランドのデザイナー業を手がける傍ら、ファッションを通して社会問題に触れる視点を広げることを目的としたオンラインコミュニティ「MiMo Tokyo(ミーモトウキョウ)」の共同代表を務める長谷川ミラ(はせがわ みら)。彼女は、環境問題が抱える問題の一つが、報道で見ることはあっても、なかなか自分の生活の一部として語られる情報に出会えないことだと考えている。#キットずっとプロジェクトの発起人でもある彼女が、プロジェクトを立ち上げた理由や普段の情報の集め方などについて語った。

「『今の時代に、子どもを産みたい?』」って聞かれたときに、正直考えてしまったんです。5年後10年後、海に入れなかったり旅行ができなかったり、もしかしたらガスマスクをつけなきゃいけない時代が来るかもしれない。戦争をしたりとか。そういう時代だったら、ちょっと産みたくないかも、と思ってしまったんですよね」

Vol.2(2021年2月9日)
ノイハウス萌菜

「『プラスチック=悪』じゃない」ノイハウス萌菜が話す、問題の本質を考えることの大切さ

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ステンレスストローを入り口に地球環境への取り組みを提案する「のーぷら No Plastic Japan」の発起人・ノイハウス萌菜(のいはうす もな)。「私も使い捨てのものを使うことはあるんですよ」と言う彼女が、個人個人の興味と環境問題をひもづけることで無理なく環境問題について考えていくことの大切さについて語った。

「環境問題って結局は他のところへも影響するので『自分だけがおしゃれできれば』『自分だけがおいしいもの食べられれば』じゃなくて、それが次の世代にも続くようにはどうすればってところを考えたいですね。環境問題への入り口って本当にさまざまなので、実は誰にとっても入りやすいものかもしれない」

Vol.3(2021年2月9日)
伊達ルーク

企業・政府・個人…環境活動において誰も悪者にしない。伊達ルークが訴える、立場は関係なく手を繋ぐことの大切さ

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ライフスタイルの提案から環境問題への発信を行うNPO法人「UMINARI(うみなり)」の代表をはじめ、持続可能な開発を促進する国際投資機関「The Yield Lab(ザ・イールド・ラボ)」の顧問や過去に国連環境計画日本協会の広報を務めるなど、サステナビリティをテーマに幅広く活動する伊達ルーク(だて るーく)。世代や業種に縛られず人々を繋げる役目に徹する彼が、コミュニケーションで工夫していることを語った。

「『お前のここが悪い!』『企業はこれをしろ!』と誰かを悪者にするのではなく、それぞれの思いを丁寧に見ていきながら柔軟な姿勢でみんなを繋ぐプラットフォームをつくっていきたい。そうしてポジティブな未来を描くことが仲介する立場の人が取るべき姿勢だと感じています」

Vol.4(2021年2月23日)
浜本忠勝

原宿のヴィーガンサロンwhyteの代表・浜本忠勝に聞いた、美容の新しいスタンダード「ヴィーガンビューティー」

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原宿にあるヴィーガンビューティーサロン「whyte(ホワイト)」の代表である傍ら、「国際ヴィーガンビューティー協会」を設立した浜本忠勝(はまもと ただかつ)。ヴィーガンと聞くと動物性のものを一切消費しない食生活を連想し、生活の制約が大きくなるイメージを持つ人も少なくない。しかし美容に関して言えば環境に優しいうえにクオリティの面でも「デメリットがない」と彼は話す。ビューティーの選択から地球への思いやりを提案する彼が、美容の新しいスタンダートについて語った。

「最近思うのは、ライフスタイルやマインドに余裕がないと楽しくなくなってサステナビリティやヴィーガンを考えられなんじゃないかってこと。それは人に対しても同じことが言えると思っていて、他人に対して何かしてあげるために自分にも優しくしなきゃいけないし、自分のことだけやっていると周りから助けてもらえない。(ヴィーガンを発信するうえで)そういうバランスもすごく意識しているかもしれないですね」

Vol.5(2021年3月9日)
清水文太

「今必要なのは、自分がどういう考え方を持っているのかを考えること」清水文太が話す 、違いとの向き合い方

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スタイリング・クリエイティブディレクション(アートディレクション)のほか、コラムニストや音楽・パフォーマンスなど多岐に渡る活動を展開する清水文太(しみず ぶんた)。彼はこれまで震災後の福島を訪問して感じたことやコロナ禍の心境の変化についてなど、混乱する社会のなかでの自身の率直な声をメディアで綴っている。自粛生活のなかでオンラインで過ごす時間も増えた今、大量の情報や答えの出ない問いとの向き合い方なども含めて、清水が自分との付き合い方について語った。

「結局自分が見る景色は今までやってきたことや見てきたものの積み重ねで変わる。好きとか嫌いとか本能がそう言ってるものって答えは出ないけど、考えていくことが大事だと思っていて。いろんなことの存在を疑うのってある種孤独で苦労もあるけれど、考えることを繰り返していくと『この人だったら同じ方向を向いて一緒に歩めるな』って思う人に出会える」

Vol.7(2021年7月20日)
能條桃子

「自分の意見を持つことが発信のスタート地点」NO YOUTH NO JAPAN・能條桃子に聞く違和感の大事さ

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U-30世代を対象に政治や社会の情報をインフォグラフィックスで発信する「NO YOUTH NO JAPAN(ノーユースジャパン)」の代表理事を務める能條桃子(のうじょう ももこ)。Instagramを中心にSNSでの発信をしており、今ではそのフォロワーは6.4万人以上にのぼる。環境問題やジェンダー問題を始め個人と社会の繋がりをさまざまな側面で発信する彼女が、一人一人の違和感を社会に繋げる方法を語った。

「(デンマークで)私が通っていた学校は政治に関わらず気候変動や難民政策に詳しい子なんかもいて、友達でもあるその子たちがすっごく楽しそうに話す姿を見ていると嫌でも面白く思えてくる。学校で政治家を呼んで討論会をやるときがあったのですが、普段お酒しか飲んでないような子が手をあげて政治家に鋭い質問をしてみんなから拍手されたりするんです。政治に参加する人とそうでない人が離れてるんじゃなくて、融合してるのがいいなと思いました」

“キットカット”のInstagramで掲載されたインタビュー

(2021年6月16日)
清水イアン・伊藤聡士

#キットずっと良い未来とは「もっと森が身近になること」

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Photography provided by 清水イアン & 伊藤聡士

森を保護し再生する力をユーザーの手に届けることを目的とした世界初の環境アクションアプリ「weMORI」を運営する清水イアンと伊藤聡士。森を保護・再生することの重要性を訴えかけ、アプリでできる「簡単なアクション」と「コラボレーション」を通じて世界中のコミュニティを動員し、具体的な森林保全活動を進めようとしている。そんな二人が、本アプリを作った経緯やそれぞれが想像する未来を語った。

「weMORIを通して木を一本でも守った瞬間に、あなたは木を守らなかった人から守った人になるわけです。その手前まで何もしなかった人が、2タップでトントンとするだけで何かした人になるわけです。これを社会に実装してより多くの人が広めたときに、今のシステムに対する見方であったりとか、日常にあふれているものに対する見方が変わらざるを得なくなりますよね」

(2021年7月10日)
AYA

#キットずっと良い未来とは「一人一人が多様な選択肢を持てる世界」

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株式会社TIEWA(タイワ)」で性やフェミニズム、ダイバーシティについてを漫画で紹介するWebメディア「パレットーク」を運営しているほか、ゲイ・バイセクシュアル男性を主なターゲットにした男性同士のクリーンなマッチングアプリ事業も展開しているAYA。これらのサービスを通して、ジェンダーやセクシュアリティにかかわらず「らしく生きる」がもっと選びやすくなる社会を目指している。どうしたらより多くの人が社会問題を「自分ごと」として落とし込めるのか。自身の日常の心がけから今後の行政に望むことまで語った。

「パレットークの漫画は『一人一人の気持ちの持ちようとかじゃなくて、仕組みが変わっていくといいよね』など政治的なところにオチをつけることが多いのですが、それは個人的なことは政治的なことであるというメッセージを大切にしているから。理解と一緒に政治が変わっていかないと社会は変わらないかもしれないと、一人一人に考えてもらいたいです」

(2021年9月7日)
栗山遥

#キットずっと良い未来とは「自分自身、周りの人々、そして自然に対して優しい選択をすることができる未来」

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ヨガインストラクターとしてメインに活動しつつ、ヨガや環境、食など自身のライフスタイルに関することをSNSで発信し、それに伴う記事やコラムの執筆も行っている栗山遥(くりやま はるか)。学生の頃にサーフィンを始め、海や自然が身近にある生活を送るようになったことから環境問題やサステナブルなテーマに関心を寄せるようになったという。「周りや世間ではなく、自分がどうしたいのか・どうありたいのか・どう生きたいのか」を一番大事にするというヨガから得た哲学で自分の内面と向き合い、それを日々のサステナブルな選択に繋げている彼女が、自分の意思や行動の軸をブラさずに問題と向き合う秘訣を語った。

「自分の日常の裏側で、過度な搾取をしていないか、限りある資源を無駄にしていないか、非倫理的に何かや誰かを傷つけてはいないか、何度も立ち止まって、見直して、向き合えたらいいと思っています。自然を大切にするということは、自分を大切にするということ」

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